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悪役令嬢は死んで観光名所になりました。  作者: ひるねころん
第一章 旅立ち
15/24

15.譲れない気持ち、譲らざる得ないもの?


キリが悪かったので、今までよりちょっと長めです。

前回のあとがきで予告してた内容ですが、結局、結構直接的な表現に落ち着きました。



「今から28年後なら魔王復活まで20年ある。その時まで聖剣(こいつ)は俺のものだ。これ以上は譲歩しない」


 ルーカスクローは、アマリア(せいけん)の腕を掴んで、そう言った。


 ルーカスクローの魔力と気持ちが聖剣の自我に伝わってくる。


 『使い手』と聖剣の意思の疎通は、本来接触によった。聖剣は話せないかわりに接触による念話の形で意志のやり取りをしていた。


 ルーカスクローは、まだそのことを知らない。だから意志を伝える意図はなかった。

 だから、流れ込んだ気持は、とても複雑だった。


 だというのに。わかる。


──この(おっさん)、死ぬまで手放す気ないだろっ?!

──えっ?!


 思わず心で突っ込む聖剣に、驚くアマリア。


 接触による意思疎通は、『使い手』と聖剣限定だ。『使い手』の意志はアマリアには聞こえない。

 アマリアと聖剣にも同じことが言える。

 アマリアが体の中で話す言葉は聖剣にしか聞こえない。たとえ『使い手』が接触していてもだ。


 聖剣は、伝わってくるルーカスクローのあまりの貪欲さに唖然としている。さっき悩んでた風なの何?と、ドン引きだ。

 いや、ちゃんと本気で悩んで本気で譲歩を絞り出したのだろう。それも伝わってくる。


 だからこれは、きっと、偽らざる本音。

 むしろ、よくもこの貪欲さ(かいぶつ)を抑えて譲歩のセリフを吐けたものだ。


 聖剣は知らない。

 過去に一度経験しているはずなのに、そのことに目を瞑ってしまった。

 聖剣はまだ分かっていない。 

 聖剣と『使い手』の繋がりの強さを。

 引き裂かれる、痛みを。


 本当は知っているはずなのに。



 アマリアは念話のことは知らなかったが、聖剣のつっこみは、ルーカスクローがセラフィーナを騙そうとしているように聞こえた。


──あ、いや。約束はちゃんと本気で言ってるから、大丈夫。


 聖剣はフォローを入れる。なんとなくそう思っただけで根拠はないよ、と。


 ルーカスクローの妥協案を聞いたセラフィーナは、以外にもすんなり了承した。


 ルーカスクローと聖剣は、まさかここまであっさり引き下がると思ってなかったのか、豆鉄砲を食らったような顔をした。

 なんか、こう、もっと仕掛けてくると思ったのだ。

 セラフィーナは苦笑するしかない。


「念のために聞いておきたいのだけれど、もし、わたくしが了承しなかったら、条件の修正の余地はあったのかしら?」


 立場上、「なんとなく」とは言いたくないが、なんとなくそれは無理な気がしていた。単なる勘だが、今後のためにもはっきりさせておくに越したことはない。


「そうだね、無理だ。彼と聖剣(ぼく)との間にはすでに契約が成立している。彼が本気で決めたことには逆らえない」

「そう……」


 いつの間に、と思った。

 聖剣との正式な契約には2段階の手続きが必要なはずだ。


 1度目は接触。『使い手』が触れることで聖剣が目覚める。

 これで仮契約が成立する。


 2度目は誓い。聖剣の(あるじ)となることを宣誓する。

 これで契約が完成する。


 今までの話から、ルーカスクローと聖剣の間には、碌に会話がされていないことは分かっている。

そして、ルーカスクローは契約について知らない。

一体いつの間に、と思わないでもないが、ふと、先ほどの宣言を思い出す。


聖剣(こいつ)は俺のものだ』


あれも該当するのであれば、いつ契約が完成していてもおかしくはないのかもしれない。

 英雄ウラノーですら、2つ目の契約は偶然だったのだから。






 それから、聖剣を持つ者へ、王家からの依頼と契約の話になった。


「王宮騎士を断る、ということだったけど、あえてお願いするわ。希望通り行動は制限しない代わり、依頼と条件を飲んで欲しいの」


 そう言って、条件のリストを提示した。

 それは簡易ではあるが、契約の条文だった。



一、聖剣を使用する期間中、乙は甲を王宮特別騎士に任ずる。

二、甲は、乙からの要請に応えなければならない。

三、甲は、聖剣を使って悪事を働いてはならない。

四、甲は、乙に対し反逆、又は敵対行為をしてはならない。

五、甲は、国家間の争いが発生した場合は、乙の要請に従わねばならない。

六、甲は、生活に支障のない範囲で魔に属するものの討伐を優先して行うこと。

七、上記二から六に反する行為を行い、又はそれ以外の理由が生じ、王宮特別騎士でなくなる場合は、聖剣の主の権利を放棄し、聖剣が乙に戻されるよう取り計らうこと。


 ちなみに、甲がルーカスクロー

 乙が、ヴァロル王国を指す。




「あまり書きすぎると行動の自由という点で貴方の意志に反するだろうから、必要最低限にしてあるわ。重要なのは六かしらね。来るべき魔王との闘いに先立って、なるべく魔の力を削いでおいて欲しいの。他の項目はこちら側の保険と思ってくれて結構よ」

「任ずるって、給料はでるのか?」

「ええ。通常の騎士の平均よりは出るわね」

「そうか。この三の「悪事」っていうのは?」

「完全に保険ね。聖剣は魔を滅ぼすものだから、人は殺してほしくない。でもやむを得ない瞬間に行動を制限するのも違うでしょう?だからあなたの良心に恥じない使い方をして欲しいという意味ね」

「じゃあ、そのまま書けばいいじゃねぇか」


 ルーカスクローは少し考えて【修正】を加えた。


「これでどうだ?」


一、聖剣を使用する期間中、乙は甲を王宮特別騎士に任ずる。

二、甲は、乙からの要請に応えなければならない。

【ただし別途報酬を協議し、納得が得られない場合は断ることができる。】

三、甲は、【聖剣の使用にあたり、良心に恥じぬ使い方をすること。】

四、甲は、乙に対し反逆、又は敵対行為をしてはならない。

五、甲は、国家間の争いが発生した場合は、【乙以外に(くみ)しないこと。】

六、甲は、生活に支障のない範囲で、魔に属するものの討伐を優先して行うこと。

【ただし、乙は別途追加で成功報酬を支払うこと。】

七、上記二から六に反する行為を行い、又はそれ以外の理由が生じ、王宮特別騎士でなくなる場合は、聖剣の主の権利を放棄し、聖剣が乙に戻されるよう取り計らうこと。




 三が当初よりも当人の主観に頼るものになってしまっている。

契約としては不向きだが、元々、この項目に強制力は期待していない。聖剣に責任を負っている王家からの『お願い』を形にしただけなのだから。


セラフィナはざっと眺めると、「まあ、いいでしょう」と了承した。

 欲を言えば完全な味方でいて欲しいが、この程度は想定の範囲内だ。


「報酬は職業組合(ギルド)を経由して支払われます。魔獣の追加報酬はその時に上乗せされるので心配しなくていいわ」


 この国のギルドは、商業ギルドや冒険者ギルドのように細分化されていない。


 ルーカスクローは、この国に来てからそれなりの年数を冒険者としてやってきたので、生活に必要なことは分かってるが、聖剣と女の方はどうなんだ?とふと不安になった。


──あとで常識のすり合わせをしないとなぁ。最悪、街の歩き方から始めないといけないのか……?


 今頃気づいたが、もしかしたら結構大変なのではないだろうか。


 とりあず、今は王太合陛下の話に集中しなければ。

 最悪、聖剣と女(こいつら)は意味が分かっていないつもりでいよう。そうしよう。

 ルーカスクローは気持ちを引き締めた。


 ギルドへ魔物を卸した時に追加報酬も併せて支払われるということは、相手先を特定した依頼をギルドに事前にかけておくのだろう。

こちらとしては二重の手間がかからず助かる話だ。


 特別騎士の給料も同様に、ギルド預かりになった。

 ギルドには、登録した人を対象にした現金の預かりシステムが存在するので、それを利用するのが最もやりやすいだろうということになった。


「わかった。いろいろ助かる」


 その後、細々とした話をしている間に契約の準備がされ、契約が終わるとやっと手枷がはずされた。


「んー!やっと自由になった」


 今日はずっと慣れない手枷のままだったのだ。体を動かしたくてしょうがないが、とにかく今はこの解放感が嬉しかった。


「ここを出たらすぐに旅立つのかしら」

「いや、こいつ(アマリア)の準備もあるし、まだ聖剣についてよくわかっていないことも多いから、確認と王都見物もかねてあと1週間はいると思う」


口調もすっかり素になっている。


「そう。アマリア様に関する準備金はこちらで用意するわ。ある程度渡しておくので、必要があったら言いなさい」

「お。それは助かる」


 王宮に客室を用意する、というのを断って宿へ帰ろうとする。

 そういえば宿で騎士に拉致されたから、宿はさすがに取り直しなのだろう。

 ふと、セラフィーナが何とも言えない顔でじっと見ていた。


「?」

「いえ、なんでも」


 この男は分かっているのだろうか。とセラフィーナは思う。


 セラフィーナは、アマリアの前世の話を知らない。

だからセラフィーナの中で、アマリアは生粋の貴族、その中でも上流の家の令嬢だった。


 この先、旅に同行させるということは平民同様の生活となるということだ。聖剣と一体になっていてどうしようもないとはいえ、心配になってしまう。

 捕らえた時の状況の話も聞かされており、本当に任せて大丈夫なのか、と思わずにはいられない。


「旅の準備を整える合間にでも、聖剣様と一緒に騎士団の訓練所にいらっしゃい。お互い良い刺激になると思うわ」

「へぇ。お手並み拝見か。そいつぁいい」


 体を動かしたくてたまらなかったところへのお誘いだ。断るはずもない。


 ウキウキ顔のルーカスクローを見て、アマリア様のフォローはこちらでして差し上げないと、とこっそり心に誓うセラフィーナだった。






「じゃあ、世話になった?が、これからもよろしくお願いする」


 ルーカスクローは、王宮を辞すところだった。

 騎士団へは4日後に顔を出すことにした。そのくらい後であれば、準備もろもろ、ある程度は落ち着いてきているだろう。


「ええ。まずはまた4日後に会いましょう」


 ルーカスクローは、王太合さんもまた顔をだすのか?結構暇?とか失礼なことを思っていたが、そもそも訓練に誘ったのは、アマリアのフォローのためだ。

もちろんルーカスクローは気づいていない。


 セラフィーナは、「ああ、そういえば」と声をかけた。

 可能性は低そうだが、事実を知る前に謝っておかないと、と思ったのだ。


「アノーヒェン領主の三男の話だけど」

「まだ何か?」


ルーカスクローは、警戒のこもった顔になる。

少し拗ねているようでもあるが。


「生まれたというのは本当だけど、顔は知らないのよ。ごめんなさいね」

「~~~!」


 セラフィーナは、カラカラと笑う。

 対するルーカスクローは、片手で目を覆って空を仰いでいる。


──こいつは古だぬきだ!関わっちゃいけないやつだ。一生勝てる気がしねぇ。


 ルーカスクローは、強くそう思った。






セラ「若い子と話すと若返るわねぇ。脳が活性化されるというか」

オラヴィ「若者で遊ぶの、ほどほどにしてくださいね」


っていう会話があったとかなかったとかwww


今回、色々大変でした。

推敲しきれた気がしないので、後でゆっくり直すかも?本筋は変えませんが。

ギルドの詳細とかも、一旦書きましたが、本来掲載したかったもう少し後の話で掲載することにして、バッサリ削ったりとか。


あと、アップ直前の推敲でうっかりノリでバッドエンドみたいな伏線いれてしまった……絶対ハッピーエンドにしたいのに。

どないしよ(笑)


連続更新は、予告なく一日おきくらいになるかもしれません。

あせっても良い結果は生まないしね!

更新頻度と自分のペースがつかめていないので、暖かい目で見守っていただければ。


それはさておき。


いいねとブックマーク、評価(初!いただきました!)ありがとうございます!

セラフィーナの「若返るわねぇ」じゃないけど、気持ちがリフレッシュします!

まだ押されていない方は、ぜひ勇気をもって、ぽちっと!怖くないよ!(笑)

押すと作者に栄養ドリンクが注入されます(>▽<)ってほんとかよ!?

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