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悪役令嬢は死んで観光名所になりました。  作者: ひるねころん
第一章 旅立ち
13/24

13.狸と狐の化かし合い【終息】?

セラフィーナとルーカス君の化かし合い

11話の続きなのでちょっと短めです。



 昨夜の『灰』からの報告を聞いてなければ、セラフィーナといえど打つ手なしだったかもしれない。

 それでも、どこの誰とも分からないものに聖剣を任せることはできなかった。


 だが昨夜の話を前提に、注意深くルーカスクローを観察することが出来た。

 昨夜の話を、確定させるか、もしくは可能性を潰す。


 注意深く、慎重に、セラフィーナはルーカスクローに仕掛ける隙を、探り、作りだしてゆく。


 ルーカスクローは『アノーヒェン』の話題を、意識してか無意識か、避けた。

 避けてしまった。


 それ自体も、予想に基づく疑惑をより強くさせたが、『アノーヒェン』について言及せずに嫌味を返してしまったこともまた、予想の可能性を高くしていた。


 『アノーヒェン』

 実はこの発音が曲者だった。


 これを発音するには、生まれながらにして土地の者でないと難しい発音が含まれる。

 若いうちに頑張って訓練すれば習得できないこともないが、通じるのだからと、普通はそこまで頑張らない。

 聴き取りの時点で、外部の者であれば違いに気づかないこともある。

 その程度の差だが、土地の者であればすぐわかるという。

 領地とその周辺では有名な話だ。


 セラフィーナは、若い頃からの訓練のおかげで、正確な発音にこそ至らなかったが、正確な聴き取りは出来るようになっていた。

 だから、発音さえ聞けば、この男がアノーヒェン出身であることが確定する、はずだった。

 だが男は、話題はおろか発声することすら避けた。


 さらには「子供でも分かる」と言ったことだ。


 貴族と冒険者であれば、そうだろう。

 だが共和国は横のつながりがそれほど強くない。

 周辺の産業を知識として学習する貴族や、領地を渡り歩く冒険者であれば知っていて当然のことでも、平民の子は普通知らない。

 それどころか、子供と言う点では該当するのは貴族だけかもしれない。


 冒険者として平民同様の暮らしをすることで、冒険者の常識が平民の常識とすり替えられてしまったのだろう。

 これは身元を隠して生きたいルーカスクローにとっては失態だった。


「アノーヒェンの領主の次男、マルク・アノーヒェン」


 セラフィーナはにーっこりと笑う。


 確信が得られるまで手を緩める気はない。

 対するルーカスクローは無反応だ。


「14,5年前に家出しちゃったのですって。貴方と同じ年らしいけどそれっぽい人に心当たりはないかしら?冒険者をしている貴族、とか」

「お貴族様に知り合いはいませんねぇ。話をするのも、この場が初めてというくらいでして」


 さも、突然の話題に困惑するように笑って見せた。

 だがセラフィーナは止まらない。


「少し前にその領主にお会いしたの。似ている人を見かけたらお知らせしますわ、と言ったら、自分にも奥方にも似ていないと言っていたわ」


 実は嘘だ。

 領主と会ったなどという事実はない。だが顔は知っていた。


 ルーカスクローと全くとまではいわないが似ていない。

 髪も目の色も、領主やその奥方とは一致しないのだ。

 予測を前提にするのであれば「似ていない」というはったりもあながち間違いではないだろう。


「俺はどちらにも会ったことがありませんから、お役には立てないでしょう」


 ルーカスクローの口調が時々丁寧になるのは、王太合の前だからか、はたまた無意識に引きずられているからなのか。


「ところがね、その次男が家を出た後で生まれた三男が、次男にそっくりなんですって!その時、ご挨拶いただいたけど……」


 ルーカスクローは、ほんの一瞬、目を見開く。


──しまっ!?これ以上反応しちゃだめだ。


そっくり(・・・・)だったわ」


 見開いてしまった目を、修正できないまま固まり、やがて諦めたように目を閉じる。


──チェックメイト


 それはどちらが思ったことだったか。


「俺には関係のない話ですね」

「ええ、そうね」


 セラフィーナは今日一番の笑顔だ。

 言質は必要ない。ルーカスクローのため息がそれを示していた。


「じゃあ、本題に入りましょうか」


 それを聞いて、「まだ続くのかよ」と盛大なため息が漏れたのは言うまでもない。






警戒するルーカス君に対して、消化試合のセラフィーナ。

年齢的にも孫に近いし、年季が違うということで。

セラフィーナおばあちゃんと孫のルーカス君の触れ合い(ぷぷぷ)


アクセスされた皆様、いつもお読みいただきありがとうございます!

ちょっとでも満足されましたら、勇気をもって(笑)ぽちっと評価などいかがでしょう?(どきどき)


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