13.狸と狐の化かし合い【終息】?
セラフィーナとルーカス君の化かし合い
11話の続きなのでちょっと短めです。
昨夜の『灰』からの報告を聞いてなければ、セラフィーナといえど打つ手なしだったかもしれない。
それでも、どこの誰とも分からないものに聖剣を任せることはできなかった。
だが昨夜の話を前提に、注意深くルーカスクローを観察することが出来た。
昨夜の話を、確定させるか、もしくは可能性を潰す。
注意深く、慎重に、セラフィーナはルーカスクローに仕掛ける隙を、探り、作りだしてゆく。
ルーカスクローは『アノーヒェン』の話題を、意識してか無意識か、避けた。
避けてしまった。
それ自体も、予想に基づく疑惑をより強くさせたが、『アノーヒェン』について言及せずに嫌味を返してしまったこともまた、予想の可能性を高くしていた。
『アノーヒェン』
実はこの発音が曲者だった。
これを発音するには、生まれながらにして土地の者でないと難しい発音が含まれる。
若いうちに頑張って訓練すれば習得できないこともないが、通じるのだからと、普通はそこまで頑張らない。
聴き取りの時点で、外部の者であれば違いに気づかないこともある。
その程度の差だが、土地の者であればすぐわかるという。
領地とその周辺では有名な話だ。
セラフィーナは、若い頃からの訓練のおかげで、正確な発音にこそ至らなかったが、正確な聴き取りは出来るようになっていた。
だから、発音さえ聞けば、この男がアノーヒェン出身であることが確定する、はずだった。
だが男は、話題はおろか発声することすら避けた。
さらには「子供でも分かる」と言ったことだ。
貴族と冒険者であれば、そうだろう。
だが共和国は横のつながりがそれほど強くない。
周辺の産業を知識として学習する貴族や、領地を渡り歩く冒険者であれば知っていて当然のことでも、平民の子は普通知らない。
それどころか、子供と言う点では該当するのは貴族だけかもしれない。
冒険者として平民同様の暮らしをすることで、冒険者の常識が平民の常識とすり替えられてしまったのだろう。
これは身元を隠して生きたいルーカスクローにとっては失態だった。
「アノーヒェンの領主の次男、マルク・アノーヒェン」
セラフィーナはにーっこりと笑う。
確信が得られるまで手を緩める気はない。
対するルーカスクローは無反応だ。
「14,5年前に家出しちゃったのですって。貴方と同じ年らしいけどそれっぽい人に心当たりはないかしら?冒険者をしている貴族、とか」
「お貴族様に知り合いはいませんねぇ。話をするのも、この場が初めてというくらいでして」
さも、突然の話題に困惑するように笑って見せた。
だがセラフィーナは止まらない。
「少し前にその領主にお会いしたの。似ている人を見かけたらお知らせしますわ、と言ったら、自分にも奥方にも似ていないと言っていたわ」
実は嘘だ。
領主と会ったなどという事実はない。だが顔は知っていた。
ルーカスクローと全くとまではいわないが似ていない。
髪も目の色も、領主やその奥方とは一致しないのだ。
予測を前提にするのであれば「似ていない」というはったりもあながち間違いではないだろう。
「俺はどちらにも会ったことがありませんから、お役には立てないでしょう」
ルーカスクローの口調が時々丁寧になるのは、王太合の前だからか、はたまた無意識に引きずられているからなのか。
「ところがね、その次男が家を出た後で生まれた三男が、次男にそっくりなんですって!その時、ご挨拶いただいたけど……」
ルーカスクローは、ほんの一瞬、目を見開く。
──しまっ!?これ以上反応しちゃだめだ。
「そっくりだったわ」
見開いてしまった目を、修正できないまま固まり、やがて諦めたように目を閉じる。
──チェックメイト
それはどちらが思ったことだったか。
「俺には関係のない話ですね」
「ええ、そうね」
セラフィーナは今日一番の笑顔だ。
言質は必要ない。ルーカスクローのため息がそれを示していた。
「じゃあ、本題に入りましょうか」
それを聞いて、「まだ続くのかよ」と盛大なため息が漏れたのは言うまでもない。
警戒するルーカス君に対して、消化試合のセラフィーナ。
年齢的にも孫に近いし、年季が違うということで。
セラフィーナおばあちゃんと孫のルーカス君の触れ合い(ぷぷぷ)
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