12.狸と狐と?2
こ、こんなはずでは……
前日譚です。
さらっと加えて、続きを掲載するつもりが、
楽しくなって1話占拠してしまいました m(__)m無言土下座
──謁見日の前日、夜
ヴァロル王国近衛騎士団『灰』の副隊長オラヴィがセラフィーナのもとに報告に訪れた。
「遅くなりまして申し訳ございません」
「いいえ。この短期間によくやってくれています。報告を」
「は。まずは……」
『灰』に頼んだ調査は2つ。
内、ルーカスクローに関しては時間もないので内容を絞った調査を頼んでいた。
つまり「トゥイロア共和国」の「貴族」である可能性だ。
「『使い手』と同じ年代の貴族の失踪者は3名です。首都州の男爵の次女、トリャン州の子爵の四男、アノーヒェン自治領の領主次男。うち、首都州の男爵の次女については執事長が把握しているらしく定期的な支援の形跡がありました。共和国内ですので除外できるかと」
セラフィーナは頷きつつ先を促した。
「トリャン州の子爵四男については4年まえに駆け落ちをしたそうで、5,6年前にはすでにヴァロル国内で冒険者として活動が確認されている『使い手』殿と矛盾します。やってやれなくはないのでしょうが、トリャン州から国境までは半月から下手するとひと月かかります。私でしたら、この御仁でアリバイを作るなら影武者を立てますな」
「その者があの男であるなら、黒、でしょうね」
黒、と言っているのはスパイ容疑だ。
だがそう言いながらも、そんなことは思っていないようにそっけない。
オラヴィもその所感に異存はないようで頷き返しながら話を進める。
「最後のアノーヒェン自治領主次男ですが、名前はマルク・アノーヒェン。失踪したのが9年前の16歳。以降、ぱったりと、足取りがつかめませんでした」
そういうオラヴィの目は申し訳なさを感じない。むしろ楽しそうだ。
頼もしい『灰』の副隊長に、思わず笑みがこぼれる。
「それで、何が分かったのかしら。追跡調査をさせられて隊長も大変ね」
「隊長は責任感が強い方ですから」
それに報告より現場の方が好きでしょ?アレは。と呟く。
近衛各隊の隊長が下に慕われているのは事実だ。オラヴィも隊長の人柄を好ましく思っていることは、その呟きからも分かる。
「こほん。王太合陛下は隣国の「剣聖クロー」をご存じでしょうか」
「良くは知らないわね。伝説の剣豪だったかしら」
セラフィーナはあまり剣術に興味を持ったことがなかったが、伝説級となった「剣聖クロー」については、名前だけであれば聞いたことがあった。
セラフィーナと同世代か、やや上くらいだろうか。
「はい。4,50年前から数十年に渡って活躍した人物です。20年ほど前、ある事件を最後に職を辞して、以降行方がわからなくなりました」
「それが、ルーカスクローと関係があると?」
話の展開が早すぎる我が王太合陛下に、思わず笑いが出そうになる。
最終的にはその通りだし、我々『灰』を信用している現れなのだから喜ばしいのだが、せっかく調査してきたのだから経過も聞いてから結果にたどり着いて欲しい。
「『使い手』殿との関係はさておき、マルク少年が突然屋敷に招いた流しの剣術指南役が、実は剣聖クローなのではないか、という噂がでております」
「して、その者は?」
「行方不明です。マルク少年が失踪する日に役を辞して家を出ています。マルク少年は隣町まで見送ると言ってそのまま失踪したようで、本来帰宅するまでの数日を無駄に稼がれてしまったようです。指南役の方は、年齢的に今となっては生きているかどうかも不明ですな」
「つまり家の者の同行を断れる、それを押し切れるくらい強かった、というわけね」
「ええ、その通りです」
セラフィーナは笑みを深くする。
オラヴィもそれを返す。
それならば年齢はかなり若いが冒険者として十分やっていけるだろう。
だがまだ、それだけでは根拠としては弱い。
『灰』はまだ、引き出しを出し切っていない。
「報告は、たかがそれしきではないでしょう?それとも耄碌したかしら?」
セラフィーナは楽しそうに煽ってくる。
オラヴィは10年前の29歳まで『赤』所属で、王妃セラフィーナの護衛を10年務めた。
それゆえの気安さもあるが、王太合からの煽り文句も容赦ない。
「マルク少年の家出理由は親との折り合いの悪さでした。最後のきっかけは政略結婚を強引に進めようとしたせいらしいですが、何もしないのに大言を吐くのが我慢ならなかったようです」
「大言とは?」
「そうですね。例えば、ヴァロル王国は本来自分のものだった、とか」
昔からだそうで、誰も相手にしないらしいですが。と付け加える。
確かに大言だ。しかも何の根拠もない。
元々、このヴァロル王国の土地は、誰の物でもなかったのだから。
「隊長かしら?それとも副隊長?この話に喰いついた理由は何?隣の空き地を自分の物と思い込むことは、迷惑とはいえよくあることではなくて?」
よくあってはたまったものではないが、主張というのは無理も矛盾も押し通して発生するものであることをセラフィーナは知っていた。
だからこそ、この話にわざわざ喰いついた理由を聞いておきたかった。
「隊長、ですな。理由は狂気、らしいです。隊長の『勘』なので私ではうまく説明できませんが、領主はこの主張を狂わんばかりに本気で信じているようです。なのに何もしない。このあたりが『使い手』殿の、いや失礼、マルク少年の気性と合わなかったのでしょうな」
残念ながらご報告できるレベルの情報はここまでです、とにっこりする。
「しかし、生粋の『灰』の勘は伊達ではありません。隊長は今、狂気の根拠を探っています。もう一つの指示が解決することを祈っていますよ。隊長のためにも」
もう一つの指示。
建国王の共和国時代の系譜だ。
こちらはそもそも探るのが難しいと思われていた案件だ。
だが真面目な『灰』の隊長は休む間も惜しんで調査してくれているらしい。
「ありがとう。『灰』は十分よくやってくれているわ。本当に」
オラヴィは一例するとその場を去った。
──ええ。本当に。これだけ分かれば、後はあの男に聞けばいいことだわ。
そのころ。
ルーカスクローは人知れず寒気を感じていた。
「なんだぁ?今日は冷えるな?」
謁見が明日に迫った前日の晩は、こうして更けていった。
ということで。
時間が進みませんでした。すみません。
それというのも、狸と狐というタイトルに妙にはまってしまった
新キャラのあの人が悪いです。最初から名前もあってナマイキー!
(23/1/18 名前3/7もミスってました。直しました)
アクセス&ブックマークしていただいた皆様。
お読みいただきありがとうございます!
以前から書かれている作者様方と比べると微増もいいところですが、
少しずつ増えてきていて、うれしい限りです!
イイネも押してもらえるよう、が、がんばります。キャラたちが!




