11.狸と狐と?1
ぎりぎりまで修正した関係でいつもより1時間遅くなりました。すみません。
長くなったので一旦切りました。
二分割で済めばいいな……
アマリアは王宮に連れてこられてから、行動の自由は制限されたとはいえ、何不自由ない生活をさせてもらっていた。
シーツ1枚のみで連れてこられた時には、ちょっ!?そのまま牢屋!?と恐怖を味わったが、貴族待遇で客室の生活を許され、侍女までつけてもらっている。
本当にありがたかった。
──何十年ぶりかの、人間らしい生活!美味しい食事!暖かいお風呂!ああ、さいっこう!
あの日、宿の部屋でアマリアの意思を無視して話し始めたのは、聖剣の自我だった。
だが、碌に情報交換もできないまま、聖剣の自我からの反応はなくなった。
何か表に出てくる条件があるのだろうか……?
部屋を与えられた翌日から、騎士が入れ替わり立ち代わり話を聞きに来た。
だが、あの男とはあれ以来一度も会っていない。アマリアよりもはっきりと泥棒扱いだったが大丈夫なのだろうか。
そんな日々の三日後。
王太合セラフィーナとの謁見の日となった。
侍女にいつもよりいいドレスを着せられ、メイク、髪型と、見る間に整えられていく。
「ご案内します」という騎士の後を着いていけば、応接の間へと通された。
ローテーブルの応接セットの手前のソファーの右端を案内される。
この世界の応接セットは、テーブルの長編に対して長椅子が設置されている。長編の片側が一人掛けという前世のスタイルとはちょっと違う。
一人掛けソファーは必要に応じてお誕生席に置くことがあるが、今回は置いていないので、少人数、本当に当事者だけかもしれない。
まもなく、あの男が案内されてきて、同じソファーの反対端に座った。
重い音にちらりと見ると、手枷がついている。
──……え?!手枷?なんで手枷つけているの???暴れてつけられたとか?
──……誰だ、この女……新たな尋問官とか、か?
向こうもこちらをちらりと見たが何も言わない。
アマリアは、一度も話したことのない男を前に、「元気だった?」も変だし、「初めまして」は今さら?だし、と悶々としていた。
まさか自分の顔を覚えていないとは思わない。よく考えればほとんど見られていなかったのだが。
なんとなく居たたまれない沈黙が流れる。
だが、耐えきれなくなる前に、王太合セラフィーナが入ってきた。
入室して一瞬立ち止まったかと思ったが、すぐに席につく。
ほどなく、お茶の準備が整えられた。
「どうぞ。最近わたくしが気に入っているお茶なのですよ。口に会えばいいのだけれど」
勧められて口に含むと、ふわっとした芳香が鼻腔に広がった。
「美味しいです」
「そう、よかったわ」
「……おい!」
なんとなく緊張した空気が和みそうになったところを、ぶち壊しにした男がいた。
「なんです?」
「手枷!はずせよ。嫌味か」
男の手枷は、鎖タイプではなく、板に手首用の穴が二つ開いているタイプのやつだ。
あれでは飲みにくかろう。だが右と左があまり離れておらず、飲もうと思えば不可能ではないと思う。王太合の手を煩わせるまでもないので、言ってやった。
「それくらいなら、頑張れば飲めますよ?」
「ちっ!他人事だと思いやがって……」
ルーカスクローは、結局仲間外れがいやなのか、そのまま飲むことにしたようだ。
なんか、両手でカップを支える様が可愛らしい。場も忘れて思わずほっこりしてしまう。
「ごめんなさいね。護衛がどうしてもというので。話が終わって安全が確認されたら外してあげるわ」
「じゃあ本題、と言いたいところだが、俺の話だけしてもしょうがないぜ?部屋にいたあの女の話も聞かないとおそらく解決しない」
なにか話が変だ。ここにいるのに「あの女」とは。
「そうね、じゃあこちらから話をしましょうか……ふふ、会えばわかる、ね。確かにそうね」
セラフィーナもおかしいと思ったのか一瞬だけ怪訝な顔をしたが、すぐに話始めた。
「アマリア様、ですね。お見かけしたことはありますが、あの頃と全くお変わりないのですぐにわかりました。初めまして。先王の妻、セラフィーナでございます」
「初め……まして」
「……?」
『先王の妻』とだけ名乗るセラフィーナに、それは気遣いなのか複雑な心境を隠すためなのかは推し量ることができなかった。
ルーカスクローはさっぱり分かっていないようだが、とりあえず説明している余裕はない。がんばって空気を読んでもらおう。
「詳しくは聖剣様に聞かないと分からないけど、呪いを解いたアマリア様の体で顕現したというところかしら。実際、あなたは『どちら』なのかしら?」
「……失礼しました。私は…………!?」
突然、立ち上がったルーカスクローに肩をつかまれて、そちらを向かせられた。
「お前っ!あの時の女……」
やはり空気は読まなかったか。
目が上下に泳いでいる。どこ見てるんだか。
「気づいてなかったの?」
「……いや、もっと子供だと思って……」
ルーカスクローは口ごもりながらも手を放してくれた。
ここに来てようやく顔を覚えられていなかったことに気づいた。
男の顔が赤い。
気づいていなかったことが恥ずかしいのだろう。
だが今はセラフィーナと話をしていたのだ。ちょっと大人しくしてて欲しい。
アマリアは、セラフィーナに向き直った。
ふとお菓子が目に入る。するとおもむろに自分で手を伸ばし、お菓子を食べ始めた。
そしてお茶を一気飲みする。
──ちょっ!?私??なにしてくれてんの?
もしかして、と思わずにはいられない。
『私』は、一息つくと言った。
「初にお目にかかる。私が聖剣だ」
──なんで、このタイミングなの!!?呪い?呪いなの?
アマリアは声にならない声を上げて叫んでいた。
──もっと早く出てきてくれていれば、事前に情報を聞くこともできたのに、よりによってこのタイミング?何十年ぶりかに会った方への挨拶の直前でこれはぶち壊し過ぎでしょう!?
いや、むしろ、声が出せないと分かっていたからこその罵倒だろう。
聖剣を名乗ったアマリアは、自分の中で響く声に面白そうにしている。
セラフィーナは、少しだけ目を見張ったが、瞬き一つで平然とした顔を取り戻した。
「察するに、さきほどまでがアマリア様、今が聖剣様、でしょうか。以前ご挨拶したことがございましたが覚えていらっしゃいませんか?」
「『使い手』がいない頃のことは知らぬ」
「さようでございますか」
少し気落ちしたように視線を落としたが、気を取り直して挨拶をするセラフィーナ。
ルーカスクローは、薄々感づいていたのか驚きは少なかったが、すんなり納得はしがたいらしく何かぶつぶつ言っている。
「聖剣の『使い手』ルーカスクロー」
セラフィーナは、場の空気を変えるかのように声をかけた。
ルーカスクローを見据えてにっこりと笑う。
「トゥイロア共和国出身だそうね」
「え、ええ」
「トゥイロアは貴金属の、特に金とダイヤモンドの鉱山が有名よね。王国にも鉱山はあるけどまだまだなのよね」
「はぁ」
ルーカスクローの声に戸惑いが混ざっていく。
「魔法具に使うには小さくても純度が高い方がいいの。産地としてはどこの自治領のものがいいかしらね。エルト、カリーエフ、アノーヒェン……あなたはどう思って?」
「……」
──ひっかけだ。子供でも分かることを聞いてきている。明らかに何か探りにかかっているが、ここで答えないのも変、か。
ルーカスクローはため息一つで答える。
「エルトには鉱山はありません。カリーエフもそれほどの算出量はないでしょう。……子供でも分かることをわざわざ言わせるなんて、王太后様は暇なんですかね」
セラフィーナの微笑みには変化がない。むしろ面白そうにしている。
護衛も侍従も反応なし。これくらいの嫌味ではびくともしないらしい。
そんなことを思っていたルーカスクローが、自分の失態に気づかされるまで、もうすぐ。
それどころか、話を向けられた時点で手遅れだったのかもしれない。
前回こっそり隊長の名前を出したのでナナシさんはいない状態になりました。
ブックマークといいね(初!)ありがとうございます!
説明回はつまらないかも?と思ってかなり削りましたが、意外とそうでもない?
楽しく読んでもらえるよう精進します!




