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鬼譚蒐  作者: 錦木
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6.

 俺は胡桃に作戦、鬼退治の方法を伝える。

 基本的に鬼、魔物は朝に弱いが人に紛れて生活するほど力の強い鬼なんてのはその弱点を既に克服している場合が多い。例えば、俺もその場合の一つだ。西島もおそらくそれに当てはまると考えられる。

 だから、小物の怪物を退治するなんて時は朝か昼間が定番なんだが今回は夜に決行することにした。夜は一番鬼としての力が強まるときだからだ。勿論向こうも同じ状態だろうが万全には万全を期したい。

「西島に会ったら迷わず首を切り落とせ。鬼は回復力が高いから素人が殺すのには苦労するだろうが、一番確実性が高い方法だ。普通の家とはいえ、なんか道具ぐらいはあるだろう」

 本当は俺が仕事の時に使っている道具でも貸してやれりゃ良かったんだが、生憎あいにくホテルに置いてきたようだ。

「俺は基本外野で見ているだけに徹する。向こうが攻撃してきたら防いでやることくらいは出来るがそれも要らないんだろう」

 俺の言葉に胡桃は頷く。

「ええ。ありがとうございます」

 あくまで自分の話と言うことで胡桃は線引きをしている。俺の手助けは必要ないのだろう。

 今の時刻は午後五時。夏の終わりとはいえ、日没までには少し早い。日没と言ってもこの工場は日の光が遮断されているので視覚だけでは今が何時かも分からない。

 決行は今夜、日が沈んでから行うことになった。

 そう、今夜だ。

 西島は先日自分に従おうとせず逃げる機会を窺っていた叔母を喰い、来週には胡桃か妹と籍を入れると言ってきた。

 それほど差し迫った事態なのだ。善は急げということで話し合った末今夜が好機ということになった。いつやったところで恐らく結果は同じなのだ。であれば、喰われて一家全滅という最悪のシナリオは避けた方が良い。

「成功して良かったな」

 俺はぽつりと言った。

 胡桃は無事鬼になった。良かったのか悪かったのか分からんが、更なる道が開けたことには違いない。

 それは、苦悩の道でしかないかもしれないが。

 胡桃は何も言わなかった。

 何をするでもなく待っているだけで一時間は過ぎ、胡桃が持っていた時計は六時を指した。

「そろそろ行くか」

 そこら辺まで食事に出かけるのと変わらないトーンで俺は言う。

「一つ言い忘れていたから教えておくが、退治する際に相手の鬼を喰うのはなしだ。共喰いは俺たち鬼の間でも現在は禁則事項になっている。弱い奴が喰えばそいつは気が触れるし、強い奴が喰えば鬼の力が強くなりすぎて狩る側の人間側が抑えきれないらしいということになっている」

 どんなパワーフードだよ。まあ言い得て妙と言えばそれまでだが世の中にはよく分からない規則が多い。

「狩る側の人間に感づかれて無意味に命を散らしたくないのであれば喰わないのが吉だな。後始末するのは俺なんだしな」

「はい、分かりました」

「よし、じゃあ家まで案内しろ」

 俺はよく偉そうな態度とは言われるが生まれつきであるし、長年これで通してきたので今更改められない。はっきり言って改める気も無いが。

「はい、案内します」

 言って胡桃が立ち上がる。

「ああ。その前に」

 俺はその後ろ姿を呼び止めた。

「何でしょう」

 振り返った胡桃に、俺は自身の身体を指差す。

「縄を解いてくれるとありがたいんだが」

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