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9.
目を開けたはずが辺りは真っ暗だった。でもそれは日が落ちているからだということに間髪入れずに俺は気づく。
気がつくと俺はどこかの家の居間……、いや思い出した今回の依頼主の家だ、そこでおろおろと中年の男性に「大丈夫ですか」と声をかけられ甲斐甲斐しく介抱されていた。
話を聞いたところでは依頼人であるこのおっさんが中座してお茶を汲みに行って戻ってきたところ、俺が件の屏風のある居間でぶっ倒れていたらしい。そりゃびっくりするわな。
「辺見先生、終わりましたよ」
その時、若い男の声がして誰かが部屋に入ってきた。
「ああ、ちょうどよかった。綾瀬君。君免許持ってるよね?この人を車で送っていってくれないか。僕は車を運転出来ないものだから……」
若い男は「はあ」とも「ええ」ともつかない曖昧な返事をしている。
いや、お構いなくと言おうとして俺は固まった。
綾瀬。
今、綾瀬って言ったか?
 




