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ナガレボシとオホシサマ

『ミドリノホシのヒトデナシ』

作者: 椏萬弖


これよりはじまるさいしょのお話

さいしょのセカイはどんなホシ?

さいしょのイノチはどんな色?

こんにちは

こんにちは

こちらはこちらは”オホシサマ”

”ナガレボシ”もいっしょにいるよ

あなたはどんなイノチかな?






そろそろだ

そろそろホシにながれ着く

そろそろセカイにたどり着く

ほら まわりを見てごらん

ふわふわ泡が浮いている

これを覗いて眺めていると

ひとつのイノチが見えるんだ


それじゃあ一緒に覗いてみようか

ステキなイノチだといいなぁ






そこはイノチ溢れるホシ。

多種多様のイノチが暮らしている色鮮やかなホシでした。

そのホシの名は”ミドリノホシ”

イノチがイノチを尊重し、イノチとイノチが共存する。

そんなステキなホシでした。



そんなホシに生まれたひとつのイノチ。

かれらは”ヒト”とよばれる形をしていて

そのホシでいちばんかしこいイノチと言われていました。


かれらはヒトとして生まれ、

ヒトとして育ち、

ヒトとしておわっていく。

その過程のどこかでまた新たなヒトが生まれ、このホシのイノチを増やしました。


ヒトはみなかしこいので

多くのことを考え、

多くのことを行い、

多くのことを叶えました。

かれらはそれをわかっていました。

ねがいは叶うとわかっていました。

だからいつか叶えてみせると、かれらは”夢”を持つようになりました。


夢を持って生まれ、

夢のために時間を費やし、

夢にイノチをかけている。

それがヒトの在り方でした。

それがヒトのセカイというものでした。




彼はこの星に生まれたイノチ。

彼は”ヒト”としての形をもってこの星に生まれた、数多のイノチのうちのひとつ。

ヒトとして生まれヒトとして育ちヒトとしておわるはずでした。


しかし彼はヒトになれませんでした。


彼には夢がありませんでした。


ヒトは夢をもつイノチ。

夢を持ってこそのヒトなのに。


彼には夢がありませんでした。


彼は違いをわかっていました。

彼の形はまぎれもなくヒトでした。

ヒトとヒトの間に生まれた新しいヒトのはずなのに。

ヒトであればみんながもっているものを。

彼はもっていなかったのです。


彼はかなしみました。

自身の違いをかなしみました。

形はみんなと同じヒトであるのに。

決定的にヒトでは無いのです。

彼はなんとか夢をみつけようとしました。

彼はどうにか夢をつくろうとしました。

しかし彼はヒトではないので。

夢は持てなかったのです。


ヒトになれない”ヒトデナシ”


ヒトはヒトデナシを嫌う。

ヒトはヒトデナシを憎む。

こうなってはおしまいなのだと

決して近寄るなとカベをつくる。

ヒトのセカイで生きるかれらに

ヒトデナシはいらないのだ。



周りと大きな差があった。

ヒトでありたいと努力を重ね。

イノチをついやし時間を重ね。

周りのヒトの夢を知るたび、彼のかなしみは増しました。

周りのヒトの真似をするたび、彼のかなしみは増しました。


しかしいくら追ってもその差はかわらず。

決定的な違いを彼に教えるだけでした。

ついにかなしみはあきらめとなり。

もう彼はヒトデナシでしかないのだと理解しました。



イノチの形は変わるもの。

ヒトであるうちはヒトの形をしているけれど。

ヒトじゃないならヒトの形をしちゃいけない。


彼はヒトデナシだった。

ヒトデナシになってしまった。

ヒトデナシの形になるべきだった。


でも

彼はヒトでありたかった。

周りのヒトはみな、彼をヒトとして見ていてくれた。

かれらはみな、ヒトのセカイにいることを許してくれた。


彼はヒトではなかったけれど。

かれらに感謝をしたかった。


彼はヒトにはなれかなかったけど。

かれらに敬意を示したかった。



彼はヒトとして生まれた。

彼はヒトとして育てられた。

だからさいごは

彼はヒトとしておわりたかった。


ヒトデナシであるけれど。

形だけはヒトであるまま。


ヒトデナシになったけど。

形だけはヒトであるまま。


本当のヒトデナシになる前に

イノチをおわらせることにしたのです。







こうして彼はおわりをむかえた。

ヒトのセカイにさよならをした。

ミドリノホシに別れを告げた。


ヒトデナシの彼は

ヒトとしておわりをむかえたのでした。








パチンと泡が消えてしまう。

儚く寂しく消えてしまう。

まるでなんにもなかったように。

オホシサマから消えてしまう。



どうだった?

これが彼の

ヒトデナシのイノチのおわり

ミドリノホシでうまれておわった

ひとつのイノチのきろくだよ

彼はかわいそうなイノチだったね

ヒトなのにヒトじゃなかった

ヒトのセカイにいられなかった

かわいそうなイノチだったね。


『』


え?ぜんぜんちがう?

なんで?どうして?

彼はヒトじゃなかった

彼はヒトになれなかった

それに彼もかなしんでいた

だからかわいそうなヒトデナシでしょ?


『』


…なるほどなぁ

君はやっぱり頭がイイね


彼には”ヒトになりたい”という夢があった

夢を持つイノチの彼は

まぎれもなく”ヒト”だった

それに

彼はヒトの形でおわっていった

夢を持つヒトとして

ヒトの形でおわっていった

つまり彼は”ヒトになった”

彼は夢を叶えることが出来た

だからかわいそうなヒトデナシじゃない

彼は立派なヒトであった


…と

そういうことなんだね?


やっぱりすごい!

君はすごいねナガレボシ!

わたしはそんなのわからなかった

かなしいイノチとおもっていた


でも違うかもしれない

君のいうとおりかもしれない

彼は立派なヒトになれた

それはうれしいことなんだ



今までずっとイノチをみてきた

色んなイノチのおわりをみてきた

イノチのおわりはかなしくて

かわいそうだと思ってたけど

ちがうおわりもあったみたいだ



君のおかげで

いつもと違う見方ができた

新しいことを知ることができた

君と旅をしていれば

いつかホントにわかりそうだ

わたしの”どうして”がわかりそうだ


うれしいね ナガレボシ

もちろん

君の”どうして”もみつけよう

ふたりでいっしょにみつけよう




さぁ


つぎのイノチを見てみよう!



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