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 俺たち四人は寮にある食堂に向かった。


「お、無料メニューあるやん」


 真賀が嬉しそうに言った。彼女は食堂の券売機を見ていた。券売機はやはり、アガサを使用してポイントを支払うことで決済するようだ。


 本当にポイントを使って生活していくのか。ポイントでしか決済できない券売機を見ると、そう実感がわいてくる。


「ウチ、無料って言葉に弱いねん。なあ、みんなでこれ試してみーひん?」


 真賀が俺たちにそう提案した。先ほど坂柳に費用を支払ったばかりだが、まだ金銭的余裕はある。わざわざ無料なんて頼む必要はない。


 無料メニューの存在意義なんてたかが知れている。ポイントが足りなくなった生徒への救済処置なのだろう。無料だから、どうせロクでもない料理が出るに決まっている。


「まあでも。どんな料理でどんな味がするのか。それは知っておいて損はないだろうね」


 と七宮が言った。


「あらあら。みんなで同じ物を食べるなんて、何だか青春ねえ!」


 嬉しそうに言う綾瀬。同い年のはずだが、何だか歳を感じさせる発言だ。


 それはともかく。どうやら皆で無料メニューを頼むらしい。まあ、そういう慣れ合いは俺も嫌いではない。


「よし。俺も頼もう!」


 俺は意気揚々と宣言した。数分後、出てきた料理のみすぼらしさに、後悔するのだった。





「あ、面談だって」


 食堂でみすぼらしい料理を食べている最中のこと。七宮がアガサの画面を見ながら、そう言った。


 面談があることは、実は予め伝えられていた。今日は放課後、一部の生徒に面談があるかも知れない。だから遠くには行かないように、と担任の教師から言われていたのだ。


 一部の生徒って誰だよ、という質問には答えてくれなかった。何故、答えてくれなかったのかは謎である。


「というか、呼び出しはアガサでされるんだな」


 俺はアガサの画面を見ながら言った。画面には13時丁度の時刻を指し示されていた。


「便利よねえ」


 と綾瀬はにっこりしながら言った。何だか、機械音痴の人妻のような雰囲気を感じる。同い年のはずなのに。


 やがて七宮は2時間後の15時ぴったりに戻ってきた。俺たちはというと、食堂で会話に花を咲かせていた。


 しかしすぐに、今度は綾瀬が面談に呼び出される。彼女も大体2時間後の17時頃に戻ってきた。


 そして最後に真賀が面談に行き、やはり2時間後の19時頃に戻った。


「結局、俺は呼び出されなかったな」


 俺が言った。


「明日もやるんじゃないかしら」


 と綾瀬。まあ、面談なんて、どうでも良いか。むしろ無い方がありがたいかも知れない。


「んじゃ一旦、部屋に戻るか」


 と俺は言った。時刻は19時。何と6時間も食堂で談笑していたらしい。学生らしい、馬鹿さである。


 19時はもう夕飯の頃合いだ。先ほどまで空いていた食堂の席も、混んできた。


 俺は立ち上がる。そして鞄を……。


「あれ?」


 鞄を掴もうとした手が空を切った。俺は困惑して振り向くと、そこにあるはずの鞄がない。


 いや、そういえば。部室から鞄を掴んだ覚えがない。


「やべえ。部室に鞄、置いてきたままだ」

「だっはっは! 道理であんた、手ぶらやなー思ってん!」


 真賀が爆笑した。気付いていたなら言えよ。

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