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 その後。担任の教師が再度教室に現れて、寮の説明に入った。説明というよりは案内に近い。


 俺たちを引き連れて教室を出て、校舎内の寮に向かい、それぞれの部屋を確認させた。どうやら生徒一人につき、一人の部屋らしい。俺の部屋には、予め配達されていた荷物が段ボールで置かれていた。


 今日の放課後から、寮生活が始まるのだ。


 そして放課後。何と七宮の他に二名、参加希望者が出た。人数も充分ということで、坂柳の案内のもとに部室へ向かった。


 そう、きちんと部室が用意されているのだ。だからこそ維持費に5万も掛かるのだろう。


 数分程で部室に辿り着いた。ここが部室だったのかと思うくらい、普通の部屋だ。中に入ると、そこには教室を半分にしたくらいのスペースが広がっていた。


 部屋の中央にはテーブルがあって、パイプ椅子が備えられている。俺たちはそこに荷物を置いて腰かけた。


「では皆さん。もう一度自己紹介をしましょうか!」


 嬉しそうに、坂柳が言った。俺と坂柳が済ませ、七宮が済ませた後、残りの二人が自己紹介をし始める。


「じゃあウチからやな」


 関西弁の子が立ち上がった。ショートカットで、入学初日にも関わらず金髪にしている。しかし顔のパーツは整っていて、不良というよりは朗らかな、親しみやすそうな印象を与えている。


 身長は坂柳と一緒だが、胸は坂柳の方がでかい。


「ウチは真賀(まが) (みなみ)。入部した理由は、まあ、坂柳さんが面白そうだからっちゅう理由や。よろしくな」


 真賀が自己紹介を済ませて、座った。


「じゃあ、次は私ね」


 おしとやかに言った彼女は、ゆっくりとした所作で立ち上がった。ロングヘアーで、髪はしっかり整えられているのか、艶々だ。左目の下に涙黒子があって、高校1年のはずなのに何だか大人びた色っぽさを秘めている。


 身長は坂柳よりも大きく、胸も大きい。


「私は綾瀬(あやせ) 夏美(なつみ)。私も、坂柳さんが可愛くて参加しちゃいました。これから宜しくお願いしますね」


 綾瀬が自己紹介を済ませて、座った。


 坂柳の人気っぷりが凄まじい。当然だ。これほどまでに分かりやすい人物はいない。


「おい、坂柳」

「何よ。緒方礼二」


 何故、フルネームで呼び返した。


「皆から、部費の徴収はしないのか?」

「なーにブヒブヒ言ってんのよ。本当に変態ね」


 こいつ……。ぶん殴ってやりたい。


「まあ冗談はともかく」

「おい。本当に必要な冗談だったか?」


 ただ、俺が傷ついただけなのだが。


「あのね。せっかく参加してくれたのに部費なんて取ったら、まるで私が部費のために皆を集めたみたいじゃない!」

「まあ、そうか……うん? そうか?」


 坂柳の詭弁に、俺は一瞬、納得しそうになってしまう。


「ぷっ……あっははは! ほんま面白いわ、坂柳さん」


 俺と坂柳のやり取りを見ていた真賀が、笑いながら言った。


「あらそう? 真賀さん、だったわよね。私もあなたはお気に入りよ」

「ほう? それは、なんでや?」

「だって、関西弁じゃない!」


 と坂柳が言った。こいつは……なんて自由な奴だ。


 一方で、関西弁だからお気に入りと言われた真賀は、笑い頃けている。


「ねえねえ、坂柳さん。私はどう思う?」


 と、今度は綾瀬が坂柳に聞いた。明らかに面白がって聞いている。


「ええ。あなたもよ。何てったって……あなた、エッチィものっ!」


 それを聞いた俺は、口をあんぐりと開けてしまう。


「あら、そう? 私、エッチかしら。どう思う? 緒方君」


 と綾瀬は俺に聞いてきた。いやいや、俺に聞くなよそんなこと。


「いや、まあ、その……エッチかエッチくないかで言えば、エッチかなって」


 何を言っているんだ、俺は。


「あなた、本当に変態ね」


 嫌なものを見る目つきで、坂柳は言った。やめろよ、そんな目で見るの。


「綾瀬さんが変態に襲われないか、私心配だわ」


 やかましいわ。


 その後。何となく雑談を楽しんで、本日の部活動は解散となった。


「はい、これ」


 坂柳はそう言って、俺に鍵を渡した。部室の鍵だ。


「え、俺が管理するのか?」

「え、私に管理できると思っているの?」


 皮肉交じりに、俺と同じような言葉で返された。


「まあ、でも」


 と坂柳は言いながら、こっちに身を寄せてきた。そして耳元まで口を近づける。


「なんとなくだけど。あなたが一番信用できるのよ」


 坂柳はそう耳打ちした。彼女の温かい息が耳穴を通って鼓膜を刺激する。こそばゆい。


「でも勘違いしないでよ。あくまで、この中で一番信用できるってだけ」


 坂柳はそう言うと離れた。彼女の顔は赤い。


 そう言われたら、俺が管理するしかないだろう。俺は鍵を受け取る。そして鞄の中に入れた。


「じゃあ私。まだ部活の申請とかで用があるから」


 部員全員が部室から出た後、坂柳は言った。そして彼女は、そそくさと去って行ってしまった。


「なあ。どこかで昼飯でも食べに行かへん?」


 真賀がそう提案した。今日は入学初日だったので、授業は午前中のみであった。だから放課後の部活動は昼に行われて、俺たちは昼食をまだ摂っていない。


 この場にいる俺と、七宮と、綾瀬は了承した。

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