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「私が嘘をついたのは一点だけだよ。勝者の賞金と、敗者の罰金が不明という点だ。回答権の回数制限による罰金は200万ポイント。私はその事実を知っていた。そして……勝者には200万ポイント付与されるってこともね」
七宮はそう説明をしながら、アガサを操作した。すると俺のアガサに通知が届く。
クエストが終了した、という旨の通知だ。
「クエストはフェアだ。探偵役の中に犯人がいる可能性もある。でも今回、探偵役は二名で、内一名が犯人だった。一人が間違えた時点で終了してしまうと、私が殺人鬼であることが確定してしまう。そうなれば、今後の活動で不利になってしまう。だから勝利確定後にクエストを終了するか否かについては、犯人に委ねられていた。そしてたった今、私はクエストを終了させたんだ。だから私は今、200万ポイントを所持している。そして……」
七宮は再度アガサを操作する。すると再度、俺のアガサから通知が届く。
七宮は俺に、100万ポイントを付与していた。そのポイントと俺のアガサに残っていた半額クーポンを使用されて、自動的に罰金の支払いに割り当てられたと、そんな通知も届いた。
「これで君は退学を免れる。私には差額の100万が手に入った。そして君はこれから、バディとなった私と青春を謳歌するんだ」
七宮の言葉に、俺は絶望した。
俺のヒロインを殺害した奴と、これから一緒に過ごすという。
「ねえ、緒方君。君は私に言い放ったね。私は君のヒロインじゃないって」
ああ。確かに俺は、そう言った。
「でも、坂柳さんは君のヒロインじゃなかった。物語の途中で死んでしまうキャラなんて、ヒロインじゃないよね」
七宮はそう言って階段を下りた。
俺を通り越して、少し進んだ所で立ち止る。俺の視界には、彼女の後姿が映る。
「もう、考えを改めてくれただろう?」
そう言って、七宮は振り返る。
徐々に見えてくる彼女の表情は、明らかに笑顔であった。
「ヒロインは私だったね」
俺は彼女のその言葉を、認めるしかなかった。




