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アガサの画面から、バディの承諾をした。これで晴れて、俺と七宮はバディとなったのだ。
そして丁度同じタイミングで、アガサから通知が来た。先ほどの回答の結果が来たようだ。
「はっ……?」
その回答の結果を見て、俺はそう呟いた。内容はこうだ。
犯人は真賀南ではない。
回答権の回数が全て消費されたのにも関わらず犯人を特定できなかった為、俺はペナルティを受ける。
ペナルティとして、来月までに200万ポイントを支払わなくてはならない。
そんな内容であった。
「真賀が犯人じゃない……?」
俺は呟いた。先ほどまでの幸福感は、完全に吹き飛んでいた。
そして200万ポイントを来月支払うという。当然、俺は支払えるわけがない。今の手持ちと来月付与されるポイントを合わせても、100万以上の借金は確定だ。
つまり、退学が決まったようなものだ。
「な、七宮……どうしよう。俺……」
そう言って、俺は七宮を見る。
「ふふ」
そんな俺を見て、七宮は笑った。
「七宮……?」
俺は彼女を名を呼んだ。このタイミングで笑うなんて、絶対に可笑しい。
「緒方君。よく私を見ててね」
階段上にいる七宮は、階段下にいる俺に言った。
半ば放心状態で、俺は彼女の言う通りに七宮を見つめる。
すると彼女は、徐に身体を一回転させた。
ふわりとスカートの裾が上がる。すると、高低差でギリギリ見えなかった彼女のパンツが、ちらりと一瞬、全体が見えてしまう。
七宮は、虎柄のパンツを履いていた。
俺は、それを見て目を見開く。
そんな、ありえない。俺ははっきりと覚えている。普通のパンツだったら覚えていない。でも、虎柄という、独特なセンスのパンツだったから分かる。はっきりと覚えている。
七宮が履いていたのは、間違いなく坂柳が履いていた、虎柄のパンツだ。
どういうことだ。何故、七宮が坂柳の、虎柄のパンツを履いている。
――ほら。よく見るんだ。きっと君にしか、分からないことがあるはずだ。
七宮の言葉を反芻する。そうだ。死体となった坂柳のパンツは違うものだった。七宮の言葉で、それに気付くことが出来たのだ。
俺はそのパンツの謎を、解き明かしていない。
「そう。緒方君。君はパンツの謎を解いていない」
七宮が、俺に言った。
「確かにこのクエストにおいて、パンツが入れ替わっているのは些細な問題だった。でもね、緒方君。私にとっては重要なことだったんだよ」
七宮は一呼吸置いた。そして……。
「もう分かっただろう。私が。この七宮詩理が。坂柳楽々を殺したんだ」
彼女は仰々しく、そう宣言したのだった。




