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アガサを使用して、俺は回答を提出した。すぐに受理した旨の通知がされた。
結果は数分から数日掛かる場合もあるとのこと。
俺と七宮はとりあえず、寮に帰ることにした。
「真賀が犯人か。つまり殺人鬼の生徒だったってことだよな。明日からどんな顔をして会えば良いんだ」
と俺は憂鬱な気分で言った。
「気にすることはないよ。緒方君。君は勝利したんだ。真賀は多大なペナルティを受けることになるし、一方で君は大量のポイントを獲得する。標的の君でも、少しはマシな生活が送れることだろう。しかし、だ」
階段を降りていると、七宮は立ち止った。俺は丁度階段を降りてしまい、七宮は降りる前だった。つまり彼女との位置関係は階段分の高低差がある。
だから、スカートの中身が見えそうだった。しかし、ギリギリ見えていない。なんだかそれもエッチで、俺は目を反らしたり、釘付けになったりしてしまう。
「君は標的に変わりない。だから、ほら。アガサを確認してくれ」
七宮の指示に従い、俺は画面を見る。バディの申請が来ている、という旨の通知であった。
「バディ? バディってなんだ?」
「相棒だよ、相棒。この学園では、協力関係という意味合いが近いだろうか。バディを組めば、今後のクエストで探偵役になる場合、必ず一緒になる。それとバディ割引やら、何やらで特典が盛り沢山なんだ!」
興奮気味に七宮は話す。バディ割引ってなんだよ……。
「因みに、契約には5万ポイント必要なんだ。でも安心してくれ。君が承諾すれば、私のポイントから即座に引き落とされることになっている。君が支払うことはない。ただ、バディの掛け持ちは出来ないし、解散も出来ない」
「結構、重いんだな」
と俺が率直な感想を呟くと、七宮は途端に不安げな表情をした。
「その……駄目、だろうか。今回のクエストの件で、私は結構、君の役に立ったつもりだ。それに、君は依然として標的であることに変わりない。バディを組めば、必然と一緒の時間が増える。君をきっと、守って見せる」
七宮は、真剣な眼差しで俺を見る。
「七宮。お前はどうしてそこまで、俺のことを……?」
「そんなの、決まっているだろう!」
と七宮は声を張り上げた。
「君が私を救ってくれた時から。私は君に夢中だった」
そして、彼女はこう言い放った。
「私は……。君のことが、大好きなんだ!」
ドクン、と心臓が強く脈打った。面と向かって、ここまではっきりと告白されたのは、初めてであった。
正直、七宮の気持ちは知っていた。でも、俺は坂柳を忘れられなかった。
ただ、こうもはっきりと気持ちを伝えられてしまったら、意識せざるを得ない。
嬉しいって気持ちが、俺の全身を巡る。多幸感で思考が鈍る。
ただ、俺は最低なのかもしれない。こんな時でも、あの時に見た坂柳の虎柄のパンツが、ちらついてしまうのだ。
「七宮。まだ俺は、お前の気持ちには答えられない。でも七宮は、確かに俺のために頑張ってくれた。正直、七宮がいなかったら、俺は今どうなっていたかも分からない」
俺は、七宮に答える。
「七宮。俺はお前のバディになる」
それを聞いた七宮は、嬉しそうに笑った。
ああ、可愛いな。なんて、俺は素直にそう思ったのだった。




