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「ところで先生。先生は昨日、坂柳さんに部室の鍵を渡しましたか?」


 俺は何となく、鍵を管理している教師に尋ねた。


「ええ。渡しましたよ」

「まあ、そうですよね」


 と俺は微妙な返事をした。特に意図のない質問であった。


 ただ昨日、俺は坂柳の行動を全て把握していたわけじゃない。坂柳はいつの間にか部室の鍵を持っていた。


 だから鍵を管理している教師と、その収納箱を見て、何となく坂柳はそうしたんだろうなあ、と思ってしまったのだ。


――この学校はポイントで何でも買えるのよ。


 坂柳のことを考えていたら、彼女のそんな言葉を思い出した。


「この学校はポイントで何でも買える、か……」


 彼女の言葉を、何となく繰り返す。たった一日。その限りのある時間の中で、俺に対して発言された、貴重な言葉。


 その言葉が、何となく引っかかった。



「先生。例えばなんですけど、俺がこのスペアキーを借りたとしますよね。それで、先生にポイントを支払うことで、俺が借りたことを黙っていてもらうことって、可能ですか?」



 俺の質問を聞いた教師は、ふふっと笑った。



「ええ。可能ですよ。新入生は4月の間だけ、10万ポイントという決まりになっています」



 教師の返答に、俺は目を見開いた。


 これだ。間違いない。犯人は教師を買収したのだ。


 これで密室の謎は解かれた。少なくとも、不可能犯罪ではない。


「それにしても。10万ポイントって、ずいぶんと安いですね」


 と俺は言った。仮に全額支払ったとしても、5万ポイントが残る。寮生活では光熱費や水道代は学校負担だし、食費だって無料で済ますことも可能だ。そんな中で5万も余ると考えると、かなり安いのではないか。


「そんなことないわよ。あなたたち生徒は毎月15万ポイントを基準に貰えるからそう感じるかもしれないけど。それでも10万ポイントということは、10万円と同じなのよ? 月々の給料が10万上がったら、年収は120万も増えるということ。それは普通の社会人にとって、とても大きな額なの」


 と教師は言った。確かに。そもそも、俺たち生徒が毎月15万円も貰えてること自体が異常なのだ。その感覚で考えては駄目だった。


「先生。では、姉妹校の警察学園の生徒を買収することも、可能でしょうか」


 と、七宮が言った。何となく、俺はその質問の意図を察した。死亡推定時刻も、買収によって狂わされていた可能性を考えているのだろう。


「ええ、可能よ。20万ポイントで支払者の指示通りの結果を伝えるという、決まりになっています」


 決まり、になっているのか。ということは、間違いないのだろう。生徒によっては30万だったり、5万で済んだりすることもなく、20万ポイントで固定なのだ。


「鍵の管理に関して先ほど、新入生は4月まで10万だと先生は仰っていましたね。警察学園の生徒の買収にも、それは適用されますか?」


 と七宮。


「いいえ。されないわ。あとついでに教えますね。ポイントの後払いはどこも受け付けていないわ。それと、教師からポイントを借りることも、受け付けていません。警察学校の生徒とも、禁止されています。また出来ないように、システムが組まれています」


 と教師は返答した。


「緒方君。部室に戻って状況を整理しよう」

「ああ」


 俺と七宮は、そう言って職員室を後にした。

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