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「さて。問題点がある。先ほど、私と緒方君で別々の人物を指名すれば、確実に勝てると言ったね。しかしそれにはリスクがある」
七宮はそのリスクについて、詳細を説明した。
回答権の回数を全て消費してもなお、犯人が特定できなかった場合。ペナルティとして大量のポイントを没収されてしまう。
しかも、没収されるポイント量は明かされていない。
また、勝者に与えられる報酬として付与されるポイント量も明かされていない。
因みに、回答権がまだ残っているまま一週間が過ぎて殺人鬼が勝利した場合。回答権が残っていた生徒にはペナルティは発生しないとのこと。
「それでも。俺と七宮が協力すれば、必ず勝者が二人の内から出るわけだろ?」
と俺は思いついたことを述べてみる。俺が考えているのは、敗者の負担を勝者の報酬で肩代わり出来ないか、ということだ。
「そうだね。でもペナルティが、勝者に与えられる賞金で肩代わりできる程度だとも、限らないだろう?」
それもそうだ。しかも昨日のホームルームで、こんな説明があった。それは、ポイントの借金が100万を超えた場合、強制的に退学処分とされる、とのことだ。このリスクを負うのは、やはり怖い。
「当たり前だけど、この学校において標的の人権はないよ。何せ標的が死ぬことで利益を得ているところだからね。単純に退学できると、思わない方が良い」
と七宮が言った。何て酷い話だ。
「だから私たちは、ある程度は殺人鬼の犯行について把握できている必要がある。決定的な証拠を見つけられなくても、不明な点を極力無くしてリスクを減らしたい」
「そうだな。七宮に同感だ」
「そこで、まずこのクエストにおける最大の難関を明らかにしておこう」
と七宮は言った。最大の難関とは、一体なんだろう。
「それは、坂柳さんはどうやって殺されたのか。その謎を突き止めることだと思う」
「どうやって……それは、確か刺殺だろ? 包丁で刺したんだ」
「そうじゃない。ほら、私の言葉と、当時の君の行動を思い出すんだ。君はあの時、鍵を開けたのだろう? そして部室の鍵は、君が管理していたんだ」
そうだ。俺が鍵を管理していて、俺の手によって部室の鍵が開錠された。
「じゃあ、犯人はどうやって施錠されていた部室の中に入ったのか。それだけじゃない。坂柳さん殺害後、どうやって部室から出たのか。ただ出ただけでは、鍵は開いたままだ」
「七宮。それってつまり、密室殺人ってことか」
「ああ。現時点では、そうだろうね」
おいおい。冗談じゃないぞ。俺は探偵でも、殺人鬼でもない。ただの一般人だ。そんな俺が、密室殺人の謎を解くって?
「臆することはない。推理小説と違って、私たちには実際の現場を、この目で立体的に見ることができるんだ。そして少なくとも、私たちの現実では再現が可能ってことも保証されている。こんなミステリー、滅多にないよ」
嬉しそうに七宮は言った。そして今日の放課後、部室に二人で集まることにした。現場検証をするためだ。
容疑者である真賀と綾瀬には、部活動はしばらく休みだと伝えた。




