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「緒方君。まず私の説明をしよう。君が鞄を取りに部室に戻った時。実は私は、君のストーキングをしていた」

「おい」


 俺は抗議の目を七宮に向けた。


「仕方がないだろう。不良に囲まれた私を見事に救い出した君は、本当に格好良かった。もっと君のことを知りたい。そう思うのは当然のことだ」

「開き直るなよ」

「まあそんなことはどうでも良い。ともかく。君が部室のドアの前に立った時、私は君の真後ろにいた、ということだ」

「どうでも良くないが。それで?」

「私が見た限り、君は鍵を開けていた。そうだね」


 七宮に言われて、俺は思い返す。そうだ。俺は鍵を開けている。鞄が盗まれていないかを危惧して、しかし実際に鍵が締まっていたから安心したのだ。


「ああ」


 と俺は七宮の質問に対して肯定した。


「そして君が死体を見た時の反応も、私は見ている。もし君が犯人なら、誰もいないと思っているあの場所で、あんな反応を示すはずがない」


 七宮の言葉に、俺は思い返す。そう。あの時は初めて死体を見たから、かなり動揺していた。そんな時、七宮が後ろから俺を宥めてくれたのだ。


「そして、肝心なのは死体があった場所だ。死体は、最近できた部活動の部室にあった。しかし部室の入り口付近には、その部屋が何の用途に使われているのか、そういった案内表示はなかった」


 七宮の説明に、俺は思考を巡らせる。そうだ。俺たちは昨日、坂柳に伝えられたことで初めて部の存在を知った。そして坂柳に案内されて初めて、その部屋が部室であることを知った。


 つまり部室とされているあの場所は、あくまで形式上の話だ。見かけ上は、ただの部屋と変わりがないし、見分けもつかない。


「そうか。あの場所に思い当たるには、部員じゃないとありえない。容疑者は部員の誰か、か」

「その通り。因みに坂柳さん自らが犯人を部室に連れ込んだ可能性はありえない。それは何故か。坂柳さんが誘ったのであれば、彼女自身が部屋の鍵を開ける必要がある。しかし坂柳さんは直接緒方君に鍵を託している。彼女に部室の鍵を開けることは出来ない」


 俺はまた、思考を巡らせる。先ほど、七宮は俺が犯人じゃないとした。つまり残りの容疑者は、真賀、綾瀬。そして七宮だ。


「もちろん、私は自身が犯人じゃないと知っている。つまり容疑者は真賀と綾瀬の二人だ」

「おい。俺にとっては七宮も充分、容疑者だ」


 そう。先ほどのクエストの通知には注意書きがされていた。探偵役に選ばれた生徒の中に犯人がいる可能性もある、と。


「ふーん。それはどうかな。もし私が犯人だとして。何故私が君にここまで丁寧に説明する必要がある?」


 と七宮に言われて、俺は言葉に詰まった。


 確かに。こうしてアガサに通知が来ている。つまりクエストで勝ち負けを決めるというのは、もう紛れもない事実だ。


 そして探偵役は、俺と七宮の二人しかいない。七宮が犯人なら俺を放っておくだけで、簡単に勝利できるはずだ。


 しかし実際は七宮のおかげで、かなりの状況判断が出来ている。七宮が犯人であれば、そんなことをするはずがない。


「それに。死亡推定時刻だけを見ても、私にはアリバイがある。坂柳さんが死んだのは17時から19時。その時に私は、君たちと食堂で談笑に耽っていたはずだ」


 確かに。それは俺もよく覚えている。


「分かった。ひとまずは七宮を信用するよ」

「ああ。嬉しいよ」


 ただ実際。本当は俺自身が、七宮を信用したかった。俺はやっぱり精神が疲弊している。七宮に頼りたくて、仕方がないのだ。

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