32 特別なエンディング
「アンジュ、僕たちは君を愛している」
全員を代表してかクローヴィスが愛の告白をした。
愛の告白の代表って笑えるな。
私は目の前の起こるイベントに大興奮しつつも、笑けてきた。だってなんか見てる方も恥ずかしいもん。
壇上の聖女とその騎士たちの愛の告白に、生徒たちも大盛り上がり。
だがすぐ静まり、アンジュの返答を待つ。
よく訓練された聴衆である。
シナリオ様々。
観客が鎮まったところで、クローヴィスが静かに問う。
「君の答えを、聞かせてほしい」
アンジュは、柔らかく微笑んだ。
『……ありがとう。とても、嬉しいわ。
私も、皆のこと大好きよ』
「……。恋人として、誰か選んではもらえないか?」
アンジュにはいま選択肢が出てるのだろうか。
確かこのときも選択肢はあって、ミスると聖女として孤独に生きるエンドになるんだよね。
最後まで油断はできない。
まあ私アンジュじゃないけど。
『……誰も、選べないわ』
おお、逆ハールート完成か?
「どうしてもか?」
『ええ。だって私は……』
そして言葉を切ったアンジュが、こちらにやってくる。
え?
『シルヴィ』
『アンジュ……?』
『あなたは、何もわからない私に、たくさんのことを教えてくれたわ。
聖女らしく、そう言いながらも、
そう振舞えない私を責めたりはしないで、
あなたらしい聖女になればいいよと言ってくれた。
あなたと過ごして、色々な感情を知ることができた。
他の人は私が聖女だからとなんでも許しては甘やかしてくれたけど、
あなただけが、良くないことは良くないと伝え続けてくれた。
そういう人こそ、私に必要なんだって思うの。
皆も好き、大好きだけど……。
私は1番、あなたがいる世界を守りたくて、魔王を倒したんだと思う。
その気持ちに、今、気づいたの!』
『あ、アンジュ……』
『シルヴィ、私はあなたが大好き。
ずっと私と一緒にいてほしいの!』
まさかの主人公からの告白である。
でも、アンジュの口調が間違いなくこれはシナリオなんだと示している。
そして私の口も勝手に言葉を紡ぐ。
『アンジュ、私もあなたが大好きよ!』
心にもないことを言っているとは思わない。
アンジュが、私に抱きつく。
私もアンジュを抱きしめた。
聴衆がわっと盛り上がる。
攻略対象たちも、少し残念そうな顔をしながらも、
それぞれ微笑みを浮かべ私達を祝福している。
……聞き分けが良すぎないか?
これ、エンディングなのかな?
ふと、思い出す。
そういえば、逆ハーの最後に、聖女エンド、逆ハーエンド以外にもう1つエンドができたんだよね……。
そう、追加のアップデートで、加えられた特別なエンド……。
シルヴィ、エンド……?
「シルヴィ。覚えてるか?」
「え?」
急にまた元のアンジュに戻る。
考え事に熱中していて反応が遅れた。
いたずらっぽい眼をして私を覗き込んでいる。
「魔王を倒したらご褒美があると思って頑張ったんだが」
「ええ?」
「約束は守るものだ、なぁシルヴィ」
そう言って、アンジュは私にキスをした。
「ちょちょ、みんな見てるってば!
やめてって!」
アンジュの肩を押して離れようとするが、
そもそも密着していたのでなかなかうまく行かない。
アンジュが不満げに眉を上げたものの、
ニヤリと笑って私を側にあった暗幕の中に連れ込んだ。




