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12 聖女様の信頼

朝にも投稿しています。

 どうしようどうしよう。

 さすがにあれは、まずい。



 完全に誤解された!



 頭から布団をかぶり、とにかく自分の震えが収まるのを待つ。

 本当に、ゲームの通りになるなんて。

 これがゲームの強制力、ということなの?


 こんなんじゃダメだ、シルヴィ。

 アンジュが来たら正直に話そう。

 話してもわかってもらえないかもしれないけど……。

 でも私、アンジュに敵意なんて持ってないもの。


 もしわかってもらえないとしたら、できる限りアンジュに近寄らないことを約束しよう。

 監視役をつけさせてもいい。


 とにかくアンジュにだけは、わかってもらいたい……。


 そんなことを考えていると、少し落ち着いてきた。



 そこへ、アンジュが帰ってくる……。



「あ……アンジュ!」

「シルヴィ……」


 目を伏せるアンジュの方へ走り寄ると、さっと前に立ちはだかる影。


 私を睨むのは、クローヴィスだ。



「また危害を加えるつもりか?」

「ち、違うんです!

 本当にごめんなさい! あれは……バケツが勝手に、」

「言い訳など見苦しい」

「待て、クローヴィス。

 ……シルヴィ、話を聞かせてくれ」


 私は必死に説明した。


 たまたま入ったトイレに置いてあったバケツが、勝手に浮いて窓の外に出ようとしたので、それを止めようと手を伸ばしたこと。


 アンジュが下に居たことは知らなかったし、アンジュに酷いことなんてするつもりはなかったこと。


 黙って聞いていたアンジュは、俯く私の肩に手を置いた。



「私は君を信じるよ、シルヴィ」

「あ、アンジュ……! ありがとう……!」



 何て心の広い! 正に、正しく貴女は聖女ですっ!!


 私はアンジュに抱きついてひたすらに謝り、そして半泣きで感謝を述べた。

 アンジュはそんな私の背中をポンポンと優しく叩いてくれる。


「な、なんと言う……貴女は心根まで聖女なのか……!」


 クローヴィスが私と似たようなことを呟きながら感銘を受けていた。

 アンジュはクローヴィスに向き直る。


「そういうことだから、さっきの話はなかったことに」

「……いや、そういうわけには。

 これは理事長の決定でもある。いくら僕でも、おいそれと変更することは……」

「む。それなら私が直接行くか。

 ……シルヴィ、行くぞ」

「な、なに?」


 むんずと手を掴まれて、そのまま連れていかれる。

 さっきの話ってなんぞや?とアンジュに聞くと、私との同室を解消する話になっていたらしい。


 まあ、そうだよね。


「皆が納得できないなら、仕方ないかもね……」

「私が問題ないと言っているのに?」

「だって、アンジュは聖女だもの」


 この国にとっては、王族よりも立場が上なのだ。

 彼女がいないと魔王に対抗はできても、その力を押さえることはできない。 


 つまりは国の滅亡、ひいては世界の滅亡が早いか遅いか。


 アンジュが浄化魔法を使えるようになれば、滅亡を防げるのだ。

 アンジュが聖女として在るだけでも、多少は魔王への力の集積を抑えられているみたいだし。


 そんな聖女に対して狼藉を働いたと思われてるなら、その決定もさもありなんという心境だ……。

 いやむしろ甘いのでは?



 そうか、だからゲームのシルヴィは断罪されて追い出されてしまったってことだよね。

 ここから先、本当に気を付けないと、間違いなく断罪コースになってしまうってことだろう。



 もしかして、断罪されるのって本当は逆ハールートが問題じゃなくて、ゲームのシルヴィたんがやらかしたのが原因だったのかな……?


 このまま逆ハーになるのをほっておいて、アンジュに変なことしたりしなければ、断罪まではされずに済んだり……?



 しかし、その甘い考えは後程、打ち砕かれる。



 アンジュの直訴に、理事長は渋々同室の取り消しを取り消した。

 しかし、その後。

 話があると残された私に、理事長はこう言ったのだった。



「聖女様があれほど言うから今回は許すが、次はないぞ」

「はい、わかっております」

「お前の仕事を忘れるな?

 聖女様の覚醒の手助けをする。それがお前の仕事だ。


 それができないようなら、消えてもらう」


「……」



 消えてもらう。



 その言葉がどういう意味を含むのか。

 私にはわからない。

 文字通り、存在を消されるのか、この学園から消えるということなのか。


 どちらにせよ、逆ハーを放っておけば、役目放棄と思われて消されかねないと言うことだけは、確かだった。

ゲームの強制力とも言える?

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