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急展開は大体無茶振り


 先程とは打って変わって、静かになった調査班で












「ヘカーティアから北西に200キロメートル離れた森で春一番が確認されました」



 ローズの口から告げられた情報は、先程とは別の意味の静寂をもたらした。





 春一番。それは冬から春の変わり目に、魔獣達が種族問わずに群れを成し、何処か遠くを目指して、あらゆる障害を薙ぎ倒しながら突き進む原因不明の災害。



 進路上にある物に形振り構わず突き進み、まるで何かから逃げるように、狂ったように進軍する魔獣達の行軍。




 この魔獣の大移動に運悪く巻き込まれた小さな村や集落が、一晩もせずに滅びたという報告がたびたび上がっている為、災害として扱われている魔獣達の謎の生態が、確認されたと言うのだ。





「――ギルドは進路を確認次第、防衛線を配置し、迎撃。もしくは」














「――班長………」























「…春一番ってなんですか?」


「そこから!?」


















 







「――班長………異動届って受理されます?」


「される訳ねぇだろ絶対逃がすかコラ」


『ですよねぇ!?』




 概要を簡略しながらも、外国の出身故に何も知らなかったハヅキに春一番のレクチャーを終えたウルフに質問したのは、事の重大さを察して逃げ腰になったキール達だった。


 当然、万年人員不足の調査班でそんなものが受理される筈がなく。逃亡を図った3人はウルフによってあっさり捕捉されてしまったのだった。鬼だこの班長。




「いや班長!ムリっすよこんなの!?逃げるか身を守る(にげる)かしないと全滅ですってこんな!!」


「だからヘカーティア(こっち)側に来てるだけって話でまだ確定って訳じゃないだろうが!ひょっとしたら途中で逸れてどっか行くかも知れないでしょ!」


「やだこの人希望的観測がすぎる!?そう言って最後おれ達が駆り出されるパターンだって知ってますからね!!」


「今飛行型ゴーレム飛ばして逐一観測している最中で、現状おれ達に出来る事はねぇから安心しろって!最悪武器担いで最前線に出るかもしれんがな!!」


「終わった!オレらの人生終わった!」


「いやだぁぁぁ!童貞のまま死ぬのも魔獣に跳ね飛ばされて死ぬのもいやだぁぁぁ!!」







 調査班として初めて経験するには重すぎる修羅場(はるいちばん)に、自称ヘッポコの三馬鹿が強引に逃走を図ろうとするが、やはりウルフに遮られる。


 「何やってんだコイツら」といった感じの視線が女性陣から突き刺さるのもお構いなしに、部屋中を駆け回るバカ四人を止めたのは、今まで何かの端末を弄っていたアネットだった。


「――班長君、良いニュースと悪いニュースの二つがあるんだけどどっちから聞きたい?」


「良いニュースの方で!」


 「りょうかい〜」と軽い感じで答えたアネットは、指で弄っていた石板の様な端末の画面をウルフに向ける。そしていつもと大して変わらないが、少し焦ったような調子で現状を報告するのだった。



「一番近場にいた冒険者の3人。ヘルガとシェフィちゃんとジークさんが迎撃にあたってるわ〜」


「姉貴が!?」


「うげ…」


「で悪いニュースは!?」


「竜種の魔獣がいなかったからジークさんが撤退したことかしら」


「ダメじゃん!」


「ちくしょうあのドラゴン狂いめ!!」



 実質2名しか現場にいないってことである。


魔導銀(ミスリル)級冒険者のジーク・ハンネマンは下手をすればアリシア以上の膂力と豊富な戦闘経験を持つベテランの竜殺し(ドラゴンスレイヤー)なのだが、いかんせん竜種への執着が強すぎるのと、それ以外の魔獣に興味が無い性格が災いして未だに不壊煌石(オリハルコン)級に昇格できない問題児の一人である。


 なんで現場にでてんすかねあの人



「…いや待て、ジークさんは置いといてシェフィとヘルガさんでどれだけ持ちそうだ!?」


「最早あのバカは頭数に入れない方がいいわ。竜種以外への興味がてんでないものあのバカは」


「スカディさんジークさんに何かされたんですか?」


 過去火龍人(ファイアドレイク)という事でしつこく絡まれて微妙に苦手意識を持つスカディは嫌そうに歪んだ表情のまま露骨にジークをディスるのはこの際置いておく。


 彼女にとってジーク・ハンネマンという男は台所に無限湧きする黒光りするGに対する嫌悪感とほぼ同列だった。いや十分酷いなそれ。


 戦える戦力外はさておき、ウルフが気にしているのは残りの二人、シェフィールドとヘルガの方だ。

 獲物が弓とハルバードで綺麗に前衛と後衛に分かれてはいるが、いかんせん大量の魔獣を捌き切るには手数が足りていない。

 最悪最前線の二人が物量で雪崩込まれたせいでそのままやられてしまうのはウルフにとって一番避けたい事態だ。


 速やかに援軍を送り込みたいが、それまでに二人が持ってくれるかどうか――







「――この調子なら2時間くらい持ちそうよ」


『…………うそぉ…』



 「ほら」と向けられた液晶に写っていたのは、ハルバードをぶん回して小型の竜巻となりながら魔獣をミンチにしていく褐色肌の魔族の女傑と、レーザービームみたいな矢で獲物を消しとばしていくエルフの狩人の姿だった。


 上空から飛行ゴーレムを通して撮影されたであろう無双シーンに「もうあの人達だけでよくね?」という雰囲気が若手のメンバーに漂い始める

書くペースを上げたいなと思う今日この頃

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