会計班長ゴルド・ボーマンの憂鬱
投稿遅くなって申し訳ありませんでした。
今なお○ンハンにガッツリ創作意欲とかを吸われている最中なので、投稿ペースがかなり遅くなるかもしれません。
「来たか…」
「ボーマンさんいる!?ちょっと話があるのだけど!!」
十数人分の机を並べても差し支えないスペースを有する会計班の執務室にて、本日何度目になるか分からない訪問者達を待ち構えていた肥満体質の中年男性。会計班長のゴルド・ボーマンは、扉を蹴破る勢いで入ってきた招かれざる客達を一睨した。
そう言う対応は大体は部下達が行うが、生憎、連続する襲撃の殺到ですっかり疲弊しきった彼らは、皆壁際に避難してしまった為、そう言う対応は今は彼一人で行わなければならない。
色々あって、左遷される形でこのギルドにやって来た彼は、スーツがはちきれんばかりにお腹に脂肪をたっぷり蓄えた肥満体型。
鋭い目つきに、カールした口髭を蓄えた見事な悪人面。
激務や本部への予算申請その他激務もとい身内のやらかしで発生するストレスによってつい過食気味のゴルドは、気がついた時には28歳の時点でこの体型だったと言う。
残念な事に悪徳貴族みたいな容姿をした彼は、常識人だった。
このギルドの愉快な仲間達に振り回される方の人種だった。
特にアリシアと幼い頃から面識のある彼にとって彼女は、事あるごとに子供がいない反動で彼女を可愛がりまくった結果、下手に親しくしたせいで、一応弁えてくれてはいるものの、何かと遠慮無く無茶振りを振ってくる面倒臭い姪みたいな存在になっていた。
そんな若干の面倒な厄ネタと化している第二王女が、新たなる集団を引き連れてきた様を目撃してしまったゴルドは、来客の連続による疲労でやつれかけた頬をさらにげっそりとさせて、わかりきった抗議にやってきた一団に対応するのだった。
「――一応聞くがなんのようかね…最初に言っておくが、会計班も予算削減の煽りを受けたせいで出来る事は何もな……」
「そこをどうにかするのが会計班の仕事でしょう?―――それを打開する為に貴方にやってもらいたいことがあるの」
多分碌なことじゃない。
幼い頃の彼女を知っているゴルドからしたら、絶対に耳を貸してはいけない類の碌でもない暴論が出てくるであろうことは容易に予想できてしまった。
だが一応聞いて置かないと、このお転婆は何をしでかすか分からない為、気が滅入りつつもアリシアの戯言に耳を貸す。
顔を顰めて険しい表情のゴルドからは、「聞きたくねぇなぁ」と言う感情が切に伝わってくるが、そんなものお構いなしに、アリシアはこの空中分解一歩手前のギルドを救うための打開策をきりだした。
「――お金のツテは身内……じゃなかった。私の王宮から工面するわ。貴方はそれをいい感じに誤魔化して帳簿に加えてちょうだい」
ほら碌なことじゃない。と言いたげに部下が隠れた壁際に向かって顔面事視線を向けたゴルドは、それはそれは嫌そうな表情だったと言う。
「それは俗にいう横領というものでは無いかね?」
「………そう言われ無いよう、なるべく努力はするから」
なんの努力だこのバカは。
国民の血税をなんだと思っているんだこのバカ。
恋人ができて頭の中までとうとう真っピンクになったんじゃなかろうかこのバカは。
目頭が思わず熱くなったゴルドは、一体王宮は何処でこのお姫様の教育を間違えたんだと、この国の将来を憂いたゴルドは天井を仰いだ。
目から汗が出てきた汗を隠すつもりでは無いとは本人談。
「――アリシア様…そこに座ってください…ついでに後ろの連中も」
「何よ改まって?別に良いわよ。用事が終わったらすぐ帰…」
「正座しろつってんだバカやろう共」
「あっはいごめんなさい」
この後無茶苦茶怒られた。
「――わかっているのかね?貴方がやろうとしていることは、国の発展の為に集めた血税を横取りしているのと同じだと言うことを!?」
「別に横取りしようだなんて思って無いわよ!!ただ王宮の会議の議題で、このギルドにお金を回してもらうようにしてもらうだけよ!?」
「そんなもの可決される筈がないでしょうがこのおバカ!?」
ウルフが追いついた頃には、既にアリシア達が正座させられ、ゴルドによる説教を受けているところだった。
説教と言うよりは、お互いに一歩も引かずに言い争っているので、どちらかと言うと喧嘩に近い気がする。
それでも、言い分はゴルドのほうにありそうだが。
壁際で待機している会計班の職員に向かって軽く会釈して入室したウルフは、取り敢えずアリシアに着いてきたは良いものの、勢いだけでついて行ったせいで、特に役割を割り当てられずに本人達もすっかりなんで来たのか忘れてしまった内に、何がなんだか分からぬままに正座させられて手持ち無沙汰になっている自分の部下達を掻き分けてアリシアのもとまで突き進んで行く。
「――あ。班長ちーす。」
「おう。言いたい事は沢山あるが取り敢えず先に戻れ」
途中、ウルフに気が付いたキールに軽い感じで会釈されると、彼らを追い払うように「シッシッ」と手を振ると、アリシア以外の仲間を調査班の執務室に追い返す。
「こうなったら徹底抗戦よ!!貴方が首を縦に振るまで私達は出て行かないし、実力行使も辞さないから!」
「――通ると思ってんのかおらぁぁぁ!!」
「痛い痛い痛い!!なになに!?」
極めて正当性の高い卍固めがアリシアを襲った。
ゴルドとの口論に熱が入りすぎるあまり、羅刹の表情で背後から忍びよるウルフに気が付かなかったアリシアは、あれよと言う間に死角を取られ、これよと言う間にえげつない関節技を決められるのだった。
「痛い痛い痛い!?ウルフでしょこんな遠慮無い関節技できるの――あ。待ってやめて腕はそれ以上上がらなあああぁぁぁ」
「すみませんボーマンさん。バカを引き取りに来ました」
「あぁ…君か…いつもすまないね……」
「慣れましたんで……ほっとくと何しでかすか分からないですからこの爆弾は」
「ちょっと!なんで私がめんどくさい奴みたいな扱いになっているぐぎゃあぁぁぁっ!?」
「――おぉぅ…」
アリシアの訴えはシームレスで移行したウルフのヘッドロックによって封殺された。
再び騒ぎ出そうとしたアリシアを至極当然のような躊躇の無さで仕留めにかかったウルフの姿に、ゴルドは流石にドン引きした。
女性の口から出たとは思えない汚い悲鳴で命の危機を訴える彼女をそのまま連行して退室するウルフの姿は、後に「恋人相手でも平気で首を絞めにかかる鬼畜サイコ野郎」と後に語り継がれるのだった。
もがくアリシアを引きずり、最後に会釈して部屋を出て行くウルフの後ろ姿を見送ったゴルドは、脱力して、自らの椅子の背もたれに全体重を預けると、ついポツリと胸に秘めていた言葉を溢す。
「………もうやだこのギルド…」
ゴルドの悲痛な呟きは、隠れてた部下達の涙を誘ったそうな…。




