改善しようとする気が毛頭無い人達
前回のあらすじ
暴走のちクレームパーティ
「……そう言うウルフはどうなのよ!!貴方だって調査班の長だから苦情の一つや二つくらい来ているんじゃないの!?」
「そうですよ!!班長に限ってクレーム来てないとか有り得ませんからね!!」
「……コイツら開き直りやがって…」
苦情と言う名のジョルトブローの重たい一撃を受けて膝から崩れるハヅキを介抱するアリシア達から噛みつかれるウルフは、苛立ちでこみかみをひくつかせる。
開き直って彼に対して反抗するふてぶてしいアリシア達の姿にウルフの堪忍袋が耐えられなかった。
「そこまで言うなら読んでやるよ!!」と言わんばかりに投書の山の中から何枚かの束を適当に引きずり出すと、そこから自分に充てられたクレームだけをピックアップし、一つ咳払いをすると彼らに聞こえる様に大声で読み上げるのだった。
もう心情的にはかなりやけくそだった。
「えーと……訓練が厳しすぎるのでもう少し手加減して…リーダーなんだから責任持って王女さまとスカディさんの暴走を抑えてください……くたばれハーレム野郎……死ねダイドー………溺死か撲殺か刺殺のどれかを選ばせてやる…」
『…………』
「……………おれの苦情なんてほんのちょっとだから!?お前らに比べたらかなり少ないからっ!?!いいなっ!!??」
後半ただの殺害予告の連名になっていた。
一件、アリシアやスカディ達から好意を寄せられている(パッと見は)うらやまけしからん彼の境遇に嫉妬した連中からの投書だけを破り捨てたウルフは、もうこれ以上無いくらいのやけくそぶりで、部下達に圧を掛けるのだった。
どうでもいい所で変な苦労をしているウルフに流石に何も言えなくなったアリシア達は、彼から顔ごと視線を逸らして何も聞かなかったふりをするのだった。
恐らく殺害予告をだした連中は後でウルフ直々に締められるからそこはどうでも良いとして、これがどうギルド全体の予算の削減に繋がるのか。
「――……言いたい事は大体わかる……これだけだったら調査班の予算だけ削れば終わる話だけど、問題なのはこんな感じの苦情が殆どの部署にも来ているんだよ…」
どういった理由か理解出来ていない面子に、先程思いっきり捲し立てて息を切らしたウルフが解説する。
呼吸を整える彼曰く、知っての通りこのギルドの問題児達は別に調査班だけに集中している訳じゃない。
受付はともかく、人事班や技術班、医務室等の各部署にも多かれ少なかれ職員、冒険者問わずに問題児は存在している。
そんな彼らが好き勝手に行動するせいで分単位で必ずギルドのどこかで大小問わずに何かしらのトラブルが発生し、最後どこかの部屋が吹き飛ぶか、最悪ギルドが倒壊するまでが恒例行事と化している。
この一連の流れで毎回ギルドが身内の手で破壊される無法地帯状態に、とうとう本部のお偉い様方が「どれだけギルドを破壊すれば気が済むんだこの※⭐︎○×□共!!(自主規制)」…と言った感じに堪忍袋の緒が千切れ、「これ以上ギルドを壊したら本当に予算が消えるからな(要約)」と好き勝手に暴れる職員達と、それを容認する支部長への制裁として、「調和の証明」の来年度の予算が約7割カットされたのが原因だと言う。
「ぁぁ…このギルド問題児だらけだから…」
お前がそれを言うな。
疲れ切ったウルフ含めた全員の視線がスカディへと一斉に突き刺さる。
このギルドは、皆んながみんな、自分は常識人だと思い込んでいるのが一番の問題かもしれない。
「――ウルフぅ!」
「どうしたぁ!?」
「しりとりするわよ!!」
「目を覚ませぇ!?」
「ちらしずしのし!」
「――屍のね………はい次はウルフね」
「しりとりからじゃねぇのかよ、スカディさんはなんか物騒なんだよ、てか何も打開策浮かばないからって現実逃避に走ってんじゃねぇよ、つか突っ込むとこ多すぎて処理しきれねぇわいい加減にしろ!!」
「――つかそう言う事なら、俺らで身の潔白を晴らしません?」
錯乱したアリシアとそれに乗っかって現実から目を背けるスカディの二人組の怒涛ののボケ倒しに律儀に処理するウルフと、以降も身内内で不毛な言い争いが続けられる中、突如その中心から突拍子のない一言が投げられた。
このギルドの潔白を証明するなど土台無理な発言で注目を集めたのは、恐らく調査班で一二を争う潔白とは程遠いダメ人間もといダメエルフのキールだった。
いや何言ってんの?……全員の心中を要約したら恐らくこう言っているであろう視線を一身にうけるキールは、数多の視線に動じる事なくその口を開いたのだった。
「……いやあのですね………本部が俺らのこと問題児扱いしているのなら、それを俺らで覆しませんかって話で――」
「そもそもおれら晴らせる潔白すらないだろ」
「考えて発言しろクソエロフ」
「にべもなし!?」
当然ながら秒で却下された。
確かに自分たちは結構色々やらかしてはいるけどそこはせめてもっとこう…なんで自分のやらかしを肯定できるのこの人達?
「――こうなったら会計班に乗り込んで交渉するしかないわね」
「根気強く脅迫……じゃなくて交渉して資金をかき集めて貰うしか…」
「おいそこ二人」
どうトチ狂ったのかしまいには会計班に突撃をかまそうと調査班の過剰戦力二人が結託する始末。
前髪で目線に影を落としながら、二人仲良く得物の具合を素振りして確認し始めるその姿は、どう見ても穏やかに交渉しようとする気配は塵すらなかった。
寧ろ立場と武力をフルに使って恫喝……脅迫(又の名を強盗)に手を出そうとしていた。
二人仲良く、とてもいい歳した女性が浮かべてはいけないようなゲスい笑顔を顔に貼りつけて会計班に襲撃をかまそうとしていたアリシアとスカディは、当然のことながら額に青筋を浮かばせたウルフの本気のチョップが振り下ろされた。
ズドンと人体から鳴らされたとは思えない鈍い音を立てて二人の頭頂部に順に叩きこまれた手刀の一撃によって、鎮圧されて床に沈められたのだった。
『―…………いったぁ……』
頭が真っ二つに裂けると錯覚する威力のチョップを受けて執務室の床(カーペット敷設済み)にうつ伏せで倒れ込んだ二人は、大きなたんこぶから煙を立ち上げ、涙目にで叩かれた頭頂部を押さえて鈍痛を訴えたのだった。
そんな折檻された二人を「自業自得だ」と一蹴するウルフだったが、人間のアリシアは兎も角、火龍人の種族柄故のスカディの石頭にチョップを落とした右手を若干痛めてしまう。
「――石頭め…」と毒づくウルフはジンジンと痛む右手をぷらぷらと振って痛みを誤魔化していた時、目の前でたんこぶの痛みにうめく二人とは別方向。今度はウルフの背後から会計班襲撃を企む者の発言が響いた。
「……それだ…その手があったか…」
「――なんで気がつかなかったんだ俺ら…」
一人、また一人と、次々に碌でもない方向性に思考が伝播していく。
予算を削られて追い詰められ過ぎた彼ら(ウルフ以外)は、最悪の方向に舵を取っていく。
一応ハヅキはまだ理性を保てている様に見えるが、時々視線を向けてヤバい人達に混ざるか否か悩んでいる様に見えたので、ウルフによってすぐさまセーフな方に引き戻したのだった。
「――そうと決まれば今すぐ会計班に突撃するわよ!!」
『おう!!』
「――おうじゃない!いや待てぇ!!」
ウルフの静止に聞く耳を持たず、復活したアリシアに引き連れられたアホ共が、会計班へと襲撃をかまそうと我先にと調査班の執務室から飛び出していく。
普段個人で好き勝手に馬鹿騒ぎしている癖に、こう言う時だけやたらと統率が取れていることに、ウルフとギリ踏みとどまったハヅキは呆れかえるのだった。
「………じゃなかった班長!このままだとあの人達ほんとに会計班を襲撃しますよ!?」
「………そうなんだけどさぁ……」
散らかすだけ散らかしてあっと言う間に去っていった、アリシア達の奇行から我に帰ったハヅキは、ウルフにあの集団を追いかける事を具申する。
若干自分の事を棚に上げつつあるハヅキに対して、鈍い反応を返しつつも、さっきまでの彼女達の反応にずっと違和感を覚えていたウルフは首を傾げたままアリシア達を追おうとして、つい思っていた事をポツリと呟いた。
「――あいつら会計班にも予算そんな回っていないこと忘れていねぇか?」
「……………あ」
一応追いかけることにした。
作者の懺悔
最近更新が大幅に遅れている件について、私の懺悔と言う体で言い訳させてください。
最近ちょっと色々あってモチベが若干下がって筆をとる頻度がだいぶ減ったのが原因の一つです。
もう一つは、モン○ンライ○にがっつりうつつを抜かしていました。
いやだって楽しいんですモン○ン。操竜でモンスター同士をぶつけたり、体力を削るのがクセになるんですほんとに。
最後懺悔でもなんでもなくなってしまいましたが、一応元気にピンピンしているので、これまで通りゆっくり小説の展開を考えながら、大体3日の頻度で降りてくる、文字の神様が降りてきた時に書いていくくらいのペースで投稿していこうと思います。
最後に改めて、投稿遅くなって申し訳ありませんでしたー!




