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ヴィクトリア王国親魔族領冒険者ギルドの調査班班長の日常  作者: 真っ黒オニオン
絶望(激務)と希望(休暇)とやっぱり絶望(休み明け)の年末年始物語
41/60

冬に限らず朝は苦手

 自分、小説の本文を7000字までだと思い込んでいました…。


 よく見たら7000字じゃなくて70000字だった…














てことは前々回わざわざ2回に分けなくても1話で収めきれたじゃん!?

自分のアホ〜っ!!




 昨日のヘカーティアの夜ははいつも以上に冷えた。


 今年最後の寒波に襲われた親魔族領にはしんしんと降り続けた雪によって、彼方此方に雪が積もって一面を銀世界へと変貌させたのであった。


 

 街のあちこちでは、朝早くにも関わらず雪にはしゃいで玄関から駆け出してくる厚着の子供達や雪かきの為に屋根へとよじ登る大人達の姿が散見されるのだった。







「〜〜っ!さっむ〜い!!」


 ウルフ宅の二階から駆け降りるアリシアは、寒さから身を守る様に両腕で厚着した体を掻き抱いていた。



 彼女は氷の魔法を得意として、日常や戦闘でも応用して便利に使っているがそれとこれとは話が別。

 彼女だって寒いのは苦手である。

気温が下がれば暖房をつけるし夜のメニューに温かいシチューを加えるくらいには彼女は寒さに対して普通の感性を持っているのだ。




 朝食の準備の為に誘惑してくる布団を蹴っ飛ばし、身嗜みを整えてキッチンまでやって来たアリシアがドアノブを回す前に香しい朝食の匂いが漂って彼女の食欲を刺激した。




「〜♪……?あっ…おはようアリス」


「……おはようウルフ」




 キッチンの扉を開けた先には、彼女にとって世界で一番大切な愛しの彼氏(ウルフ)が既に朝食の準備を済ませていた。


 調子っ外れの鼻歌混じりに楽しそうに目玉焼きを作るウルフの姿に、アリシアはそう言えばと昨日新たに取り決めたこの家のルールを額を抑えながら思い出したのだった。




 家事は3()()()交代しながら行う事。


 これは昨日、諸事情で色々あってウルフ宅に転がり込んで来たスカディとシャアハウスする上で細かいルールを話し合って決めた事だ。


 他にも、風呂は女性から先に入る事。着替えを覗かない事。

 トイレは早い者勝ちで長居しない事。

洗濯物を盗まない事。

 その他諸々の細かい決まり事を、主に執着系肉食女子ことスカディがウルフを襲わない様に話し合って詰めていき、本人達の同意の下に話し合って決めて行き、その中にウルフが「家事を当番制にする」と言うルールを無理矢理捻じ込んだのだった。




 そんなこんなで思わぬ形でアリシアから自宅の掌握権を僅かながらに取り返し、上機嫌さを隠せずにウッキウキで台所に立つウルフは、久々の自炊にこれ以上無くテンションを上げていたのだ。



(――あぁ…ほんといつ以来だろう…アリスに手料理を振る舞うなんて…!)



 ウルフは別にアリシアに甘やかされるのは嫌いでは無い。むしろちょっとくらいイチャイチャ甘えてくれる方が個人的な好みだがそれとこれとは話が別。


 偶には良いところを見せたいのだ。甘えてばかりは性に合わない。男らしく好きな人の前では良いところを見せたい男児特有の見得みたいなのがウルフにだって一応存在しているのだ。

 

 後若干休暇もとい(割と緩めの)謹慎中は自由に動けるが、ウルフの場合若干暇を持て余し気味と言うよりは落ち着かなかったので、働ける口実を得れて少し安心していた。



 だめだこの社畜。




「………ふーん……」


「―?…どうしたのさこっち見て…」



 椅子に座り、頬杖を付いてエプロン姿のウルフを暖かい視線で上から下まで眺めるアリシアは、視線に気付いて振り返ったウルフから逃げる様に視線を逸らした。


 

「――ちょっと良いなって思っただけよ……」


 頬をりんごの様に染めて見惚れていたのを誤魔化す様にぽそりと呟いたアリシアに照れ臭くなったウルフは同じく頬を赤らめたのを誤魔化す為に「良いだろう?」と煽る様に胸を張った。

 そんないつもより浮かれた様子のウルフが新鮮だったのか、くすりとアリシアが微笑を浮かべる。



「――寝癖ついてるわよ?」


「え、嘘っ!?……待っておれの寝癖どれ!?」




 普段からボサボサで寝癖の区別がつかない頭髪が災いし、揶揄われ慌てて洗面台に駆け出すウルフを見送ったアリシアは、彼が焼いたトーストに口をつける。

 パリっと音を立てて歯形がついたパンは素朴で何処にでもありそうな普通の味だったが、そんな彼が焼いたパンが食べれる当たり前の日常が彼女にとって一番の幸せだった。


「……幸せだなぁ…」



 カップに注がれたスープを啜り、「おれの寝癖どれだぁ!?」と叫ぶウルフの悲鳴をBGMに、アリシアは幸せな朝食を堪能した。










「…………スカディさん遅くね?」


「…遅いわね……」



 食器を片付け、読書に浸っていたウルフの唐突な呟きにアリシアは頷く。


 アリシアとウルフが朝食を食べ終わって食器を片付けてからかれこれ3時間程経過していた。

 ウルフの肩に頭を預けて寄り添っていたアリシアは、壁にかけられた時計を流し見、短針が9時を示しているのをしっかりと両目で確認した。

 ポツンと寂しそうにスカディの分の朝食を取り分けた皿は、彼女を待っている間にとっくに冷めてしまっていた。


 「仕方ないわね」そう溜息をついたアリシアが名残惜しそうに寄り添っていたウルフから離れると「ちょっと起こしてくる」と言い残してキッチンと併設されたリビングから出て行く。


 「頼んだぞ〜」と見送るウルフの声を背に、彼女は二階のスカディの部屋に向かうのだった。



「……仲が良いのか悪いのか…」


 本人達に聞かれたら即座に否定する様なウルフの呟きは誰も拾わなかった。






 


「イオ〜…起きているの?……入るわよ〜……」



 休日のイチャイチャタイムを中断してスカディを起こしに来たアリシアは若干不機嫌気味に彼女の部屋のドアをノックする。

 行儀が悪い事を承知で何度か連続で叩いたがそれでも反応が無い彼女に痺れを切らしたアリシアが、扉を静かに開いてカーテンが締め切られて真っ暗になった部屋に侵入する。


 休日の過ごし方までとやかく言うつもりは無いが少なくともひとつ同じ屋根の下で一緒に生活する以上はせめて朝食くらいは食べに来て貰いたい。


 後、せっかくライバルに差をつける為に同棲を強行した自分と比べて、割とあっさり同居を許可された(自分が許した)スカディに対して若干の不満と嫉妬を抱いているアリシアは嫌がらせも含めてスカディを起こしに来たのだった。




 薄暗い部屋の主人はベッドの上で未だに安らかに眠っていた。

 箪笥や引き出しの上に所狭しとクマのぬいぐるみやウルフのブロマイド(本人非公認)を収めたファイルが敷き詰められ、普段のイメージとかけ離れた少女趣味を全面に押し出していた。


 そんな意外な趣味の持ち主であるスカディは、ベッドの上で規則正しい寝息を立てながら今現在も微睡んでいる。


 

 色気漂うネグリジェに包まれた身体を縮こませ、尻尾と翼を急拵えの人間用のシングルベッドに窮屈そうに丸めて。昨日うっかり本人の目の前で品評会を始めた故に没収されそうになって激しい激闘(交渉と説得)を乗り越えて死守した抱き枕をぎゅっと抱きしめて眠っていた。


 辛うじて翼の付け根に引っかかっているが、ネグリジェの肩紐が外れて、アリシアと良い勝負をしている滑らかな触り心地のスカディ山脈の北半球が姿を露わにして肌色の存在を主張していた。


 同性でも思わず見惚れる扇情的な容姿をした美女が無防備に寝ているのだ。

 起こしに来たのがウルフ(経験無し)だったら手も足も出ず面倒な事になっていただろう光景に、アリシアは思わず溜息を吐くと同時に自分が起こしに来る決断をして良かったと安堵したのだった。




「イオ。起きなさい……起きなさいってば……」


「……んっ…―――すぅ…すぅ…」


 ベッドの横に辿り着いたアリシアは、スカディを起こす為に彼女の露出した左肩を掴んで軽く揺する。

始めは優しく揺らしていたアリシアだったが、中々起きないどころかむしろ更に深い眠りについたスカディに対してイラッとしてつい感情的になって段々と揺する力を強くする。



 それでもスカディは起きなかった。



「おーきーなーさーい!!貴女用の家具を買いに行くって昨日決めたでしょ!!?」


 しまいには大声を出し、ベッドの淵を叩いてスプリングの反動で寝ている彼女を無理矢理起こそうと強行策を用いるも、ベッドが軋む音を立ててボヨンボヨンとマットの上を跳ねて尚、スカディが瞼を開こうとする様子が一ミクロン程も感じられなかった。


 どうでも良いが、スカディのブラに包まれたお胸も一緒に弾んでいた。どうでもいいが(異性には目に毒である)



「―――っ……っ………か…かくなる上は……っ!!」


 結局体力を消耗して息を切らせるだけに終わったアリシアはキッとねぼすけをひと睨みすると、最後の手段として彼女が大事そうに掻き抱く抱き枕を両腕で掴みグッと力を込めて……




「そぉぉぉいっ!!」



 勢いよく抱き枕を引っこ抜いた。



 これならどうだと引っこ抜いた勢いと人一人分の重みで遠心力がついて勢いよく背中から倒れそうになるのを耐えたアリシアは、誰に向けるでもなく勝ち誇った笑みを浮かべる。


 やり遂げた笑みを浮かべて悦に浸っていたアリシアは、せっかくだしちょっとくらいならと魔がさしてちょっとエッチな表情でプリントされたウルフをじっくり拝見しようとスカディが最下部に絶対に離れないとばかりに噛み付いている抱き枕を目の前に引っ張りあげ……















「―――じゃない!?どんだけ寝起きが悪いのよ貴女!?」



 抱き枕でスカディを一本釣りしていた現実を視認した瞬間に脳がフリーズして呆気に取られて目を丸めていたアリシアは、ワニの様に抱き枕に食らいつくスカディを抱き枕(ウルフ)事振り回して引き離そうと悪戦苦闘する。




 ここまで来ると最早寝起きが悪いで済ませてはいけない気がするが、アリシアが10分程振り回し続けてようやく抱き枕からスカディをすっぱ抜かせる事に成功する。


 勢いでベッドに不時着したスカディは、苦しそうな呻き声を端正な顔をから漏らすと、ようやくモソモソと起き始める。



「――…ゼー……ゼー……やっと起きたわね……ほら……出掛けるから早く朝ご飯を食べて…」




「――――――っ……………っ……ぃ……」


「え?……何よ?」



 肩で荒い呼吸を繰り返していたアリシアは、寝起きのせいかいつも以上に不満気な表情で此方を睨み付けるスカディに臆さず、早く朝食を済ませるよう伝えるが、スカディが小声で何かモソモソと伝えたそうに口を動かすのに疑問に思い耳を彼女に傾ける。



 近づいたのが運の尽き。スカディは素早くにゅっと伸ばした両手でアリシアの上着の裾を掴むとそれを……






「―――うるさいぬげ」



「きゃぁぁぁぁあっ!?」



 思いっきり上に引っ張って無理矢理脱がせる。


 スカディの不意打ちで突如万歳の格好で上着をひん剥かれたアリシアは、顔を羞恥心でポストより真っ赤に染めて悲鳴をあげ、腕を掻き抱いて下着に包まれた彼女のグレイトな巨峰を隠して抗議の悲鳴をあげる。

 腕で挟み込んだせいで余計に彼女の谷間が強調されて余計に男の視線を吸い寄せそうな格好になっていた事を指摘できる者は残念ながら誰もいなかった。



「い…いきなりなにするのよ!!」


「――それはこっちのセリフ…今何時だと思ってるんだ…」


 涙目で非難するアリシアの訴えを、ジト目を通り越して不機嫌そうな形相で睨み返して一蹴したスカディは奪い取ったアリシアの上着をそこら辺に放り捨てると、彼女の腕を取って自分のベッドへと連行する。

 

 アリシアをベッドに軽く放り投げたスカディは、彼女の上に馬乗りになると取り返した抱き枕をアリシアにグイグイと押し付け始める。



「寝ろ……着替えて寝ろ……私は昼まで寝て過ごすタイプなのよ」


「無茶言ってんじゃ――うぷっ―ないわよ!?大体服奪っといてなんていい――わぷっ―……ちょ、ちょっと!どこ触っているのよ!?」


「――おのれ…3年前は背も胸もちんまくて可愛かったのにいつの間にか私より大きくなってしまって……この分じゃおっぱいは私の方が大きくてハリがあるから私の勝ちね」


「余計なお世話よっ!!んぅっ!――そ、そんな大差無いから!!」



 抱き枕を押し付けてアリシアを黙らせながら、空いた手で彼女の胸をサワサワと弄って揉み心地を確かめたスカディは、勝ち誇った笑みを浮かべてアリシアを挑発する。


 実際三、四年前のアリシアは150前後くらいの身長で、胸も年相応に小さかったが、それが今はどうだ?

 健やかにグングンと成長したアリシアはいつの間にか背が伸び、18歳になる頃には自分の身長の157センチ(角除く)を抜き去ってしまった。おっぱいも大きくなって誰もが羨むボンキュッボンのナイスバディーへと成熟してしまったではないか。


 これが成長期というやつか?なんて羨ましいんだこのやろう。




「――私は昼まで寝るから…その時は起こして……」





「いい加減にしなさいよこの寝坊助大魔神がぁぁぁっ!!」




 抱き枕を押し付けながらその上に寝そべって二度寝を敢行しようとするスカディにとうとう我慢の限界を迎えたアリシアが吠えた。

 抱き枕をホールドしてぐるんとベッドの淵から自分ごとスカディを転がり落とした彼女は、寝ぼけ眼のスカディに馬乗りにのしかかって捕まえると着替えさせる為にネグリジェを脱がそうと彼女を押さえつける。


 嫌がって尻尾を振り回して抵抗してくるスカディの攻撃を防ぎながら無理矢理着替えさせる彼女の姿は、寝坊した子供を遅刻させないように朝の支度を手伝うお母さんの姿そのものだった。


 何かがぷちんと千切れる音が聞こえたがそれどころでは無いアリシアの耳には届いていなかった。



「観念しておきなさいコラァっ!!」


「いや〜〜寝かせてよ早起き族どもめ〜……」








「――流石にうるせぇぞ!!いつまでどったんばったんやってんだお前………ら………」




 アリシアとスカディの取っ組み合いがヒートアップ仕掛けたところで、流石にアリシアが戻ってくるのが遅すぎるのと先程から大きな音を立ててドタバタと暴れる2人に心配して様子を見に来たが、ただ喧嘩をしてるだけだと察して怒りの形相で強めに扉を開けて乱入してきた筈のウルフが視線をある一点に向けて絶句してしまった事で水をかけた様に静まりかえって終わりを迎えた。




「――――えっ………………!?」




 ウルフのと視線が自分の胸元に突き刺さっている事に気が付いたアリシアは、その視線をなぞる様に胸元を見下ろした。自分の下着がさっき揉み合った時に千切れて外れ落ち、豊満な水蜜桃が溢れて外気に晒され、意気揚々とその巨大な存在感を周囲に強く主張していたことに今更気がついて顔を羞恥心で真っ赤にして肩を跳ね上げる。


 肩が跳ね上がったと同時に彼女のグレイトなお胸もふるりと震え、慌てて両腕で掻き抱いて隠すも時すでに遅くウルフにガッツリ目に焼き付けられてしまった。




 スカディの上でマウントを取ったまま、力無くぺたんと女の子座りで崩れ落ちたアリシアは油の切れたブリキの様にぎこちない動きで頭を持ち上げて顔を上げて涙目でウルフを睨み付けるも、当のウルフは気まずそうに顔を逸らして見ないようにしていた。


 その気遣いが逆にアリシアにトドメを刺した。









「―――――い、いやぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

















 数時間後……リビングにて。




「――いや……まさかスカディさんがあんなに寝起きが悪いなんて思わなかったよ……うん……」



 リビングのソファーに座って腕を組み、羞恥心が振り切ったアリシアの決死の攻撃を受けて顔中をボッコボコに腫らしたウルフが何度も自分に言い聞かせる様な独り言を繰り返しながら頷く。


 隣に座るアリシアは、未だに火照って冷めない顔を、ウルフに背中を向けてずっと逸らしていた。

 

 ウルフの声は聞こえているが返事はしなかった。

 心の準備が出来てなかったというかほぼ事故だったものの見られて恥ずかしかった。

 いつかはウルフだけに晒す気はあったがあんなタイミングで見られたせいでウルフに対して理不尽だと思いつつも不機嫌そうに涙目でむくれていた。



 ちなみに、スカディは家具を見繕いに行った。

……自由すぎる……。








「―――アリシアさん……」


「………なに?」


「全面的におれが悪かったんでそろそろ許してください……」


「イヤ」





 しばらく拗れそうだとウルフは察したのだった。

 




 おかしい…スカディさんの寝起きが悪い話を書きたかったのに何故か今回おっぱい祭りになってる…

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