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ヴィクトリア王国親魔族領冒険者ギルドの調査班班長の日常  作者: 真っ黒オニオン
絶望(激務)と希望(休暇)とやっぱり絶望(休み明け)の年末年始物語
40/60

日常は変化があってナンボ

前回のあらすじ


 ギルドがとうとう吹っ飛んだ。

(通算32回目)





 昨日2話連続で投稿するのは流石に疲れました。

1話で収まりきれそうに無いんで分けて投稿したんですけど、やる気を燃料にどうにか書ききる事ができました。


 次は1話で収まり切る様に推敲頑張りたいと思います。

 あれからの話をすれば怒りと羞恥で爆発したハヅキの必殺の一撃でギルドは完全に崩壊した。


 荒れ狂う竜巻によって発破解体と見間違うド派手な破砕音を上げて崩れたギルドは奇跡的に死人が出なかったが、当然復旧を要するまで長い時間がかかるのは明白だった。



 今回の事件の中心人物であるウルフ達は、遠目でもギルドが派手に崩れるのを目の当たりにして休日を返上し大慌てで戻ってきたローズによってコンコンと説教され、支部長に至っては解凍されないまま笑顔でブチ切れたローズに拉致られてしまった。

 恐らく主犯格としてお仕置きされてしまうのだろう。



 こうして調査班は全員仲良く年明けの初出勤まで自宅待機もとい謹慎を命じられたのだった。



 そして件のスライム騒動から数日後…








「――という訳で今日からよろしくお願いします」

「――なんで?」



 さも当たり前の様にウルフ宅のリビングに上がり込み、目の前でペコリとお辞儀する正座のスカディにウルフは顔を引き攣らせて困惑する。


 口元をヒクヒクと引き攣らせて困惑するウルフの背後では、ソファーに座っているアリシアが表面上は微笑を浮かべながら絶対零度の視線をスカディに向けているので歓迎する気が無いのは明らかだ。むしろ抗争が勃発しないだけマシかもしれない。



「お帰りはあちらでございます」



 いつの間にかウルフ宅の主導権を握っていたアリシアが玄関を指差してスカディを追い返そうとする。笑顔で。

 対するスカディもアリシアを無視して担いできた旅行鞄からいそいそと抱き枕などの日用品を出して荷解き遠始める。…リビングで。

 


 こないだの息ぴったりのコンビネーションはなんだったのかと思える仲の悪さを見せつける2人に頭痛を覚えたウルフは明らかに機嫌の悪いアリシアに代わってスカディから事情だけでも聞き出そうと彼女に質問する。



「――えーと…その前泊まっていた宿はどうしたんですか?……ほらギルドの隣の止まり木亭使ってたじゃないですか」







「――追い出された…」

「なんで!?」


 ひとまず追い返すにしても事情だけは把握しとこうとスカディに尋ねたウルフだったが、気まずそうに視線を晒して答えた彼女の一言についいつもの調子で目をかっぴらいてツッコんでしまう。


 ウルフの背後でスカディを拒絶しながら紅茶を嗜んでいたアリシアも、よっぽどの事(アビーをナンパするとかエイダに手を出すとか)をしない限り寛容に宿泊させて貰える止まり木亭から追い出された事実を盗み聞いてつい驚愕した勢いで咽せて紅茶を吹き出してしまった。



「――ッ…貴女何やったら追い出されるのよ?!ちょっと騒ぐくらいなら見過ごすあの2人を怒らせるとか相当よ!?」


「……怒らせてはいない…」



 咳き込んでいたアリシアは呼吸を整えながら思わず身を乗り出してスカディに問い詰める。

 アリシアから見てもあの夫婦は寛容だ。

逆鱗に触れたりしない限りは出禁を告げられたりしない筈。

 もし怒らせていないと言うのならば視線を逸らして気まずさを隠そうともしない彼女は一体なにをやらかしたというのか……




「――その…お尻に触られそうになって……」

「……スカディさんの?」



 だとしたらどんな命知らずだろうか?

スカディにセクハラを働くなんてキールですら恐る蛮行を実行するやつは噂を知らない新参者くらいしか思い付かないウルフは額に皺を寄せる。



「…私じゃなくて……エイダちゃんが…その止めようとしたんだけど……」


「――何?年増が邪魔するなとか言われたの?」



 コクンと頷くスカディの姿を見てウルフ達は納得した。

スカディは「調和の証明(ユニオン・サイン)」の内部ではぶっちぎりの年長者だ。

 知り合いのエルフのシェフィールドの倍以上は生きているだろう彼女がロリコンの一言に思わずぷっつんして宿のロビーを破壊する程大暴れする様子が脳裏に映った2人は口元を引き攣らせてスカディを見下ろすのだった。



 当初エイダを守る為に割って入ったものの、派手に暴れた結果エイダを怖がらせてガチ泣きさせてしまい、挙句宿も荒らしてしまったせいでルドルフから苦い顔で追い出されてしまったのだろう。


 それで頼る当ても無いからウルフ宅にやってきたと……




「………いいんじゃないかしら?」


 どうしたものかと腕を組み頭を悩ませていたウルフの肩を軽く叩くのはソファーの上で断固反対の姿勢を崩さなかったはずのアリシアだった。


 唸るウルフの隣にまで歩み寄ったアリシアからまさか受け入れられるとは思わなかったのか、スカディはともかくウルフまでキョトンとした表情で彼女に振り向いたのだった。


 2人からの視線を集めたアリシアは頬を赤らめてむず痒そうに人差し指で髪をクルクルと弄るのだった。



「……まぁそんなに悪い事をして追い出された訳じゃ無さそうだし…良いんじゃないの?部屋も二階の空き部屋がある事だし……」

「――いや…おれらてっきりお前が一番許可しないと思っていたから…」

「……失礼ね…」

 

 ウルフに続いて深く頷いたスカディから見てもまさかアリシアが許可を出すとは思ってもいなかったのだ。

 酷評されて気恥ずかしそうに宙に彷徨わせていた視線を不貞腐れた様に2人に向けたアリシアは「――それに…」と台詞を続けるのだった。




「――どっかで問題起こすより、私達の目が届く所で生活してもらった方が手綱取れて安心じゃない?…」

「――失礼だけど納得したぜ…」


 呆れた様にスカディを指さすアリシアの言い分に納得したウルフは、疲れた様にため息をつくのだった。


 そんな2人の様子を見てスカディは、合点がいったようにポンと手を叩いた。






「――あぁ…貴様(アリシア)は常識無いものね……」

「あ・な・たの事を言っているのよこの問題児筆頭!!」

「なんだとこの問題児代表!!」




 しっとりした雰囲気はどこに行ったのかいつも通り騒がしくブーメランの投げ合いを彷彿させる喧嘩を始める2人から逃げる様にウルフはリビングから庭へと避難する。




 また1人、愉快な仲間が同居人として転がり込んで来た事実から目を逸らす為にウルフは青空に向かって大きく伸びをしたのだった。












「――――ぇ……ちょっと待って何この際どいカッコしたウルフの抱き枕カバーは!?」

「私秘蔵、アネット印の『ウルフのどちゃくそエロい誘い受けアングル抱き枕カバー』よ。……どれだけ金を積まれてもこれだけは絶対に譲らないわよ」







「――おい何の品評会してんだあいつらぁっ!?」

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