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ヴィクトリア王国親魔族領冒険者ギルドの調査班班長の日常  作者: 真っ黒オニオン
絶望(激務)と希望(休暇)とやっぱり絶望(休み明け)の年末年始物語
38/60

普段仲の悪い2人が力を合わせると大体の敵は蹴散らせる

前回のあらすじ


 調査班ほぼ全滅








 ミスったぁぁぁっ!?

予約投稿の設定いじるの忘れて途中までの奴投稿しちゃったぁぁぁ!?



 と言う訳で再投稿です。

本当に申し訳ありませんでした。



 平和な世界は退屈だった。



 戦争が終わって魔王軍と王国で和平協定が結ばれて人と魔族が争わなくなった戦火の無い世界で1人錆びていく感覚だった。


 魔族は質の良い食糧と王国から流れてきた娯楽を手に入れ、人類は見返りとして魔族の優れた技術力を提供された。



 変わっていく世界に居心地の悪さを覚えた私は自ら魔王軍第二部隊隊長の肩書を捨て去り、惜しまれながらも軍を去って旅に出た。



 王国と魔族の領域を彷徨き、当てもなく彷徨ううちに一年目にして平和な世界に寒気を覚え、3年目にして自分の存在意義を見失いかけていた。




 火龍人(ファイアドレイク)の生業は破壊と闘争。

 平和になった世界に触れる度に私の中の煮えたぎる破壊衝動がどんどん大きくなって息が詰まっていく。


 破壊(しめい)を遂行しろと、兵士(へいき)の本懐を果たせと、平和な世界に(おまえ)の生きる場所は無い。


 妥協と犠牲の上に作られた偽りの平和を破壊しろ。

そう強要する様な幻覚が私に襲いかかってくる様になって次第に私は病んでいった……












「ん〜〜っ――らっしゃぁあっ!!」



 パラパラと降り注ぐ塵が頬を撫で、瞼をさすが光でスカディの意識は覚醒した。


 重しを排除されて瓦礫の山から掘り起こされたスカディは、日の光を背にしてこちらに手を伸ばす女性が眩しさから細めた目に映った。



「――イオ!貴女怪我してるじゃない!!」

 気合いの一喝と共に細腕で瓦礫を投げ捨てたアリシアが逆光を背に、うつ伏せに倒れたスカディに手を伸ばす。


 額から流れる鮮血を拭き取ったスカディは、素直にアリシアの手を取ると引っ張り上げられる力を借りてズタボロになった修練場の床に立ち上がる。


「―ウルフは…?」

 額から滲む血を押さえて周囲を見回して真っ先にウルフを探すスカディは、頭痛を耐えるように頭を押さえながら左手で修練場の中心を指し示すアリシアの指先を追って視線をそこに向ける。







「――ああああぁぁぁぁああああっ!?」


 遊ばれてた。おもちゃみたいにぶん回されていた。




「……無事なの?……アレ?」

「取り込まれて無いだけ多分無事……だと思いたいわ……」


 一応無事っぽいが両足を触手に絡まさられてそのまま頭上でぶん回されながら悲鳴をあげるウルフに憐憫の視線を向ければいいのか呆れる視線を向ければ分からなくなったスカディは困った様な表情でアリシアに解答を求めるが、当のアリシアも困った様な溜息を吐くだけでスカディから視線を晒すのだった。


 なんでウルフはこう……こう言う時は大体やられるのだろう?

 見てるこっちが恥ずかしくなる様な醜態を晒すウルフ(こいびと)の姿にちょっぴり呆れ果てるアリシアだった。




「――助けないと……」

「貴女はじっとしてなさい」


 ふらつきながらもウルフを助ける為に駆け出そうとするスカディだったが、アリシアに行く手を遮られて制された事で動きを止める。

 代わりに両手剣を構えたアリシアが残った魔力を放出させて修練場の床に冷気を這わせてスケートリンクへと変身させる。


 手始めに自分の周囲を凍結させたが、どうやらあのスライムは大した感覚器官を持たないのかこちらの様子に気がついていない様だった。


 ならば氷を奴の足元まで伸ばしてフィールドを作り替え、高速で滑走してスライムを翻弄。

 先に頭上の触手を断ち切ってウルフを救出し、分断したところでスライムを氷像に変えて奴の体を少しずつ砕いていく。

この方法なら時間は掛かるが確実に全員救出できる。


 救出から討伐までの算段をつけたアリシアは「よし」と剣を構え直し、氷を蹴って滑走を始め――



「だから私も行く」

「――貴女ねぇ…!」


 背後から伸びてきたスカディの右手に肩を掴まれたアリシアは無理矢理スタートダッシュを止められたせいで慣性の勢いのまま前のめりに転びかける。


 非難がましく振り向いたアリシアだったが、傷ついて尚もウルフ達を救出しに行く意思を変えないスカディの眼光に思う事があったのか強く静止する事が出来ず言葉に詰まってしまう。




「私の超火力ならスライム(アイツ)を一撃で蒸発させられる――ウルフを助ける役目は譲るから………そもそも貴様と協力するとか癪」

「最後の本音くらい隠しなさいよ!――じゃあなんであんな無茶してまで私達を助けたのよ!?」

「そんなの決まっている――」



 アリシアを押しのけて彼女の前に出たスカディは真っ直ぐスライムだけを見据えて自分がトドメを刺す役目を買って出るが、最後最後で不服そうな本音が出てしまった。

 そんなスカディにキレ気味で詰め寄ったアリシアだったが、振り返った彼女のバツが悪そうな、何も分かって無いのかと馬鹿にする様な表情で振り向いたスカディの一言がアリシアの中でストンとハマった。



「貴様が傷つくとウルフが悲しむから――悔しいけど貴様がウルフにとって1番大事な人なのは認めざるを得ない……」

「――貴女……」

「ベストは全員無事で離脱出来る……事だったんだけど咄嗟の事で貴様とウルフしか押し出せなかった…」



 「後貴様1人に良いカッコさせたくない」と話を締めて視線を逸らしたスカディの顔色は何処か嫉妬している様なバツの悪さを隠そうとする様なムスッとした子供っぽい表情のスカディに対し、対するアリシアは呆れた様に溜息をついたものの、スカディの言い分に思う所があったのかかぶりを振って彼女の横に同調する様に並び立つ。


 恐らく立場が逆だったら同じ事をわたしもやったのだろうなと内心で認めたアリシアは、苦笑しつつも一時的に手を組む事を決意した。




「――だったらトドメは任せるからわたしはウルフ達の救助に専念するわ。……協力するのはわたしも癪だけど…」

「そっちこそ動きが鈍いと問答無用で私の攻撃で巻き込んでやるからさっさと救助して離脱なさい。……巻き込まれてくれたら邪魔者が減ってくれて助かるんだけど…」

「ウルフの赤ちゃんを産むまで当分死ぬつもりは無いから安心してぶちかましなさい……もっとも、わざわざ攻撃に当たってやるつもりも無いわよ」



 お互い余裕な態度で軽口を叩き合い、その合間にそれぞれ身体の調子を確認した2人は流し目でアイコンタクトを取って駆け出す。


 恐らくお互いに認めないだろうが、ウルフが絡まなければ息ぴったりのコンビが今この瞬間手を組んだのだった。









「ああああああっ!?」


 一方ぐるぐると勢いよくぶん回されていたウルフにも限界が来ていた。

 いつ遠心力ですっぽ抜けてもおかしくない無い勢いで振り回されているのと目まぐるしく景色が移り変わって行く所為でウルフの三半規管は既に悲鳴を上げていた。


 要は酔っていた。



(――あっ……だめだ…出そう…)


 酔った所為で胃液が逆流するのを感じ表情を青ざめさせたウルフはなんとか耐えようと口を固く結ぶが、それも一瞬。このままではゲロのスプリンクラーになるのは時間の問題だった――






「――うちの(未来の)旦那に何やってんのよ!!」




 白銀一閃。





気がついた時にはウルフは遠心力のまま宙に投げ出されていた。



 修練場一面を覆う氷の世界を創り出したアリシアは、鉄靴(てっか)の足裏に氷のブレードを生成、スケートの様に軽やかに滑走してスライムに肉薄する。



 冬風となったアリシアはスライムの一部分を凍結させて高速で滑走した勢いそのままに駆け上がると、ウルフを捕まえていた触手を横一線で両断したのだった。



 目的を達したアリシアはスライムが反応出来ない速度で頂点から跳躍すると魔力のブーストで加速、ウルフを追いかけ一瞬で確保したアリシアは、大気を凍らせ氷のスロープを生成。

 空中で態勢を整えながらお姫様抱っこで確保したウルフを抱え直してスロープに飛び乗りし、減速しながら(くだ)ってスライムから十分距離を取った地点に着地してウルフを抱き下ろす。



「一応聞いとくけど無事……?」

「無事じゃ無いっぽい……おぇ…」



 まず1人救出出来たアリシアはしばらくウルフが落ち着くまで彼の背中を摩っていた。


 目を回していた彼の吐き気が落ち着くまで側にいたアリシアは一言「休んでて」と告げて再び滑走を始め、剣に冷気を纏わせて高速でスライムへと突進する。




「今度は皆んなを返して貰うわよ!――ソード・―――」



 アリシアの(ブリュンヒルデ)が銀世界を纏う。



 剣から発せられる冷気は振るった勢いで吹雪を呼び起こし、修練場をスケートリンクから冬の世界へと変貌させる。


 油分を多く含んだスライムですら、吹き荒れる吹雪に耐えられずに凍らされて氷像へと姿を変え、更に加速して突っ込むアリシアの回転斬りが氷と化したスライムの胴体を捉えた。





「――プリンシパル!!」


 一撃で止まらず二撃三連。次々と氷の彫刻に肉厚の刃が吸い付いていき、アリシアが通り抜ける頃には、スライムの体はブロック状にカットされて中に取り込んでいたロマン達と切り分けられていた。


 人質がスライムごと氷漬けになってしまうと言う弊害は出たが、ここまでは想定内。

 ひとまず氷漬けになったが仲間達をスライムから切り離したアリシアは減速した勢いを使い氷が削れる小気味いい音を鳴らして振り向き、ずっとこの瞬間を待っていたスカディへと鎧を改造したスカートを摘み、カーテシーで合図を送る。




「――逃げられると思わないで」

 アリシアの合図を受け待っていたと言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべたスカディは、天高く掲げた剣先に紅蓮を迸らせ、灼熱に染まった炎の様に揺らめく刀身の剣、「プロメアス」を力一杯氷の大地に叩きつけた。



 静寂を生み出す氷の世界を突き破り、豪快に叩きつけられた刀身を伝って伝播した魔力は、赫い光を走らせながら、スライムを閉じ込めアリシアに寄って切り砕かれた氷像の欠片一つに至るのスライム本体を構成していた全ての欠片を射程に捉え、出し惜しむこと無く全力の一撃を解放する。





「火龍剣・激龍葬(げきりゅうそう)っ!!」





――業火爆裂


 焦熱の槍がスライムを捕らえ灼熱を叩きつける。




 大地を引き裂き空を焦がし、紅蓮の奔流が天高く迸って塵一つ残らずスライムを焼き尽くす。





 それは火炎を纏う龍でさえ骨すら残らず焼き尽くされる地獄の炎。

 かつて彼女を「黒龍の騎士」と恐れられ彼女たらしめんとした、とてつも無い破壊力を誇る範囲攻撃。



 修練場の全面に張られた氷を全て蒸発させる熱量を発する問答無用の広範囲爆撃によって、ばら撒かれたスライムの体一つ残らず蒸発し、中心部のコアが塵となって消し飛んでいく。





 全力全開の一撃を容赦なく叩き込んでスライムを討伐したスカディは、炎に包まれた周囲を見回してアリシアを見つけると彼女に向かってサムズアップ。



 対するアリシアも彼女に向けて天高くサムズアップを掲げるのだった。



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