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エピローグ この堅物絶対におとす

 年末までを目処に書いていたつもりが、いつのまにか新年度に…


毎日投稿されてる方を尊敬する今日この頃です。





今回後書きに今後の事を書いてますので、よろしければ最後までお付き合いください。


 突然だがウルフの自宅はギルドの近所の飲み屋街の外れに位置していた。


 宿屋や居酒屋、武器防具屋、離れた場所にある裏路地に身を潜める様に存在する夜の店等が立ち並ぶ冒険者が賑わうその町の片隅で、異彩を放つその二階建ての人一人住むにはそこそこ大きすぎる古民家にウルフは住んでいた。


 元を辿れば、「調和の証明(ユニオン・サイン)」に異動する際にロマンからタダで押し付けられたのだが。


 この物件は元々幽霊が出ると言う噂から事故物件として端金同然の金額で売られていたのだが、安さに目を付けたロマンに買い叩かれて彼のコレクション類(主にフィギュア)を隠す倉庫にされていたのだった。


 そんな幽霊なんか全く眼中に無い彼だが、この世でただ1人だけ恐る秘書さん(ローズ)のガサ入れの手がこの民家に伸びかけた事を察知したロマンは、親に対して無駄遣いの痕跡を隠す子供の如く民家のコレクションを回収し、出世祝いの名目でウルフにこの(じこぶっけん)を押し付けたのだった。




 こうして家賃は発生するもののタダで手に入れた自宅の前で、佇むウルフの目には信じられない光景が焼き付いていた。


 隕石が落下して自宅が粉々になったとか、火を消し忘れて焼け落ちてしまった事以上の衝撃的な事態が滅多に帰れない自宅で引き起こされていた。



 ウルフの自宅の前に大きな馬車が3台停まり、メイドや執事達が家具を忙しく運び込んでいた。


 家から馬車に向かって家具を運んでいるなら差し押さえの現場にしか見えない光景だが、残念ながら馬車から家に向かってクローゼットや化粧台を数人係で運んでいくその様子は、どう考えても貴族の引っ越しにしか見えなかった。




「――え…何、コレ…」


「――見ての通りよ。ウルフ」


 口をあんぐりと開き、震える指で自宅を指したウルフは、右隣から聞こえた弾む様なアリシアの声に反応し、油の切れたぎこちない歯車の様な動きで彼女に振り向いた。



 ウルフが昼前までに全ての業務を終わらせているのを確認してここまで連れてきたアリシアは、

お天道様に照らされて更に輝いて見えるそれはそれは見惚れるような綺麗な笑みを浮かべていた。


 ただし、ウルフからは獲物を追い詰めたネコ科の肉食獣の笑みにしか見えなかった。







「今日からよろしくね!」


「――いや、なんでだぁぁぁ!!」



 告白から凡そ6時間程でウルフの自宅に第二王女(アリシア)が転がり込んで来ていた。


 文字にすると単純だが、多方面を敵に回しかねない(主にウルフが)暴挙をいとも容易く敢行したアリシアにツッコミを入れたウルフは、それでほぼ全てのエネルギーを使い切ったのか、心労からか膝から崩れて四つん這いになる。



「なんでってわたし達恋人になったじゃない?だったら同棲しても何も問題は無いわよ」

「問題しかねぇよ!なんでお前一々一段飛ばし所か、階段全て飛び越える勢いで行動してんだよ!?」

「多分ウルフはあまり帰らないからあちこちに埃が溜まっているはずよ。引っ越しついでに徹底的に掃除して――あっ、わたしの部屋は2階のあなたの寝室の隣で大丈夫かしら?」

「スルーか!?家主の意思は無視ですかそうですか!!」


 復活して詰め寄るウルフを軽く流してウキウキで引っ越しの指示を出すアリシアと、目を血走らせてアリシアを必死に問い詰めんとするウルフの姿を生温かい目で見守る使用人達に紛れて、自宅の玄関から見慣れた金髪のエルフが姿を見せた。






「アリシアさーん。班長の部屋にエロ本を仕込んできました〜。ご要望通り女騎士と平民の純愛物――」





「きぃぃぃぃぃぃるぅぅぅぅっ!!!」

「ぷげらっ!!?」


 何故か脳みそがババロアより酷いことになって仕事を休んでいた筈のキールがサムズアップしていた。

その姿を視認したウルフは、助走をつけて飛び上がり、彼の顔面に飛び蹴りを叩き込む。


 顔面に靴底のスタンプをモロに貰ったキールは、蹴りの勢いで玄関から廊下までキリモミ回転しながら一回バウンドして吹っ飛ばされ、階段の手摺りに頭をぶつけて止まると、そのまま重力に従って廊下に激突する。


 ウルフは遠慮無しに蹴り飛ばした部下の落下地点まで詰め寄り。

仰向けに倒れて泡を吐きながら痙攣するキールの胸ぐらを掴んで無理矢理起き上がらせてガクガクと激しく揺さぶる。

 怪我で休ませていたはずなのに自宅でエロ本を仕込んでいた部下への遠慮は粉微塵も無かった。


「お前人ん()で何やってんだ!?何アリスと共謀して人の性癖ねじ曲げようとしてんだ!?つかお前らの分の始末書を誰が書いたと思ってんだゴラァぁぁっ!!!」

「―ぐ…()るじい…」

「やめたげてウルフ。キール死んじゃうから。それ以上やるとほんとに脳細胞全て死滅するから」




「キングサイズのベッドとか初めて見たぞ!?」

「――て言うかどうやって部屋に入れるんだコレ?!」


 ガクンガクンと揺さぶられるキールは、更に聞き覚えのある2人の部下の声が耳に入ったウルフの手が緩んだ瞬間に解放され、再び仰向けに倒れてそのまま動かなくなった。

 多分死んで無い。


「……パフェが食いてぇ…」

 死んだ目で虚空を見つめて、ウルフは現実逃避を始めた。


 …なんで休み取って人ん()の引っ越し作業してんの?

 アインが1番重症じゃなかったっけ?

 ゼフもピンピンしてるなら自分で始末書書かせりゃよかった…


 そもそも王宮はなんで第二王女(コイツ)を野放しにして――



「――そうだ!陛下はなん――」

「はい。お父様とお母様から預かってきたわ」


 活路(追い返す口実)を見出したウルフは、この国の長が絶対にこの事態(同棲)を許さない事を確信し、勝利の笑みを浮かべてアリシアに振り返る。

 対するアリシアは笑顔のまま、ウルフに2通の手紙を差し出した。


「――………」

「…読まないの?」


 2。その数字はこの国のトップの王と女王(ついでにアリシアの両親)の人数を足した数。それが2通。

 送り主の名前は、ちょうど国王と女王陛下の名前だった。


 自分宛に届いた手紙を読んではいけない気がした。

 アリシアが陛下から直々に預かってきた手紙は、地獄行きの片道切符にしか見えなかった。


 ウルフは震える手で恐る恐るロウで封された手紙を開封して、王家が直に書き記したものを示すサインが手書きされたそれを、逃げ出したい気持ちを押し殺して目に焼き付けた。


 丁重な挨拶から始まったそれの本文は、わずか一行程で終わっていた。





【覚えていろ貴様】


【孫の顔はいつ見れますか?】



「――うぐぅぅっ」



 手紙を最後まで読み終えた瞬間に胃痛を発症したウルフは、アリシアの目の前でお腹を押さえて蹲った。


 どっちとは言わないが、やたら筆跡が濃いそれからは殺意しか感じなかった。

 後何故か女王陛下はノリノリだった。



「……そう言えばお父様は『…()らねばいけない男が出来た』とか言って剣を片手にどこかに出かけて行ったわね…?」

「…それ間違い無くおれぇ…」


 もうだめだ。終わった。

さりげなく己の死を悟ったウルフは天井を見上げたまま真っ白になって動かなくなる。


 魂が抜けて丸と線だけで簡単に書ける落書きみたいな顔になってしまったウルフを、苦笑したアリシアが彼の頬を引っ張って現実へと帰還させる。


「――もうほろしぇ(もう殺せぇ)…」

「しっかりしなさい。ほら、シャンとする」

「――ひゃれのしぇいはとほもっへんはぁ(誰のせいだと思ってんだぁ)…」

「それくらい言い返す事が出来れば大丈夫ね…」


 しばらく頬を弄ってウルフの変顔を堪能していたアリシアは、ウルフを解放する


 解放されたウルフは崩れ落ちたままの体勢で、スキャンダル事件以上の効果を発揮する周到な包囲作戦を実行したアリシアを恨めしげに睨み付けた。


 アリシアはそんなウルフと目線が同じになるように屈んで、自分の想いをウルフに告げていく。


「――わたしもあなたの事を愛してる。」


「あなたと恋をして、恋人になって。今でも十分過ぎるくらいにわたし自由で幸せよ」


「――だから、あなたがわたしに「捨てても良い」なんて言えなくなるくらいには――」



 頬を赤く染めたアリシアは覚悟を決めると、瞳を閉じ…。




 一瞬2人の影が重なった。


 永遠と錯覚する迄に交わされていた口付けは、アリシアが先に離れた事で終わりを告げる。


「…捨てないでって言わせるくらいにずっとずっと。わたしはあなたを一途に愛し続けるから!」



 「お昼の準備してくる!」と駆け出したアリシアの顔は羞恥で真っ赤に染まっていた。


 恐らくお互い人生で1番甘酸っぱい時間を過ごしただろう。






「――知らねぇぞ。おれは…」


 誰にも聞かれないくらい小さな悪態をついたウルフも顔を真っ赤にして…。

 それでも誰よりも幸せそうだった。





「お前らぁ!今日の昼飯はおれとアリシアでご馳走してやらぁ!!」



「――夜はアネットさんとハヅキを呼んでこい!!おれの奢りだぁっ!!」



「―マジっすか!?」

「あざーっす!班長!!」











 想いを遂げた2人の行く末はどうなるのか。


それは誰にも分からない。


己の想いを曲げない堅物2人の日常は…



きっとこれからも賑やかだろう……。

 

 この物語を最後まで読んで頂きありがとうございます。


 12月の頭から始まって、年末を目処に書いていたこの物語は、1月の半ばくらいでようやくひと段落できました。


元を辿れば、へそ曲がりな私がざまぁとか、異世界転生とかが蔓延るなろうの環境で、転生無し。ざまぁ無し。その世界の主人公と愉快な仲間たち以外は全く関わらないなんちゃってファンタジーがどこまで行けるのかという思いつきで始まったものでした。


 当初10人くらいの方が読んで貰えれば上等な方だと軽い気持ちで始めたものの、気がつけば多い時で220人くらいの方に読んでいただいて、大変驚きました。



 あまりの衝撃で、嬉しいより先に驚愕で頭がいっぱいになってしまいました。


 自分語りが長くなってしまいましたが、短いような長いような、この小説の第1章にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。









 次回からは登場人物を纏めた後に第2章を始める予定です。


言い訳だけさせてください。名前だけしか出てないスカディさんとか、後半ちょっとしか出てないシェフィールドさんとか、頭の中にメモしているウルフ達の夏休みとか他にも太陽が登らない砂漠の国とか。

 書いている間にどんどんと書きたい事が増えて私は消化不良なんですよ。


 いつ完結するか分かりません。100話は確実に超えそうです。


 ですので、この小説の続きが楽しみな方も「仕方ねーな!最後まで付き合ってやるよ!!」と言ってくださる寛容なお心をお持ちの方も、どうか最後まで楽しめるよう、自分のペースで執筆していきたいと思います。


 こんな長い後書きに最後までお付き合いいただきありがとうございました。


 次回のウルフ達の活躍にどうかご期待下さいませ。


それではこの辺で失礼いたします。


                    by作者

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