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多様性に富みすぎるアットホームな職場です

 少し昔の話をしよう


秘密基地に集まった3人の少年少女達。


彼らはずっとずっと一緒だと。


ずっとずっと思っていた。


時が過ぎて15歳になったあの日までは…。



 また3人で笑えるんじゃないかって…。


……あぁ…今のおれを見た彼らは…


いったいなんて言うの(非難する)だろう?








「……ばっかじゃないの?」


 未だダンジョンの内部、出入口の目前で崩れた筈のアリシアは、嬉しい様な困惑している様な。やっぱり嬉しい様な表情で、瞳からポロポロと流れる嬉し涙を拭う。


「…人が初めて作ったお弁当ディスってから告白するとか、今時ラブコメ主人公でもやらないわよ」

「……おれも無いと思うよ。…ごめんやり直していい?」

「なにそれ」


 目を泳がせて内心取り乱しているのが見て取れるウルフを見て、アリシアに笑みが浮かぶ。


 恐らく勢いで出た言葉なんだろう。励まそうとして内心で押さえ込んでいた彼の気持ちが本音がポロッと勢いで飛び出してきたからウルフは慌てているのだ。


 2人は両片思いだったのだ。ウルフが色々拗らせていただけで、もう一押しすれば2人はくっついていた。



「…そんな下手くそな告白で落ちる女なんていないわよ…乙女を舐めないで」


「――でも…わたしも嬉しいわ…あなたの口から好きって聞けたの…」


「ずっとあなたに避けられていると思っていたから……わたし、あなたに嫌われていると思って少し不安だったの」

「あれはお前がグイグイ来すぎるのが悪い」


 それもそうね。と頬を微かに染めたウルフから指摘を受けたアリシアはクシャリと笑った。

 次から少し抑えようと。まぁアピールはやめないが、もう少しおとなしめにしておこうとアリシアはそう決意したのだった。


 足を崩して座っていたアリシアは、頬を優しく挟むウルフの両手からすり抜けると、同じく彼女と視線を合わせる為に屈んでいた彼の胸元にふわり倒れ込んだ。


 いきなり胸元に飛び込んできた彼女に慌てたウルフの心音を刻む若干早めの鼓動の心地良さを感じていたアリシアは、ウルフの胸元に埋めていた顔を上げて上目遣いで彼を見上げた。




「――わたしもあなたを…ウルフ・ダイドーを誰よりも愛しています」


「…でもあんな告白じゃあ結婚なんてしてあげないわ―」



「―だからわたしと…アリシア・フォン・ベルベット・カルロス・ヴィクトリアの恋人になってください」


 返事は無かった。出入口から登りかけの陽光に照らされた氷塵煌めくダンジョンの中で、ウルフが黙ってアリシアの背中に両腕を回してアリシアを抱きしめたのが答えだった。


「――ほんとに良いのかよ?人を殺しかけたし、不本意だけど女はべらしているしで真っ当な人間じゃ無いぜ」

「―あなたが真っ当じゃ無かったら、世の聖人君子は皆んな犯罪者よ?」


「誰が来たって、あなたを奪い去ろうとしたって、あなたから離れたく無いって言わせるくらいにはメロメロにしてあげるから安心しなさい?」


「……だからいつか聞かせて?あなたの口言葉で今度こそ。……わたしと結婚してくださいって」


「――今は側でずっと居させてください」





「……んっ」

「…まじかよ…おい」


 上目遣いのまま瞳を閉じ、そのまま唇を突き出してきたアリシアに対してウルフは赤くなった頬を掻いた。


 覚悟が決まるまで暫く視線を石造りの天井しかない空中で泳がせていたが、腹を括ったウルフも瞼を下ろしてアリシアの唇に吸い寄せられる様に…









「――うわぁ…班長…アリシアさんもうわぁ……」

「――見ました奥さん?あれがうちの班長の貴重なデレでございますよ?」


「……待てコラ。何してんだお前ら?」


 2人がちゅーする3秒前くらいで、出口から顔だけ出して覗いて居たアインと、真っ赤に染まった顔を両手で隠して指の隙間からガン見するハヅキの乱入に気づいたウルフがツッコんだせいで甘い空気が霧散してしまった。


 アリシアの額を押さえて出口側を睨んだウルフの視線は、残念ながら野次馬2人には余り効果が無かった。


「――いつから居たお前ら?」

「弁当不味かったのくだりからっす」



 ほぼ最初から見られていた。


その事実に顔が焼ける様に熱くなっていったウルフは、思わず蹲りたくなる衝動を抑えて再びアイン達を睨んだ。


「えーっと…その…アネットさんに介抱して貰ったは良いんですけど、アリシアさん達が戻って来られなかったので加勢しに戻って来たら……」


「うん分かった。ハヅキよーく分かった。だから、その初めて手に入れたエロ本を親に隠れて読む思春期少年みたいな期待と羞恥が混ざった視線で続きを促すのはやめろ?」


「いや〜やっとこさくっついてくれて〜良かったっすよ〜!……あ〜、でも班長〜。弁当不味いのくだりは〜要らないと思います〜」


「アインやめろ?そのウザい感じで語尾を伸ばして人の告白ダメ出しするのを今すぐやめろ?」


 ぎゃいぎゃい好き勝手に騒ぐ野次馬のせいで色々冷めたウルフは、アリシア達を連れてギルドに戻ろうとアリシアを抱いていた腕を離すが、逆にアリシアから力強く抱きつかれた。


 更に黄色い歓声をあげるハヅキ達を無視しようとするも、頬を紅に染めたアリシアの非難じみた上目遣いで動きを止められる。



「……どこに行くのよ…?」

「どこってお前…ギルドだよ。ほら帰るぞ」

「やだ」


 突然、駄々っ子モードに突入して再び胸板に顔をうずめたアリシアに困惑するウルフ。


 なんで急にこうなったこいつ?


 なんか目がとろんとしてると言うか据わっているというか…

頬どころか顔面全体が真っ赤になってるし、なんか熱いし、柔っこいし、くびれた腰回りとか女性特有の柔らかさとかホントに女の子っぽくてなんかいつもより可愛いぞこいつ?……じゃなくて。


「……アリス…お前風邪ひいた?」

「ひいてないもの…くしゅん」


 ダウトである。ガッツリくしゃみしている時点でダウトである。


 思えばここ最近ずっと激務だったし。さっきまで毒を受けたりして命の危機に瀕していたし。なんならダンジョン全体が冷凍庫見たいになってる所為でかなり肌寒いのだ。


 疲弊したアリシアが体調を崩すのも仕方がなかった。


「あーあーこれはあれですねぇはっくしょい!!アリシアさんをお姫様抱っこして運ばないとぶぇっくしょん!!行けないへぇっくしょん!ですねぇ」

「すいません。私達何も見て無いんでどうか心置きなくやって下さいへぷしゅんっ!」

「まず自分の身を省みろ風邪引き共?…ほら、帰るぞアリス。帰ってあったかくして寝るぞ?」

「やだぁ…いかないでぇ…ずっとそばにいさせてぇ……」

「行かないから。ほら早く帰ろ。…なっ?」

「…いまハヅキのほうにいこうとしたぁ……」

「いや出口あっち。ハヅキの方。ハヅキの方行かないと出られないから。…つかアインは眼中に無いんかい…」

「―――わかった…」


 風を引いてなお茶化してくる病人2人無視してウルフはアリシアを説得する。


 アリシアが意外にもあっさり折れてくれた事にウルフは安堵の溜息を吐く。

ウルフを解放したアリシアは、空いた両手をウルフに前まで閉じて貰った上着の裾に手を掛けて……



「――脱ぐ」

「待って。何やってんの待って」


 上着を無理矢理捲り上げようとするアリシアの両手を掴んで、ストリップショーの開催を防ぐ。


 野次馬が更に喧しく茶化してくるが、気を抜いたら馬鹿力で吹っ飛ばされそうなウルフはそれどころでは無かった。


「こうすればウルフずっとわたしのこと見てくれるんだもの!じゃあ脱ぐしかないじゃない!!」

「じゃあじゃねぇよ!?風邪悪化するからやめろ馬鹿!」

「シャルロットの裸はみたじゃない!!」

「見てません!!辛うじて下着着けて……まだ引きずってたのそれ!?」

「脱ぐぅ!!」

「やめてぇ!?」


 結局暴れ出したアリシアを羽交い締めにして食い止めた。


ウルフが遠心力で浮き上がり上下左右に振り回す様を見せるその姿は、彼女が病人だと思えない程元気に腕を振り回すのだった。


「あわわ…!アインさん!どうすれば!?くしゅん!」

「こういう時はおれ達も脱ぐしかない!さぁハヅキちゃんも一緒に!!」



「いい加減にしろてめぇらぁぁ!!」


 慌てるハヅキと便乗してすっぽんぽんになるアインにウルフの渾身の飛び蹴りが飛んだ。


 振り回されて生まれた遠心力を威力に変えたウルフの必殺の一撃は熱に浮かされて正常じゃないアインの下顎を容赦なく蹴り砕いて、彼を吹っ飛ばす。

 地面に沈んだアインはウルフの手によって強制的に眠らせられたのだった。パンイチのまま。


 言われるがままにキャストオフを図るハヅキを小脇に抱え、ダッシュでアリシアの元へ戻り既に上着を捨て去って下半身の鎧を外し始めた彼女を空いた左腕で拘束して抱き寄せる。


 ウルフは治療の為とはいえアリシアの上半身のインナーを破った事に後悔した。

彼女を左腕で捕まえた結果、左上半身に彼女の包帯だけで遮られたたわわな水蜜桃が当たるのだ。

 

 戦闘こなした後で昂っている本能を鋼の精神のみで押さえ付けていた。


「やめてぇ!ぬがせなさい!この浮気者ぉ!」

「ハヅキ小脇に抱えているだけで別に浮気じゃねぇよ!?後風邪悪化するから脱ぐな!!」

「あわわっ私班長に手込めにされる?!わっ私は班長の事上司としか見てなくて異性としては全然ですけど…は、初めてなので優しくしてください!!」

「地味に傷付くからやめろそれ!後もっと自分を大事にしなさい!!」

「ウルフぅ!わたしだって処女よ!!」

「だれかぁぁ!!この人達を黙らせてぇぇえ!!」


 地獄絵図だった。


病人共が好き勝手に騒ぎまくる所為でウルフの精神はストレスで限界を迎えていた。

 誰でも良いからこの場をおさめてくれ。特に常識人。


 そんなウルフの願いが天に通じたのか入り口から2人の人影が…


「――ぅ…ウルフ…?」

「あらあらぁ…」


 結論から言えばウルフは死ぬ(色んな意味で)


 余りにも帰りが遅くて様子を見にきたら、知人の周りが酒池肉林の地獄絵図と化していて青褪めた表情をしているシェフィールドと、困った様にほおに右手を当てていつも通りにのほほんとしているアネットだ。


 ウルフは泣きたくなった。誰か来てくれとは願ったが、なんで色々誤解を生みそうなメンツなんだと。


「…いや…あの…これは違くてだな…」

「…大丈夫…私は何も言わないから…」






「――その…ウルフが男も女もイケる色情魔(へんたい)だなんて誰にも言わないからぁーーっ!」

「待ってぇ!?何か誤解の合体事故を起こしてるぅ!!?」


 誤解を解こうと手を伸ばすウルフ。


解放されて彼にしなだれかかる上半身ほぼ裸のアリシア。


解放されると同時に力無く地面に崩れるハヅキ。


そしてパンイチのまま倒れふすアイン。



 この断片だけで色々情報過多な光景と、自覚していないくらい密かに想いを寄せる異性の痴態(誤解)を目にしたシェフィールドは、終始ウルフと目を合わせる事の無いまま、反転してギルドに逃げ帰っていった。


 この光景を受け入れられないくらいにはシェフィールドは純情だった。


 なす術もなく不名誉な誤解が増え、アリシアを抱き抱えたまま呆然としていたウルフにアネットが励ます様に肩を叩いた。


「…安心して…班長君――」















「――私もバイよ」


「フォローするとこ違うわぁぁあ!!?」




 夜が明け、日が上り。


これからもずっと繰り返して行く。


この愉快な日常を。

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