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黒歴史は明日へのガソリン

新年あけましておめでとうございます


 今年一発目の投稿になりますのでどうか楽しんでいってください。

 

 時間を少し巻き戻してダンジョンの外…

雨が降り止みぬかるんだ地面を踏みしめて、ティタノウルフは侵入者を追い返さんとしていた…


「ムリムリムリムリムリムリムリムリィ!!」

「がんばれゼフ!根性見せろゼフぅ!お前ならできる!」

「ふざけんなぁ!ティタノウルフと力比べとかやってられっかぁ!!」


 悲鳴をあげながらティタノウルフの巨体と組み合って動きを抑えているゼフは、三白眼に涙を滲ませて自分より巨大な全長15メートル程のティタノウルフと押し合っていた。


 ティタノウルフは、両前足を封じているゼフを噛み殺さんと鋭い牙を剥き出しにして噛みつき攻撃を繰り返すが、ゼフはその度に頭を振ったりして躱し、細かく位置を調整して避ける為、なかなかゼフを仕留めきれないティタノウルフは苛立ちをどんどん募らせていった。


 対するゼフはティタノウルフの生温い鼻息を眼前で受け弱腰になりながら、真っ向から力比べに興じていた。

確かに一撃でも貰えば一溜りも無いが、定期的にウルフから訓練を受けている身としては決定打を決めれないが負けるとは思えない相手だった。


 なにぶんウルフの組手と比べたら直情的すぎた。班長と比べるとフェイントが全く入って無い分かなり楽だった。


 なにせウルフが相手だったら迂闊に懐に飛び込めばフェイントどころかカウンターの肘鉄と目潰しは当たり前。動きを止めたら関節を決められるか、喉に向かって貫手が飛ぶわ、寸止めとは言え金的を繰り出すわ、挙句の果てに素手で武器を弾いて武装解除させるのだ。


 鬼かこの班長は。


とにかく容赦する気があるとは思えない厳しい訓練(もしくは自信をへし折る為のイジメ)をウルフから受けてきたゼフ達にとっては、ティタノウルフの相手をするのも戯れる大型犬の相手をするのも一緒見たいな物だった。


 因みに、アリシアの訓練はほとんど感覚と力によるごり押しなのであまり参考にならなかった。

と言うより剣の一振りだけで突風を起こして人を吹っ飛ばす様は訓練官と言うより人間災害だ。


 それはさて置き動きを止められたティタノウルフに向かって湿った夜の闇を切り裂きながら、拳銃の弾丸が飛来する。


 だが着弾しても分厚い毛皮に阻まれ大した傷を負わせる事は出来ず、逆にティタノウルフの意識は一瞬だけだが両手に構えた拳銃の銃口から硝煙を吐き出すニーアに向くのだった。


「…オイ猫ガキ…仕留めれてないぞ…」

「うっさいわね!あんただって攻撃してないじゃない!?」

「しゃーねーだろ。ゼフが頭に組み付いているから頭部を狙いづらいしよ…おぅゼフー。しっかりしろテメー」




「調査班に志望した動機が『インテリオークってモテんじゃね?』って思い込んで入った男の実力はそんなもんかー!?」


「なんで知ってんだてめぇぇぇぇぇえ!?!?」


 面接で調査班を志望した動機をウルフに答えて苦虫を10匹同時に噛み潰したような顔をされて以降は誰にも話していない黒歴史をキールに暴露されたゼフは怒りと羞恥心を力に変える。


一瞬意識が逸れたティタノウルフの口をギロチンチョークで封じ、そのまま体重をかけて締め上げた顎門を変則バックドロップで地面に叩きつけて粉砕する。



 突然ひっくり返されぬかるんだ地面と雨粒で湿った草の絨毯の上に叩きつけられた上に、最大の武器である鋭い牙がのこぎりのように並ぶ顎門を破壊されてくぐもった悲鳴をあげるティタノウルフの隙を見逃さなかったニーアは、残念なものを見る目でゼフに哀れむような視線を向けていたが切り替えて獲物を見据えて、2丁拳銃による早撃ちを魔獣の全身に撃ち込む。


「っくそ!これでも駄目なの!?」

「――いや、上出来だ」


 横っ腹から全身に弾丸の雨を受けて尚、何事も無く立ちあがろうとするタフさを見せつける野生の脅威(ティタノウルフ)の姿にニーアは一瞬心が折れそうになる。


 だが、この時を待っていたと言わんばかりにクロスボウを構えていたキールは、銃撃でできた傷から僅かに流れる失血と天地をひっくり返されて脳を揺らされた影響で上手く立ち上がらずに一瞬たたらを踏んだティタノウルフに狙いを定めてクロスボウの引き金を引く。


 弦を弾いた音を立てて真っ直ぐ発射された矢はは、ティタノウルフの反撃を警戒してこちらに逃げてくるゼフの右頬を掠めて巨大な狼の額に向かい……




 ティタノウルフの猫パンチではたき落とされ、すぐ近くの地面に突き刺さった。


「逃げるぞお前ら」

「失敗してるじゃない!!」

「てかオレ当たりかけたんだけどぉ!?右頬カスっていっ……て?」


 背中を向けて逃亡したにも関わらず全く追いかけて来ない魔獣を不審に思ったゼフが、背後で追いかけて来てる筈のティタノウルフに振り返る


 だがティタノウルフは、地面から突如生えてきた頑丈な蔦に全身を絡め取られ、蜘蛛の巣にかかった小蝿のように身動きが取れなくなっていた。


「矢尻にエルフの森謹製の特殊な植物『ガンジガラメカヅラ』仕込んだんだ!動く物に反応して巻きつくから逃げないと俺達も巻き添え喰らうぜ!」


 キールは別にただのエルフでは無い。


 10年前、エルフの森に捨てられていた薄汚いエロ本を読んで性に目覚めて都会にやってきて以降、持ち前の植物の知識と逃げ足の速さで一目置かれて


えげつなくて

ろくでも無い手段で戦うエル


略して「エロフ」と称されるようになったエロの探求者だ。


 用は凄い変態というのが周囲の認識である。


 だがしかしいくら植物で動きを止めようとそれは一時的な物。


 自分達だけじゃその火力が足りない事を自覚しているキールは2人を引き連れて逃亡した先で待つある人物に合図を送った。



「姉貴ぃ!今だぁやれぇ!!」

「任された!」


 キールからバトンを引き継いだ女性は背筋の伸ばし、先端に向かうにつれて薄緑色のグラデーションがかかった金糸のような長髪をたなびかせていた。


風龍の骨格で出来た自分の背丈程もある剛弓を限界まで引き絞って、今だ絡みつく蔦を払わんともがくティタノウルフに狙いを定める。



風龍の腱を弦として張り、その翼の骨格を素材として作られた巨大な弓――



 その弓を構えるのは「シェフィールド・ゼネライ」


何を隠そう「調和の証明(ユニオン・サイン)」の3人目の不壊煌石(オリハルコン)級の冒険者であり、キールの実の姉である。



「終わりだっ!!」


 狩猟の女神を思わせる立ち姿から放たれた矢は、風の魔法のアシストを受けて加速。


 音を置き去りにしてあっという間にティタノウルフの額に食いつき一気に貫通するとその威力に耐えられなかった肉体が絡み付いていた蔦ごと破裂する。


「…みんな怪我は大丈夫?」


 着弾地点で文字通りの血の雨が降る様を見て武装を解いたシェフィールドは、魔獣が木っ端微塵になったのを見届けると、前線で戦っていた仲間…特に、ティタノウルフと取っ組み合いをしていたゼフの負傷具合を確認する。



 幸いゼフがティタノウルフに投げ技をくらわせた時に折れた牙がちょっと食い込んだぐらいで、全員疲労した程度で済んでいた。



「…お前の姉ちゃんすげぇな…」

「――だろ?あんななりしてドラゴン討伐してるんだぜ?」


 女性冒険者からは「ギルドの二大姉御」として慕われ、「調和の証明(ユニオン・サイン)」ではダントツの常識人として名高いシェフィールド。

そんな彼女に憧れの視線を向けていたニーアは、シェフィールドから


「お疲れ様。この後はダンジョンにウルフ達を迎えに行くけどついて来れる?」


と話しかけられた衝撃と尊さで脳が限界突破し、頭から煙を噴いて倒れてしまった。


 自分が原因とはいざ知らず慌ててニーアを介抱するシェフィールドを見て、ゼフはキールに対して耳打ちをしていた。


全てに置いてキールの上位互換のシェフィールドがいるせいで、(あれ?キール(こいつ)要らないんじゃね?)と思ったのは内緒だ。


「…でもあれだぜ?うちの姉貴。調査班に籍置いてねぇのに班長とお揃いのマグカップこっそり執務室に置いてるんだぜ?」

「何それ乙女チック!?」



「――キィーールぅ?」



「あっゴメン姉貴嘘だから!ついでにまな板呼ばわりしたのも謝るからうバァぁぁ!!??」

「えっ待ってオレも巻き添えぐほぉあああ!?!!」


 余計なことを言って折檻されたキールと、その巻き添えを食らって吹っ飛ばされたゼフを叩きのめした衝撃は、ウルフ達のいるダンジョンまで響いたのであった。

 一応お仕置きの時は峰打ちでした


(弓の峰どこにあるんだよっ!!)

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