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夜は終わらない

前回のあらすじ

 支部長、仕事する。


『…班長くーん?こちらアネット、聞こえる〜?』


 ウルフ達は、通信機で連絡を取りあいながら、魔獣が逃げたであろう箇所の捜索をしていた。


 四つの捜索隊を逃亡した方向に向かって扇形に展開して行動しているものの、未だ攫われたエイダの手がかりは見つからず、先程捜索を打ち切ってギルドに戻った部隊が出たという連絡が来ただけだった。


 現在ウルフが率いる探索チームは、ダイアウルフの群れが観測された近くの森林を探索している最中だった。


「……お前らいるか?」

「いまーす」

「いるわよ」


 今にも雨が降りそうな曇天の夜空の下で、ろくに視界を確保出来ないウルフは、定期的に点呼を取って仲間達がついてきているか確認を取っていた。


 暗闇でダイアウルフの群れに囲まれたら流石のウルフも後輩達を守りながら探索するのは骨が折れる為、ずっと先頭に立って警戒しながら進んでいた。


「……班長。そろそろ先頭変わりますよ…出てからずっと気ぃ張りっぱなしじゃないですか」

「…しかしだなぁ…」

「大丈夫っすよ。オレ人より頑丈なのが取り柄なんで。ダイアウルフに噛まれた程度じゃ痒くもないですって」

「いやだからお前らを盾がわりに前を歩かせるのは……」

「…あぁもう。ゼフ君が代わるって言ってんだからガタガタ言ってないでさっさと代わりなさいよ」


 ウルフは自分より5つも年下の2人組にせっつかられて、警戒の役目をすごすごとゼフに譲ったのだった。


 「ホントめんどくさいわねコイツ」とジト目だけで語ってるニーアの視線からウルフが逃げるように顔を背けるのと同時に、女の子の声が聞こえて来た。


「!!お前らっ」

「聞こえたわよ!ゼフ君!」

「おう!」


 拳銃と歩兵銃で武装したニーアとウルフが先頭を駆けるゼフに追従し、ゼフは素手で木の枝を掻き分けて進み、声が聞こえた方へ一直線に向かう。


 どうか無事でいてほしい。そう願った彼らが見たものは…


「いけーユニコーンさん!すすめ〜!」


 涙目でキャインキャインと悲鳴をあげるダイアウルフの背中に乗ってお馬さんごっこをしていたエイダの姿だった。


 予想の斜め上を行く子供の無邪気さとパワフルさに探索班一同はすっ転びかけるが、持ち直したウルフがダイアウルフの背中からエイダを抱き上げて救出したのだった。


「あっおじさんこんばんは!」

「こんばんはエイダちゃん。後おれはおじさんじゃないから。二十代はまだおにいさんだから」

「班長ダイアウルフが逃げて行きます!追撃しますか!?」

「放っておけ。なんか居た堪れなくなって来たから…」


 エイダから解放されたダイアウルフは、自由の身になった事を喜ぶかのように遠吠えした後そそくさと逃げていった。


 こうしてエイダを無事保護できたものの、今回の誘拐騒動はなんとなく締まらない終息を迎えたのだった。





「おとうさーん!おかあさーん!」

「エイダぁ!」

「エイダっ!よかった…っ!…本当によかったっ…!」


 ギルドにエイダが見つかった旨を連絡して戻ったウルフ達は、(アビー)(ルドルフ)を見つけたエイダがゼフの肩から飛び降りて、そのまま2人の胸の中に飛び込む姿を見守るのだった。


 道中エイダ本人に聞いたところ、エイダ自身は攫われた自覚はなく、ダイアウルフを同じ一本角の魔獣、ユニコーンと勘違いしていたらしい。

 馬と狼は大分違うのでこれは元冒険者のルドルフにきっちり教育させねばとウルフ達は苦笑いを浮かべたのだった。


 ただエイダを連れ去った魔獣は、お馬さんごっこをしてもらっていた(拡大解釈)ダイアウルフより体が大きかったらしく、エイダをあのダイアウルフの背中に乗せる(押し付けたとも言う)とすぐさまどこかに行ってしまったという。


 気がかりなのは連れ去った魔獣がまだ何処かに潜んでいる事だが、夜が明けたら本格的に討伐することを念頭に入れておくとして今は無事再開できた家族達を見守るのだった。

 戻って来た他の捜索隊も、家族の抱擁を見てもらい泣きしている者もいた。


「おかーさんだいじょうぶ?おとーさんいってたよ?さいきんたかい()()()()でめもとのコジワ?を隠しているって。そんなにないたらとれちゃうよ?」

「………アンタ?」

「げぇっ!?」


 なんか別の危機が勃発しているがまぁそれはルドルフが対処するだろう。


 「どうもありがとうございました」とルドルフをヘッドロックで捕まえてそのまま引きずって去っていくアビーと無邪気に着いていくエイダを全員が苦笑いで見送った。明日の朝日を拝めるかはルドルフの誠意次第だろう。南無。


「…支部長?どちらへ?」

「ちょっとトイレ」


 一連のやり取りを二階の渡り廊下で見ていたロマンはほっと一息吐くと、ローズにその場を任せて自分は奥に引っ込んでいった。


 その立ち振る舞いに怪しい所は見られない。普段から怪しいせいなのだが、ローズは場の指揮を引き受けるとそのままロマンを見送ったのだった。





「やっほーウルフ。おつかれ」

「シェフィールドさんもお疲れ様です。後は……」


 ウルフはゼフ達を労っていたところに、同期の冒険者でエルフの女性のシェフィールドに声を掛けられた。


 背が高めの彼女はウルフとはアリシアの次に付き合いの長い女性だが、今回も同じく捜索隊に参加して、今戻って来たようだった。

 これで残すは最後のチームを待つだけだったが……。

 



(……遅いな、アリス達…)


 アリシア率いるチームがまだ戻っていなかった。

 不安になったウルフは通信機で連絡を取ろうと手を伸ばし……。


「班長すいません!シャルロットさんを…ゲェーー!姉貴!?」

「ゲェーってなにさ!?実の姉に向かって!!」


 血相を抱えてウルフの元にやってきたキールは、シェフィールドを見つけて嫌そうな顔をするが、そんな事よりとウルフの方に向き直り…


「すいませんシャルロットさんを見失いました!あの人調教師(テイマー)の動きじゃなかったっす!」


 キールの報告と同時に、全ての通信機に救難信号が届いたのだった。


 夜はまだ終わらない………

年内に終わらないぞこれ!

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