持つものと持たざるものと酔っ払いども
読んでくれる方が増えて来て嬉しい今日この頃
今回はお下品な表現が多めなので、人によっては不快感を抱くかもしれません。
後この物語の登場人物は大体成人済みなので、未成年飲酒を勧める様な意図はございません。
何処のギルドにも飲食スペースが必ずある。
場所によっては温泉が沸いていたり、領地の土産屋を兼ねていたりしているのだが、全てに共通しているのは、ギルドの内部の暖簾をくぐると、その先には冒険者達の憩いの場である酒場に通じているのであった。
冒険から帰って打ち上げを行う男女二人ずつの四人組や、嘘かほんとか分からない武勇伝をジョッキ片手に誇らしげに語る者、中には並々と酒を注がれた樽を一人で飲み干す筋肉質な女性もいたりとここは、一日の疲れを発散させる憩いの場として機能していたのだった…。
「…あっ!来たわね!アリシア〜!ハヅキさんもこっちこっち〜!!」
「あの…ほんとにいいんですか?…私なんかの為に…」
ホットパンツから覗く太ももが眩しい私服姿のニーアが、待ち合わせしていた人物を見つけてブンブンと大きく手を振り、陣取っていた酒場の隅の座席に誘導する。
やってきたのは、ジーパンでおみ足を隠し、セーターの上から防寒としてコートを羽織っている私服姿のアリシアと、これまた簡素なシャツとズボンに身を包んだハヅキ。更に白衣のままやってきたのアネットだった。
「大丈夫よ。今日はあなたの歓迎会を兼ねた打ち上げなんだし」
「飛び入りだけど大丈夫かしら?」
「大丈夫ですよアネットさん。むしろ女子会は人数多い方が盛り上がるので!」
「あらやだ、もう女子なんて年齢じゃないのに……」
どの口が言ってんだ…。人目を引く美女三人組の登場に、目を奪われていたムサイ男たちだったが、アネットの発言には男女問わず内心でツッコミを入れたのだった。
その見た目をどうやって維持しているんだと、特に女性の冒険者から羨ましがられるのであった。
それぞれが空いている椅子に座り、アリシアは羽織っていたコートを椅子の背もたれにかけたタイミングで、予め頼んでいたカクテルやジュースがウェイトレスによって運ばれてきたのをそれぞれ受け取る。
飛び入り参加のアネットは頼んですぐ持ってきてもらったビール、を若い男のウェイターから受け取っていた。
恐らく顔を覚えて貰う為だろうが、一歩間違えば可哀想な被験体になるかもしれない為、アネットにちょっかいを出そうとしたウェイターに、冒険者達は心の中で合掌したのだった。
助け船は出さない。だって巻き込まれたくないし。
「えー、それでは飲み物が皆に行き渡った所で、調査班へようこそハヅキさん!あたし達はあなたを歓迎します!今日はお疲れ様でした!かんぱ〜い!」
『かんぱ〜い!!』
音頭をとるニーアが、グラスを掲げて、アリシア達もそれに合わせてグラスを鳴らす。
(あれ?…ニーアさん調査班の所属じゃなかった様な…)と言う無粋な台詞は、ハヅキの心の中だけに留めておいたのだった。
しばらく騒いだ後、次々と運ばれるコース料理や酒より、彼女達は世間話に熱が入って来た頃合いで、酔いが回ったニーアが爆弾を投下したのが始まりだった。
「……アリシアまたおっぱい大きくなった?」
むせたアリシアは、思わず口に含んでいたワインをグラスの中に吹き出した。咳き込みながらいきなり何言ってんだこいつは、と恨めしげに睨むのだが、ニーアの方は更に負の感情を濃縮させた様なジト目で、アリシアを睨み返すのだった。
「…おのれ、またデカくなりおってこの発育の化けもんがぁ…当て付けか?いつまでも平なあたしへの当て付けかこら?」
「言いがかりよそれ!大体あなたまだ十六だから可能性自体はあるじゃない!成長期があるじゃない!」
「子供の頃の服が未だに着れるのですが!?胸だけ成長期が来ないんですが!?伸びしろだけってか?!じゃかあしいわっ!!」
控えに言ってニーアは悪酔いしていた。
いやな予感がしたアリシアは胸の前で腕を組んで自分の胸を隠して、アネットに視線を向けるが、当のアネットは赤ら顔のまま我関せずと次々に酒を胃の腑に収めていた。
性的な話題に耐性が無いハヅキは、ちびちびとウーロン茶を飲んでいたが、ニーアが暴走し出した途端顔を赤らめ、事態の収束までひっそりと気配を隠していた。
ハヅキも変人達への対応の仕方を覚えて来た様だった。
「うらぁ!この乳か!この乳であの社畜誘惑してんのかあぁん!??!」
「ちょ…こら!やめ…ひゃぁん!?」
「ぬぐぐ…前より確実にデカくなってやがるっ!ハヅキさぁん!セクハラされた仕返しが出来るぞぉ!このデカ乳揉みしだいたれぇ!」
「ひぃっ!?…じゃ、じゃあ失礼して……うわぁ、暖かぁ…」
「ハヅキまでっ!?ひゃう!?この…やめなさいっ…きゃあ!?」
地獄だった。ツッコミ不在の地獄だった。
一瞬でアリシアの背後を取ったニーアは、背後から腕を回してアリシアの胸を鷲掴みにし、ニーアの怒気に当てられたハヅキも、正面から彼女の胸を両手でまさぐるのだった。
因みにアリシアの艶かしい嬌声は、周囲で聞き耳を立てていた野次馬から、思わず前屈みになってしまう男を量産していた。うっかり前屈みになってしまった彼女持ちの男性冒険者が、彼女から頬を引っ張られてお仕置きされているのはまた別の話である。
「くそ…!九十前後は確実に行ってやがる!!よこせ!この柔らかいムニムニをアタシによこせぇ!」
ニーアには余計な脂肪が無かった。野生の猫を思わせるそのスリムさと、腰の細さは数多くの女性(アリシアを含む)から羨ましがられているのだが、本人からすれば、胸が周囲の友人達より小さいのがコンプレックスだった。昔はそうでも無かったのだが、最近、近所の男の子に「え、女の子だったの!?」と驚かれた事が引き金になった。
それに加えて、最近になって彼氏ができたニーアは、余計に女性的な魅力を主張するアリシアのわがままボディが、羨ましくて仕方がなくなっていたのだった。…用はただの嫉妬である。
「…えっ…すご、大きくて重たいのに全然垂れてないし、しっかり反発してくる…」
対するハヅキは、厳しい忍びの修練を繰り返した結果、腹部には薄く腹筋が浮き出て、よく鍛えられてメリハリの効いた女性らしい凹凸を描く肉体をしているのだが、初めて母親以外で触った同性の胸は、彼女の常識を覆したのだった。
いけないと分かっていても、ハヅキはアリシアの巨乳から手を離せなかった。アリシアの(胸の)虜になりかけていたのだった。
後雰囲気に呑まれていた。
「!誰が重たいですってぇっ!!!」
「うわぁ!?」
「チッ…やりすぎたか…」
アリシアは、ニーアを一本背負いで空中に放り投げると、正面でおっかなびっくりサワサワと胸を触っていたハヅキに、返す左腕で強烈な左フックを繰り出す。
ニーアの言う様に確かにちょっとだけ大きくなったが、一緒に体重と言う呪いもついて回るのだ。
剣を振るって鍛えた筋肉分プラス胸の脂肪でその分体重が増加すると言うのを、ニーアに分からせてやりたかった。
剣を振る時邪魔になるわ、走る時に邪魔になるわ、男からエロい目で見られるわ、汗で蒸れるわ、臭いがキツくなるわ等の巨乳の弊害をニーアに一から叩き込んでやりたくなったが、そのデメリットを差し引いてもウルフからの視線を独り占め(思い込み)できるのは嬉しかった。巨乳フェチ(アリシア調べ)のウルフの目を釘付けにする最終兵器にもなりうるこのパンドラの箱を持つ苦悩をコイツはなんだと思っているんだ、日々体重計と格闘しながら体形を維持しているこの苦行をこのすっきりお腹には理解できまい。
禁句に反応したアリシアに投げられたニーアは、空中で体をひねって曲芸を決めて席に音もなく座れたが、ハヅキは左フックをかわしたときに床に溢れた酒に足を滑らせて、アネットに向かって頭から突っ込んで行って最早衝突事故寸前の大惨事が起こりかけていたが……
「はーい♪一名様ごあんなーい♪」
ハヅキは深淵に飲み込まれた。
自分の頭を覆う柔らかいモノがアネットの胸である事を理解するのに時間がかかってしまった。
まずサイズが桁違いだった。ハヅキの頭より大きいそれは間違いなくアリシア以上の標高を誇り、柔らかさに至っては底なし沼と錯覚するくらいには、アネットは何もかも常識外れな爆乳の持ち主だった。
今まで静かに酒を嗜んでいたと思っていたアネットだが、床やテーブルに散乱する夥しい数の空の酒瓶やジョッキを見る限り、アリシアの胸を揉みしだいていたこの短時間で大量の酒を飲み干していたのだ。
「ア…アネットさん…?」
「ハヅキちゃんってば気がきくわねぇ♪一人寂しく呑んでいるおばさんを放っておけずにお酌しに来るなんて♪」
「…いや…あの…まだおばさんじゃないかと…」
「もう♪嬉しい事言ってくれるじゃない!店員さーん!この子の分のお酒もじゃんじゃん持ってきて〜♪私の奢りね〜♪」
あかん。この人ヤバい人だ。ハヅキの本能が警鐘を鳴らすと同時に、「可哀想に…」「ハヅキはもう助からないわね…」なんて知人の声が近くにいるはずなのに、遠くから聞こえた気がした。
何を飲ませられるか分からないが、このままだと肝臓が爆発四散するまでアルコール漬けにされる。
逃げようと身を捩るハヅキだが、酔っ払いは上機嫌な赤ら顔のまま、ハヅキを爆乳で遠慮無しにホールドしているせいで、逃げようとも逃げられなかった。
「ア、アネットさん!?お気持ちは嬉しいのですが、東国では成人は二十歳からでして、一応まだ私十八なのでお酒はまだ早いかと…んぐぅ!?」
「もう。ハヅキちゃんてば遠慮しないの♪そーれ♪イッキ♪イッキ♪」
「んぐぅぅぅぅー!?!?!?」
ハヅキはアルハラに屈してしまった。
恐らく命は助かっても、二日酔いの頭痛からは逃れられないだろう。
そしてそんな二人から離れた場所でアリシアとニーアがバチバチと火花を散らすのだった。
「よくも散々揉みしだいてくれたわねニーア!ウルフにだってまだ触らせた事ないのに!!」
「用具室で散々押し付けていたでしょうがこの恋愛弱者!」
「なんで知ってるのよこのぺったん娘!?」
「誰が大平原じゃ無駄肉女!?悔しかったら壁ドンとか顎クイとか彼氏にされてみろっ!!」
「…微妙に古いわね…あなたの胸キュンシチュ…」
「やかましい!あんたとウルフで置き換えてみろぉ!!」
『…ウルフ…っ!…ダメよ…こんな…』
人気の無いギルドの廊下、誰にも見えない死角の壁際に追い込まれたアリシアは、ウルフに左腕を壁に押さえつけられて身動きを封じられ、更に空いた右腕で退路を封じられるていた。
身を捩って逃げようとするアリシアは、困った様な満更でも無い様などっちとも取れる赤みがかった顔色でウルフを上目遣いで見上げた……。
『……アリシア…お前がいけないんだ…今まで頑張って耐えていたのに…もう抑えきれないんだっ!…』
対するウルフは何かを耐える様な、抑えきれ無くなった感情を必死に制御しようとしてる様な表情で目尻に涙を溜めて、逃げ道を塞いでいた右手をそっとアリシアの顎に右寄せ、視線を自身の顔全体が見える角度に上げさせ、そして……。
『アリシア…もうダメなんだ…!…お前がっ!…欲しいっ!!』
「………くっ!な…中々の破壊力ね…一瞬意識が飛びかけたわ…!」
「……足ガクガクさせて何考えたのよこのエロ姫………」
「うっさいわね!あなたが想像しろって言ったじゃない!!」
現実に帰ってきた息絶え絶えのアリシアは、意識を失って仰向けに倒れかけたが、鍛えた腹筋をフル稼働させる事で前傾姿勢を取り、なんとか倒れるのを防いだ。
それにしても想像以上の素晴らしいシチュエーションだった。今度ウルフにやってもらおう。
「おのれ…親友だからって許さないわよこの使い古された萌え属性の美肌スレンダーぺったん猫娘!!今日という今日は巨乳の不便さをその身に刻みつけてやるわ!!」
「上等だこの女が欲しいもの大体持ってる恋愛クソ雑魚スライムドスケベボディ無駄乳エロ女ぁ!!その無駄に育った脂肪を少しはこっちによこせぇぇぇぇぇえ!!!」
「アネットしゃん!もう無理でしゅ!?むりでしゅからぁ!もうお酒いやぁ!!むぐうぅぅぅゔ!?」
「イッキ♪イッキ♪」
誰も彼女達を止めれる者はいなかった……巻き込み事故を恐れた酒場の客やスタッフは、皆んな揃って逃げてしまったからだ。
そもそも暴れるアリシアを止めれる人間なんてウルフくらいしかいないのだ。ただの冒険者は近づくだけで吹っ飛ばされるのだ。嵐に近づがないのはこの世界でも常識なのだ。
「観念しなさいニーア!!あなたの弱点なんてもうわかりきってるんだからぁ!!!」
「くっ!殺せぇ!!あたしはエロいだけが取り柄の姫騎士なんかに屈したりはああああらめェ、顎の下くすぐりゃないでぇ〜癖になりゅぅぅぅう〜!」
「………………」
「ハヅキちゃん?ハヅキちゃ〜ん?もうつぶれちゃったのぉ?店員さ〜ん♪お酒〜♪……えぇ〜?もう無いのぉ?」
「お腹吸うのもらめぇぇええ!」
翌日、アネット以外は二日酔いでダウンしたが、全員仲良く揃って酒場から出禁を言い渡されたのだった。
支部長のメモ
目視による計測
アネット(103前後)
アリシア様(89くらい?)
ハヅキちゃん(80?)
ニーア(75のつるぺた)
秘書さん(美乳のB……
後は焦げて読めなくなっている。