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もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな?って話

前回気が付いたらなんか勝手に下ネタ多めになってしまってしまった…。

大丈夫かなあれ?警告されないよねあれ?

なろうの基準ギリギリだよねあれ?

 (やばい…)


 その日はいつもより仕事が少なかった。

アリシアと、少しだけ彼女への信頼度を回復させたハヅキの二人に、今はもう宝箱の発生が確認されて無いダンジョンの破壊を依頼し、ギルドの前まで見送ったウルフは、その後すぐに執務室に篭り、書類を捌き始めたのだった。


 いつもよりハイペースで仕事した結果、処理しなければいけない書類が少なかったのも手伝って午前十時くらいに急ぎの仕事が全て片付いてしまったのだった。

端的に言えば暇を持て余していたのだった。


(午前中の仕事がもう終わってしまった…)

「はんちょーう、休憩したらどうすかぁ?」

「待って今仕事探しているから。まだきっと何かあるはずだから、なんだったらきっと今から湧いて出てくるはずだから」

「いい加減休んでくださいよ……仕事してないと落ち着かないとか回遊魚か何かですか?」


「コーヒーですどうぞ」とコーヒーを淹れてきたアインに無理矢理休憩を挟まれたウルフは、不完全燃焼さを誤魔化すように、新聞を片手にコーヒーを受け取って、くるっと椅子を回し、この間ハヅキに破壊されて、修繕費が降りるまでベニヤで補強している窓だったものに視線を向けた。


 結局ハヅキの書類偽造に関しては、人事班が当人に指導しただけで後は特に大した沙汰も無く終わったのだった。


 その時先回りされていたのかは不明だが、人事班に待ち構えていた支部長(ロマン)がハヅキの種族の記入欄に狸族獣人と書かれた()()()()()()()調()()()をひらりと突き出していつも通りの軽い感じで「ゴメンゴメン」と告げたのだった。


『実はさっきアリシア様に渡した方は、不備があってハヅキ君に()()()()()()()前の書類を渡してしまってさぁ。いやーうっかりうっかり』


 目を白黒させて困惑するハヅキとは対称的に、人事班の面々は、「まぁ支部長だし」と特に気にする事無く支部長が持っている方の書類を改めて受理したのだった。


 去り際、支部長がハヅキに「良い親御さんだね。わざわざギルド当てに君を心配してる手紙を送ってきたよ」と耳打ちして去っていった後、感極まって泣き崩れたハヅキを、立ち合う為に同行したウルフを始めとした面々は優しく彼女を元気づけたのだった。


 尚、アリシアはあのやらかしでハヅキに苦手意識を持たれてしまった為、執務室で留守番をしていたのだった。


(………大丈夫かなぁ…アリスは兎も角()()()は常識人だしなぁ…)


 後日、無事に調査班に配属されたハヅキは、正体を偽っていた事について一人一人に頭を下げて回り、正式に調査班の仲間として迎え入れられたのだった。

 アネットやキール達が狸族の特徴を大して気にしていないのも手伝って、執務室の中でなら普通に耳や尻尾を露出して仕事できるくらいには前向きになっていた。


 班員に限り敬語を外して喋る癖のあるウルフが、ハヅキを呼び捨てにしているので、ウルフ自身もハヅキの実力を買っているのは明らかだった。


 ……が彼女は真面目な常識人である為、変態と変人の集まる魔窟(調査班)に配属された時点で順応して変人になるか、変人共の餌食になって辞めてしまう可能性があるのも事実だった。彼女が平穏無事に過ごせるかどうか不安になっていた。

 ハヅキ本人の希望で、前者の適応してしまったアリシアと一緒に組ませて仕事に送ったが、ハヅキが毒されたりストレスで辞めたりしない様に誰かがサポートする必要があるのだが、現状ウルフ以外に比較的マシなサポート役がいないのが彼の悩みの種だった。


 そんな班長の思考を読み取ったキールが、自信たっぷりにウルフに自分を推したのだった。


「ハヅキの事なら俺に任せてくださいよ班長!何、しっかり面倒見ますって!」

「……言っとくけどハヅキが辞める原因作るやつお前とアリシアしかいないからな…」

「失敬な。俺だってセクハラする相手を選びますって。なっお前ら?」

『…………』

「…おいなんとか言えよ…」

「いや残当だろ」


 キールはゼフとアインを味方につけようとするが、視線を逸らされてしまった。救いようが無い変態なので当然だった。

 「というかセクハラを止めろ」とウルフから脳天に弱めのチョップを落とされたキールは、悔しげに膝から崩れて床を殴りつけた。


「………そういえば班長。アリシアさんと仲良いっすよね?」

「…なんだ?薮から棒に?」


 このまま終われるかと、恨めしげに机上に這い上がってきたキールが、ウルフにずっと気になっていた質問をぶつけた。

今度はゼフとアインも頷いた。

 ウルフは新聞の一面を飾る「用水路にて変死体、殺し屋静謐な牙(サイレント・ファング)の仕業か!?」と書いてある記事から視線を外してキール達に怪訝な表情を返す。


「…アリシアさんの事二人きりの時アリスって呼んでいるの知ってますからね?」

「オイまてなんで知ってんだ?」

「惚けても無駄だからなこの人たらし班長!あの時用具室でアリシアさんを抱きしめたり、『昔みたいにアリスと呼んで』って囁きあったりして乳繰り合ってたのこっちは知ってんだぞコラァ!」

「だから違うつってんだろ!あれはアリシア(あいつ)も色々あって…オイなんでお前が用具室でのやりとりを知ってんだコラ」

「そういえばなんででしょう!?俺も全くわかりません!なぁゼフ!?」

「こっちに振んな!てか誤魔化すの下手すぎんだろ!班長違いますからね!オレら班長がアリシアさんのおっぱい堪能して鼻の下伸ばしてた所なんか見て無いっすからね!?」

「よしそこに直れバカ共。口笛吹いて誤魔化しているアインも同罪だからな…」


 言いかけた途中で、思い出した事があった。

そういえば、キール達はアリシアを異様に怖がっていたのをウルフは思い出したのだった。


 あの時は確かに死線を超えていない人間だったら即座に失神してもおかしく無かったが、それを差し引いても異常過ぎる怯え方をこの三人はしていたのだった。


「…そういえば、お前ら何であんなにアリシアに怯えていた訳?あいつお前らになんかやった?」

「いやその、一応あの人この国のお姫様ですし…残念(あんな)でも…」

「近寄り難い感じするんすよね…凶暴(あんな)でも…」

「…後俺、噂で聞いたんですけど、うっかりアリシアさんにセクハラしたら舌引っこ抜かれるって聞いて…」

「…おれも半径五十センチメートルに近づいたら首を引き千切られた後、鈍器に改造されるって噂を……」

「オレは腕相撲に負けたオークを、ぶつ切りにしてスープの具材にするって話を聞きまして……いやだそんな死に方したくねぇ……」

「まってそれ誰よ?どこの蛮族だよ?アリシアそんな事しねぇよ?」


 アリシア本人に聞かれたらお仕置きされる様な失礼な事をちょいちょい口走っていたアイン達だったが、明らかに悪意のある噂を鵜呑みにしていた。


 誰だこんなネガキャンしたのはと考えるまでも無くウルフは、アリシアと顔を合わせる度に喧嘩している魔族の女性の仲間を思い出したので、更に悩み事の種が増えたのだった。


 …そう…変人はこいつらと、今日は来ていないアネットだけじゃ無いのだ、暫く顔を見て無くてマークを外していたが、その件の魔族も調査班(変人の魔窟)の仲間に相応しい変人だ。


 因みにアリシア本人も彼女の悪い噂を流してネガキャンしようとしていた所を、偶然居合せたウルフに現行犯で押さえられているので、どっちもどっちである。


「……ただいま戻りましたぁ〜…」


 アリシアには劣るが、アピールの仕方がおかしいもう一人の不壊煌石(オリハルコン)級の仲間に思いを馳せて気を滅入らせていたウルフは、疲れ果てたハヅキが帰ってきたのを視界に入ったのをきっかけに現実に戻ってきた。


 今朝見送ったはずのハヅキは、かなり体力を消耗しており息も絶え絶えだった。装備もボロボロになっており、激しい戦闘をせざるを得ない状況に陥ったのが見て取れたのだった。


「ハヅキちゃん!?何があったのそんなボロボロで!?水飲める!?」

「ぜぇ…ぜぇ…いただきます…」

「……脳筋ゴリラ騎士みてぇなアリシアさんがこんなボロボロになるとか想像出来ねぇよなぁ…」

「……わたしが何ですって?」

「……うおぁわぁ!?」

「血塗れの鎧が喋ったぁ!!!?」

「アリシアおかえり。何があった?」


「……ちょっと疲れたわね…」とぼやいて返り血で赤黒く染まった鎧と頭部全体を覆うフルフェイスの兜を脱いだアリシアは、ふぅとため息を吐くとタオルで軽く汗を拭いてインナーの上からサーコートを羽織るのだった。


「……地下の最下層を目指すタイプのダンジョンだったんだけどダイアウルフの群れが住み着いていたのよ。それが何グループも」

「……私が、二、三匹ずつ…誘き出して…アリシアさんが倒していったんですけど…二百越えたぐらいからわたしの体力が尽きてしまって……」

「…ダイアウルフが地下のダンジョンに?」


 三馬鹿は自分達では到底出来ない荒技で突き進んでいった二人に呆然としていたが、ウルフは草原や山奥に生息している筈のダイアウルフが地下のダンジョンにいた事が引っかかっていた。


 ダイアウルフは大きい個体で二メートルを超える一本の角を額に生やした狼の姿をした魔獣だが、人里に降りてきたという報告は度々聞くが、わざわざ生息圏の違う山や草原から離れた場所にある地下のダンジョンに潜んでいたという話は明らかに不自然すぎた。


 冒険者として最高の称号を持つアリシアがちょっと疲れたと言ったのもウルフの不安を増長させていた。

アリシア並みの実力者が疲れたと弱音を吐いたのだ魔導銀(ミスリル)以下の冒険者だと対応する事が出来ずに全滅してしまうかも知れないのだ。

 それをどうにか出来る様な特化型のハヅキが息も絶え絶えな時点で、最悪王国の騎士団が討伐隊を組んで出張らないと対処出来ない可能性があるのだ。


 流石に汗でべったりと張り付いた服に不快感を感じていたアリシアは、「また改めて報告するからシャワーを浴びてくるわ」と言い残して執務室に備え付けられたシャワー室に消えていったのだった。


「………ダイアウルフは…アリシアさんが…ふぅ…」

「ハヅキ落ち着いて。何処まで潜って調べれたかの報告は、ゆっくり休んだ後で良いから、まずは体を休めてくれ…」




「……ダイアウルフはアリシアさんが私を入り口まで避難させた後に…一人で最下層まで進んで全滅させました……」

「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな?」

 包容力があって家庭的で気立が効いて、剣を持てば一人で三百近くの魔獣を全滅させる事が出来るハイスペック姫騎士アリシアさんですが、ウルフが絡むと知能指数が著しく下がります。

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