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私のパパ(魔王)は勇者に討伐されました  作者: 緋谷りん
祖国と帰ってきた姫君
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森と地中


 ガビーの全身を根が包み込んで竜の形を作り出した。

 その竜は、トカゲの図体だけ大きくしたような見た目をしているのだが、全身が根で出来ているせいで歪な形になっていた。


 明らかにおかしな見た目をしているガビーに向けてミサキが光り輝く軍刀で切り裂こうと叩きつけてくる。



「どうして切れないの!?」



 ガビーが生み出した根をあれだけ切り裂いてきたのに、身体に纏わせた根を切れなくて驚きを隠せず、声に出していた。


 ガビーは、心中で嘲笑するが今は戦闘に集中するべく爪を振るう。


 重量感ある爪が軍刀とぶつかり合うが、根本的な体重差に負けてミサキが歯を食いしばって耐えていた。



「何故貴女は魔竜国を狙うのですか!」


「くだらん。あの地の支配者が帰ってきた。ただそれだけの事だ」


「魔族はそうやって暴力的に!」


「加護でしか強くなれない人間風情が!」



 地中から根が飛び出してミサキを薙ぎ払う。

 すぐさま見えない速度で回避しようと動いたミサキだったが、ガビーの根がいつの間にか軍刀を掴んでいて動けなかった。


 根によって吹き飛ばれたミサキ。

 ガビーは、追撃をするべく地中から根を生み出そうとした時に違和感を感じた。



(竜人の死体まみれだ……せめて木々の養分にしてやろう)



 地中に張り巡らせた根から地中が死体まみれになっていると気がついた。

 それならばせめて森竜の【権能】で養分に変えて冥界に送ってやろうと考えた。


 敵対していた竜人も今思えばソフィアの臣下になるはずだったり、単なる民衆だったりしたかもしれない。


 ならば、安らかに眠ってほしい。


 それがソフィアの盾と自負しているガビーに出来る戦死者に向けた最大限の敬意だった。



「この速さでも傷がないの!」



 軍刀は何度も切りつけてくるが、光の速度を超えて瞬時に回復——いや、元に戻り続けるガビーの【権能】に勝てるはずが無い。


 そうとも知らず連続で切り続けるミサキにガビーは根や爪を使って反撃をしながら地中に根を入れていく。


 より多くの根が地中に来たからその死体の多さに驚いた。


 戦死した竜人や魔皇国軍人がこの地に眠っている。そう言う風に思えるほどにこの地には死体が多い。



(戦闘中で申し訳ない……許せ)



 心中で祈りを捧げて死体に根を突き刺した。

 根に刺された死体から体液が吸い取られていき、ガビーの根へと回されていく。

 最終的に全ての体液を吸い取られた死体は、土と一体化して崩壊した。


 これをミサキと戦いながら根が届く範囲——前線全域に根を伸ばしていく。

 キグレが居なくなったおかげで切断される心配も無くなって充分に効果を発揮出来そうだった。


 これで少しでも冥界に送れることを祈って。



 ★★★★★



 ソフィアは【竜装】を展開させて前線に向かう。

 その時、ナーシャも【竜装】を展開させていたのだが、ソフィアに比べて遅い。

 何もかもが遅く感じるのだが——と思った時、ソフィアはナーシャは竜人だった気がした。


 聞いていいのか悩んでしまう。

 もしかしたらソフィアの知らないだけで竜族だったかもしれないが、その可能性は無いと断言できてしまう。


 そもそも竜族は王家だけの種族。

 つまり王位を持っていた者や、かつて王族だった者じゃなければ竜族では無い。


 そしてナーシャは一般から魔竜軍に入隊して最終的には功績が認められた点と自身の要望によってソフィア付きのメイドになった。



「ねえナーシャ」


「はい?」



 ソフィアは気がついた時には声をかけていた。

 今思っていた事を聞こうとした訳では無い。



「ううん、呼んだだけ!」



 ソフィアがそう言うとナーシャはニコリと笑ってくれる。

 それがソフィアはとても嬉しかった。

 ここから先待っているのが絶望だろうともナーシャが生きていたという事実がとても嬉しい。



「ところでそれを身につけると声が変わるのね」



 ソフィアは走りながらナーシャの全身鎧について話すとナーシャが話し始めた。



「え、ええ。そうです、変わる仕様にしてます」


「何か理由でも?」


「……特には無いですね。ところでソフィア様、先ほどの続きですが」



 ナーシャは出発する前に話そうとしていた事を話し始める。

 やはりバーニックがどうしてこうなったのか気になるが、声に出せずにいた。

 現実を直視しないようにしていたのだ。



「バーニック様は、キグレに殺された後にブティの神聖魔法によって身体だけを操られています……」


「ブティを倒さなければパパはちゃんと眠れないのね……」



 考えていた最悪の事態が待っていた。

 つまり父親(バーニック)を止めるには(ソフィア)が殺さなければいけない。


 その一線を超えられるのか考えてしまうが——首を横に振った。



「それでナーシャ……どうして無事だったの」



 ソフィアはすぐにでもバーニックについて考えなければいけないが、どうしても考えたく無い一心で強引に話題を変える。



「……あの勇者は、器用に内臓を傷つけないように切りました。その一撃は、すぐに縫合すれば治ってしまうほどに……で、ですが、私にとってソフィア様こそ!」



 ——どうして生きていたのですか。

 そう聞かされた。



「私が転移した先は真っ黒な「暗黒宮ですよね……」」



 ソフィアが説明しようとしたらナーシャが先に答えた。

 もしかしたらナーシャはわざと暗黒宮にソフィアを飛ばしたのかもしれないと考えた時、ナーシャが続きを話し始めた。



「勇者が転移魔法を”斬って”強引に変更したのです……それこそ単なる小娘には生きていけない環境だ……と話してまして、私はもう」



 どうしてそうなってしまったのかナーシャは何度も後悔していたらしい。

 だから、ソフィアは立ち止まって後ろにいるナーシャに向いた。



「私は帰ってきたよナーシャ」


「……見ないうちに逞しくなられましたね」



 涙を流しているナーシャにソフィアはそっと声をかけた。

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