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私のパパ(魔王)は勇者に討伐されました  作者: 緋谷りん
祖国と帰ってきた姫君
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死霊の王


「僕に張り合うとはやるね〜」



 次々と手が地面から吹き出してブティの身体に付着していく。

 どんどんと肉塊がブティに張り付いているのだが、有り得ない大きさに増える。

 胴体を人の胴体を強引に繋ぎ合わせていて、脚の代わりに逆さまについた手が何本も生えている。


 



「バケモノ同士だったという事か」



 ガルボスの身体に炎や木々、雷雲に岩石、竜巻が合わさりあって一つの巨大な身体を作り出した。

 右手には炎。左手には雷雨、右足に岩石、左足に木々。

 そして頭に竜巻が張り付いた凄まじい生物が、肉塊の化け物を睨みつける。


 肉塊の化け物に五属性の化け物がぶつかり合う。


 肉片が飛び散り、火の粉が舞う。

 けれども、二人とも攻撃をやめなかった。


 ガルボスが木々の手を振るうとブティの肉塊から手が飛び出して押え込む。


 血を滴りながら木々の手に触れていく。

 木々についた血液から手が生え出してガルボスを襲おうとしてくるが、その部分をガルボスは自身で切り落とした。


 残された木から腕が再生させられる。

 それよりも早くブティが動いた。


 肉塊の背中部分から大口が開く。

 口は人間の背骨で作られた歯が見えていて不気味に思った瞬間に臓器で作られた舌が飛び出してきた。


 その全てが武器になり得る攻撃にガルボスは、雷雲を目の前に出した。


 雷による乱撃に舌が焼かれ、血が蒸発する。



「ギィい! 雷なんて!」



 突然の雷に驚き、ガルボスを拘束を解いた。

 その隙にガルボスは、空に雷雲を作り出す。



「【精霊魔法・神霊なる雷!】」



 青い雷が肉塊目掛けて落ちた。

 壮大な音を立てながら落ちてくる青い雷に肉塊が焼かれると破片が雷によってのたうち回る。


 焦げた臭いがしてくる。

 ガルボスが追撃をしようと考えた時、ふと思った。

 ブティは先ほどみたいな悲鳴をあげなかった。



「【神聖魔法・神々の微笑み】」



 悲鳴の変わりに肉塊の表面に大量の口が生まれた。

 その口々が呻き声を上げ出すと——ガルボスの動きが鈍くなる。


 精霊という肉体から解放されている様な物なのにどうしても疲労感を感じて行動が遅くなる。

 これは間違いなく——



「弱体魔法か」


「そうです〜よっ!」



 肉塊から手で作られた巨大な手を生み出して精霊王を殴りつける。

 顔に大きな衝撃が走り抜ける。

 だが、ブティの拳がぶつかった時に顔の部分にある竜巻が激しく回った。


 竜巻によって強引に切断、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられた腕が地面に落ちる。


 その時、ガルボスは違和感を感じた。



「余所見とは余裕ですね!」



 拳がガルボスの腹を襲う。

 外装に岩石を使っているから大きな衝撃はやってこないが、外装がいくつか剥がれた。


 外装のひび割れから血が流れ込んできた。

 すぐさま自切しようとしたが、胴体だから切れない。


 何よりも外装を外しても更なる血が襲ってくるののが解っている。

 しかし、これしかないと動いた。



「【権能・解除!】」



 全ての外装を取り除いた瞬間に肉塊の中心が大きく開いた。

 巨大な口から大量の血が吐き出され、ガルボスは飲み込まれた。



 大量の血がガルボスを濁流の様に押し潰す。

 辛うじて血の濁流に耐えたガルボスは、ブティの方を見ようにも血が視覚器官を攻撃していて見えない。



「【神聖魔法・聖なる血よ、愚者に天罰を】」



 ガルボスの視覚器官から何かを感じる。

 熱する痛みは、全身から発していて歴戦の魔王ですら発狂してしまいそうな痛みが走り出した。



「き、きき貴様! 何を……っ!」



 視覚器官が遂に真っ赤に染まる。

 その赤が次々と増えていくと——遂に突き出した。


 視覚器官を潰したのは、内側から生えた指だった。



「グ……!」



 痛みに苦悶の表情を浮かべる隙も与えず、身体の内部から腕が突き出して壊す。

 次々と内部から飛び出してくる腕が蠢き、ガルボスの肉体を掴み、剥ぎ取る。


 あまりにも残酷な光景が続く。


 五感から指や腕が生えて潰れた。

 腹も、臓器も、足も、何もかもから手が突き出して握り、潰し、もぎとる。


 木、風、水、火、土で出来ているガルボスさえ、この狂気には勝てない。


 そして遂にガルボスだった物は、腕の小山になった。



「魔王、弱いですね〜!」



 ブティの高笑いが戦場に響く。

 そしてブティは、死体の腕で作り上げたガルボスだった物を見る。



「これも僕の作品にしましょうか」



 上機嫌な肉塊からブティが身体を出す。

 ブチブチと肉を剥ぎ取りながら出てきたブティの肉塊が腐敗して消滅した。


 腕の小山となったガルボスだった物を触る。



「……な、なんですかこれ!」



 ガルボスだった物を触ってブティは何かに気が付いた。その様子は、偉大なる将軍を動揺させるには充分過ぎる。



「何故、中身が無いんですか!」



 腕の小山は肉体から生える一つの物体。

 だが、ガルボスから生えた筈の腕の一部が滑落していた。


 そうなった理由に一つしか思い浮かべない——とした時、ブティは後ろを振り向く。



「良くぞ我が外装の全てを剥ぎ取ったな将軍。だが、ただそれだけの事よ——我が身は無機物に宿る精神、肉体など飾りでしかない」



 土が盛り上がって人型を作っていた。

 その右手には五虹剣が持っていて今にも振り下ろす所だった。



「肉体を持たない……精神体……そ、そんな事が有り得るのか! 死体にならないなんて!」


「やっと素を出したな悪女! 五原色に裁かれて死ぬがよい侵略者!」



 五虹剣がブティに向かう。

 ブティがすぐさま弱体魔法と強化魔法を発動させようとしたが、地面が蠢き、ブティを沈ませた。



「な、なにが!」


「死ね悪鬼!」



 五虹剣がブティの肩を切り、胴体を裂いた。

 血反吐を吐き捨てるブティは、五元素の光を受けて風化して消滅しそうな時、ブティが呟いた。



「お前達は……恐怖を知る……」



 その言葉の意味を知る前にブティは死んだ。

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