市街地調査
ソフィアとの夕食は楽しかった。
何でもソフィアは、ドワーフ王国アルバから来たらしい。
元は孤児院生まれだったという話もしていた。
その後、どんな場所よりも深い森に来た時は恐怖で押し潰されてしまいそうになったなど沢山の話を聞いた。
聞いたのはほんの一部かもしれない。だけども過酷だけども覚悟があって突き進んできたと聞いていて分かる。
こんな人生もあるのか、そう思いながら俺は眠りに就いた。
★★★★★
翌朝、俺は日課だった斧を手にした。
いつもしていた薪割りをしよう。
そう握った斧が手に染み付いたようにしっくりと来る。
薪割りをするように木を置いて斧を振りかぶり、切り取る。
ただそれだけ。
たったそれだけなのに癒しになっていた。
どうしてか楽しくて仕方ない。
「日常の良さか」
ふと感じた。
日常から離れていたからこそ気付いた日常という不変の良さ。
変わらないからこそ楽しい、癒しになると思える。
刺激のみを受け続けてきた約一ヶ月半。
生死が関わっていたから生きた心地はしなかったが、この日常を味わうために与えられた試練だった気もする。
「……おはよ、シュンスケ」
そんな風に思っているとソフィアが今にも寝てしまいそうな顔で出てきた。
「ソフィアも朝早いんだな」
「……な、なにか、音がしたから」
朝が弱いを体現したソフィアが面白可愛い。
「悪かった、うるさかったよな」
「大丈夫……慣れてるから」
昨日の話から野営もあると聞いていた。
だから、朝一番に音が響くこともあるだろう。
「そうか、ズーズンもおはよう」
「キャン!」
ソフィアに付いてきたズーズンに声を掛けると元気に返してくれる。
ズーズンは、とても頭が良いのかもしれないな。
「てつだう」
「あー、じゃあこの薪を母さんに渡してくれるか?」
ソフィアは頷いて薪を抱える。
横で一本の薪を咥えているズーズンは、ソフィアの後を追いかけて行った。
客人の筈なのにどうしてか心安らぐ想いが出てくる。
俺は視線だけでソフィアを見送って薪割りの続きを再開した。
母さんも目を覚ましたらしく朝食の香ばしい匂いがしてきた。
そろそろ終わり頃だろうと俺は、二日後を考えて少し多めの薪割りを終わらせた。
「母さん終わったよ」
「お疲れさん。朝食が出来ているよ」
机に並ぶ三人分の食事。
白パン、キャベツスープ、サラダ、それに目玉焼きといつもの献立だった。
「ソフィアさん、こんな物しかご用意が無いけども」
「いえいえ、私の事はお気になさらず!」
三回くらい見たやり取りをする二人に何だか懐かしさを感じさせてくる。
そんな中、母さんの言葉が続いた。
「ご、ごほん! 竜の名において守護を、我ら民衆に慈悲を、今日も栄光をお見せくださりありがとうございます。いただきます」
「「いただきます」」
祈りの言葉を捧げて食事を摂る。
その中でも緊張感が生まれない食事が久しぶりだった。
★★★★★
たわい無い会話をしながら食べ終わった朝食後、俺とソフィアはまた市街地に出ていった。
何でもソフィアは、魔皇国軍が攻めてくる前にじっくりと見ていたいと話していた。
ズーズンを抱えたソフィアに俺は聞いた。
「どこか見に行きたい所はあるか?」
「昨日、見れなかった全部かな」
「分かった、任せてくれ!」
何だか忙しい日が始まった気がした。
そう思いながら俺は考えた、
昨日見てない場所を考えると一箇所思いつく。
「そうだ、市場があるから行ってみるか」
「うん!」
この市街地には大きな市場がある。
近くにドワーフ王国アルバや海に面している漁村からの仕入れなど様々な食材や工芸品が集まる。
その為に大きな市場へ発展していった。
「こんなにもいっぱいあるの凄い!」
立ち並ぶ露店は昨日を遥かに超えている店舗数。
遠くまでずっと露店が見えている。
それだけでなく活気盛んな声は、戦時下とは思わせない程の元気さがある。
「らっしゃい! 新鮮な魚あるよ!」「お肉はどうだい! 豚に鳥に牛も何でもあるよ!」「野菜も盛り沢山だよー!」「お菓子たくさんあるよー!」
様々な呼び声にソフィアが見惚れている。
そんな姿が可愛く見えるが、ここに飲み込まれたら帰られない。
「ソフィア、目的の豚肉三キロにキャベツをひと玉、それに人参を四本を買おう」
「う、うん!」
ソフィアがズーズンをギュッとして逃さないようにしている。
ズーズンが身を動かして逃げようとしているが、ソフィアの腕から逃げられない。
諦めたズーズンが舌を出してヘッヘしたり、ソフィアの顔を舐めようとしたり、ソフィアに対して何かしていた。
甘えて脱出しようと企んでいる様に見えたが、ソフィアは一切動じない。
それどころかより厳しく止められる。
「ズーズン、もう少しの我慢だよ」
ソフィアに言われたズーズンは、分かっているのかどうか分からないが、舌を出していた。
「じゃあ俺が買ってくるから今は任せてくれ」
と言うとソフィアは頷いて俺の後を付いてくる。
これで次々と買い物に行ける。
慣れた手つきで新鮮で良い色を出している食材を選んでいき、頼まれた全ての食材を買い終わった。




