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私のパパ(魔王)は勇者に討伐されました  作者: 緋谷りん
第1章 囚われた魔王の娘
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ゴガガの脅威

「ゼェ……ゼェ、そのバカ犬をどうにかしてください!」



 足を強く地面に叩きつけながらアシュバは怒っていた。それはもう顔を真っ赤にして本気の本気に怒りを見せており、ソフィアも申し訳ないと頭を少しばかりか下げていた。


 今、アシュバが怒っている場所は、ズーズンと戦っていた場所だった。三人とも息を切らしていた。


 とくにアシュバは、どうしようも無いくらいに息が乱れていて心臓部分を押さえている。それだけ精神面に悪いのを見たからだった。



「あ、アシュバ、そんなにも怒らなくても……」


「今日ばかりはソフィア様のお願いでもダメです!! そこのバカ犬が何をしたのか分かりますか!」


「ガァ!」



 アシュバが指を差してズーズンに言うと、ズーズンが反撃とばかりに吠えた。



「先に威嚇してきたのは向こうだって? そんなの放っておきなさい! (わたくし)達が簡単に勝てる相手じゃないんですよバカ犬!」



 いつの間にかズーズンの言葉を理解しているアシュバが大きな声で反撃した。けれども、ズーズンも負けるかと牙を見せていた。



「巨大狼になっても私は止めませんよ! 貴方のせいでソフィア様を危険な目に合わせたんですから!」



 ソフィアを引き合いに出されたズーズンは子犬に戻り、主人の身体に擦り付けながら可愛く鳴いていた。



「……そうだね。今日はズーズンが悪いね。もうあんな事はしちゃダメだよ?」



 ソフィアは先ほどまで見ていた絶望な光景を思い出しながらズーズンを優しく撫でる。


 ——そう、先ほどの光景を。



 ★★★★★



 ソフィアがゴガガを見上げていると”何か”落ちてきた。その”何か”を見続けているとソフィアほどの大きさだと分かった。

 すぐさま【竜皇気】の出力を上げてアシュバとズーズンを拾い上げ、そのまま”何か”から距離を取る。



「そ、ソフィア様!?」


「静かにして……何か落ちてくるよ」



 隆起している根に身を隠しているとズドンと大きな音を立てて落ちた。もし【竜皇気】を纏っていないで直撃したら頭蓋骨を砕かれていただろう重さにソフィアは呼吸を殺して見守る。


 落ちてくるだけで凶器になる”何か”の表面をカチ割って出てきたのはウネウネとした触手だった。その触手が、周りの根に触れるとゆっくりと姿を表していく。



「……あれは」


「ガガですね……」



 何かの正体は木の化け物であるガガだった——と言う事は差し詰め木の実なのだろう。 

 正体の結論は出せたが、ゴガガはこうやって眷属であるガガを増やしていると知ったら怖く感じる。もし木の実を枝のどこからでも出せたとしたらこの暗黒宮に逃げ場はない。



「このまま息を殺して出ましょう……」



 アシュバの言葉を聞いて頷いた時、後ろで落ちる音が聞こえた。

 ソフィアは慌てて二人を抱えたまま距離を取ったが、方向を間違えてしまった。

 先ほど落ちてきたガガの目の前に飛んでしまった。



「まずい!」



 ソフィアは、脚に力を入れて思いっきり蹴り飛ばす。ただそれだけで落ちてきたガガは粉砕して絶命した。

 ガガは一撃で対処できる。そう分かったのは大きいが——次々と木の実が落ち始めた。



「ば、バレている!?」



ソフィアが見上げると木の実の数が次々と増えていく。警戒されているに間違いないと思ったソフィアだった。



「いえ、毎日一定数のガガを生み出して暗黒宮の経路を変えています。多分ですが作業中に私達が来てしまっただけだと思いますので見つかった分だけ倒して行きましょう……くれぐれも根を傷付けないようにお願いします」



 アシュバの言葉を聞いて頷いたソフィアはガガを踏みつけて粉砕したらそのまま翔び立ち次のガガを踏みつけて粉砕していく。


 これだけでガガは消耗できるが落ちてくる木の実は数え切れない。


 着地を失敗できない環境下にソフィアは冷や汗が垂れた。

 一度でも失敗したら天を覆い尽くす枝が襲ってくる。決して失敗は出来ない。もし失敗をしてしまったら二人の命を落としてしまう。それだけは決して侵してはいけない間違い。


 ソフィアの中で大切になってきた二人を強く抱きしめて次々と迫り来るガガを回避して蹴り付け、殴り付け、崩壊させていく。だが、ソフィアの背中に衝撃が走った。


 いつの間にか真後ろにいたガガが攻撃を仕掛けていた。【竜皇気】のおかげで痛みは無いが意識がそちらに向かってしまった。その瞬間に眼前に触手みたいに動く枝が迫る。


 ズーズンとアシュバを守るために強引に背中を向けて枝を全て受けるソフィア。けれども、その判断のせいでガガの勢いが増した。


 気が付いた時には完全に囲まれており、ソフィアから逃げ場を無くしていた。

 せめてアシュバとズーズンが居なければ一撃粉砕が出来るが足技に慣れていないソフィアに現状の打破は難しい。


 だからこそ、ソフィアは耐えることにした。

 二人を抱きしめて座るとそのまま丸くなった。お腹部分に二人を入れて攻撃を全部背中で受ける覚悟を決めた。


 【竜皇気】が切れた時、三人は死ぬ。

 そう分かってはいるが二人を守るにはこれしかない。


 ただでさえ【竜皇気】をずっと纏っているせいで疲労が溜まってきているというのに……少しばかりか重くなった気分を飲み込んでソフィアは言った。



「大丈夫、私が守るから」


「ダメですソフィア様! 私の命を見捨ててどうか逃げて下さい!」



 アシュバは自分が足手まといになっていると分かっていて叫んでいた。けれども、ソフィアにはアシュバを見捨てるなんて出来ない。それではナーシャと同じになってしまう。



「大丈夫……ってズーズン!? 出ちゃだめ!」



 ズーズンが顔を突き出した。

 慌ててソフィアが押し込もうとするが二人を抱えているせいで思うように動かない。

 それを分かっていたのかズーズンの身体がどんどんと大きくなり、最終的には魔狼王の大きさになってしまった。



「魔狼王が顕現しました。対処します」



 上から若い女性の声が響いた。ゴガガの声なのだろうか。



「ズーズンだめ!」



 言うことを聞かないズーズンは、どんどんと巨大になっていき、幹の半分くらいまで大きくなると炎を纏った。

 燃える炎は真っ黒に染まっており、どこまでも燃焼させてしまう業火を思わせる。



「【業火魔法・冥界ノ黒炎】」



 ソフィアは耳を疑った。

 真上に居るのはズーズンなのに、幼い女の子の声が聞こえてきた。



「え、」



 次の瞬間、ソフィア達を囲んでいるガガが消滅した。文字通りどこにも居なくなり炭すらも残っていない。

 圧倒的な熱量にガガが蒸発し、消えてしまった。

 魔狼王はこれだけの力を持った化け物。なのに、ソフィアの驚愕はそこではなかった。


 ゴガガの根は無傷であり、燃えた痕が元からなかった様に何もない。魔法に対する完全耐性——魔狼王と魔猪王が勝てない理由。


 恐れて動けなくなってしまったソフィアは、突然宙に浮く。

 気がつくとズーズンが襟を噛んで背上に乗せてきた。そしてアシュバの首元を噛むとソフィアに投げてきた。



「魔狼王の捕獲を開始します」



 また女性の声が響くと足元の根が動き出す。

 巨大な根が地鳴りをしながら蠢く姿はまさに神代を思わせる。

 ソフィアは恐怖から身震いを起こしてしまう。

 あれに勝つなんて無理だ。あんなのに太刀打ち出来る魔族なんて存在しない。


 恐怖が脳内の支配を進める中、問答無用で根が動き出した。

 足元の根がソフィア達を捕まえる為に真上へ伸びた。そして左右の山脈を思わせる根が叩き込まれる。

 ズーズンが紙一重で避けているが少しでも手を出せば消し飛んでしまいそうな勢いがある。


 巨大な根だけでなく空からも枝が伸びてきた。根とは違い巨大ではない。けれども毛細血管のように細かく、複雑な形をしている。

 どうにかして逃げようと加速を続けるズーズン。けれども、地面をかち割って根が次々と現れてくる。


 下は根の海。

 上は枝の空。


 逃げ場が存在しない。

 ここで諦めるしかない。



「【権能解放】」



 そうソフィアが思った時、ズーズンの大きさが一瞬で変わった。

 いや、ズーズンの顔の大きさだけが変わり、上顎が空に下顎は地面に接している。


 全てを飲み込みそうな口は、また一瞬で閉じた。そこには根も葉も存在してなかった。突然の出来事にソフィアは置いていかれる。

 何も無くなった瞬間にズーズンは最高速度に達した。



「根と枝が消えた? え、あれはなんなの」


「魔狼王の権能です。一日一度だけですが対象を空間ごと飲み込みます」



 アシュバは冷静に言った。つまりは知っていたと言う訳だった。あんな巨大な根と無限に広がる枝が消えたのは驚くだけでは足りないが、命拾いしたのは間違いない。



「そのおかげで山脈も消えました! 今のうちに焼け焦げた広場まで逃げましょう!」


「に、逃げ切れるの?」


「ええ、追撃命令を発してないので無いと思います!」



 アシュバがそう言うのと同時に後ろではうごめく根が地面へ戻っていく。



「魔狼王による損傷は3%です。修復を優先します」



 女性の声が響き、ソフィアが後ろを振り向くと失った根の部分にガガが集まっていた。



「眷属による自己回復——吸収が始まります。先程の黒炎も合わせて三日で治るでしょうね」


「そんなにも早く……けれども、ありがとうねズーズン」



 ズーズンの頭に顔を押し付けて感謝を伝えるソフィア。ズーズンも嬉しいのか高く鳴いた。



 ★★★★★



「ズーズンのおかげで助かりましたが、あの場で魔狼王になってなければ根は動きませんでした!」


「でも、命拾いしたのは確かだし……そもそも私が弱いせいだよ」


「そんなことはありませんソフィア様! 足手纏いは私です、ソフィア様ではありません!」


「ガゥガ!」


「お前も飲み込めば良かったと言いましたねこのバカ犬! 何度も助けた恩がありながらそんな事を言いますか! そもそも初めから【権能】を使えば良いものを主人に良いところを見せたいからって魔法を……イデェ!! 噛むなバカ犬!」



 ズーズンが言うとアシュバが反論を始める。

 その光景に心から微笑ましく思い、また命が助かって良かったと思うが、自分の判断のせいで二人に迷惑を掛けてしまったと後悔の念に押し潰されそうになっている。



(私のせいだよね……もっと……ズーズンに負けないくらい強くならないと)



 ソフィアの胸の奥がズキリと痛んだ。

権能は強大な力を得る代わりに制限がある物もあります!


共通点は膂力や五感などの向上。

心の中に溜まる疲労、つまりは本来の体力を消耗することで膨大な力を得ることが出来ます!


次の更新はあす!


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