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新たな国


 次の日を無事に迎えた。

 皆が天使や剣聖に怯えていたらしいと後々聞いたが、ソフィアとズーズンという魔王2人のお陰で安心して眠れたと言われた。


 何よりも国王となったノームがこの場にいるだけでも安堵感が大きく生まれていた。


 そこから嘆きの声が始まった。

 地上に暮らしていたドワーフは全滅していて、生き残ったドワーフは一万人にも満たない。

 多く見積もっても八千人程しか生き残らなかった。


 亡骸が無いから葬式も形しか行えないが、亡くなった方々の想いを考えてノームは始めた。


 ドワーフ式の葬式は亡骸を地中奥深くに埋めて、祖である土に還す。


 そこでノームは、天使、及び剣聖に殺害されたドワーフ——推定五百万人の土人形を土魔法で作り上げた。


 掌に乗る大きさだけども、ここまで作り上げるのにどれだけの疲労が掛かるのか分からない。けれども、ノームにとっては大切な想いがあるからこそ出来たとソフィアは思う。



 ノームは土人形を一箇所に集めると【権能】を解放していた。



「【地竜ノーム!】 ナナイロ金剛石、みんなをお願いね」



 土人形を七色の鉱石——ナナイロ金剛石が土人形を囲むように生まれる。そして触れていくと結晶化が始まった。


 数分後には土人形をまとめて結晶化していた。



「安らかに眠って……」



 結晶化したナナイロ金剛石が地中に埋まり出した。


 ノームが言うにはナナイロ金剛石は決して壊れない鉱石。もし壊れる事があるとしたら術者が敢えて壊したからだと言っていた。


 それならば棺として良い役割をしてくれるだろう。


 ソフィアも祈りを捧げた。



 ★★★★★



 ドワーフの葬式が終わるとノームが【地の領域】を発動し始めた。

 【地の領域】は地面に由来する物を全て操作できるらしい。それこそ重力も自由自在に扱える。


 残念ながら溶岩は炎が主体を持っているせいで操られないと悲しそうに言っていた。



 ノームは【地の領域】を使うと半円型の巨大な家屋を作り出した。


 それこそ八千人強が暮らせる雄大な建造物。


 しかも、この家屋——通称、地竜棲家は周りの環境に溶け込むように作られていた。

 少しだけ膨らんでいる程度にしか見えない。それこそ、遠目で見ないと分からない程度。



 それは地面を抉って埋まっているからという単純なものだった。



 出入り口を一箇所に作って他の者は入れない様にしている。もし他の種族が出入り口を見つけて強引に入ろうとするとナナイロ金剛石が身体を貫くと言っていた。


 地竜になったからこそ作り出せたとノームは自慢げに話していた。


 ここからノームは新たなドワーフ王国を始めるらしい。最初は地下から始まるが、最終的には地上に出てどこまでも豊かな国にすると熱弁していた。


 その瞳がソフィアには輝いているがどこか哀愁を思わせる王者の眼をしていた。



 ★★★★★


 ノームが地竜棲家を作ってから丸三日が経過した。


 その間、ソフィアは今後の行き先の確認と国民の住宅を作るという手伝いをしていた。



 一応、住宅に関してはノームが土から作っていたけれども、八千人規模となればすぐ出来る訳が無い。


 そこでソフィアは率先して森から木々を切り倒したり、岩の除去だったり、食糧の調達など何でもしている。


 これで少しでもドワーフ王国アルバの役に立てば良いと考えていた。


 無理のしない範囲を心得ていたが、やり過ぎてしまってソフィアはノームに怒られた。


 ソフィアは森そのものを伐採する勢いで木材を収穫していた。

 これでは自然が破壊されてしまう。

 そうノームに怒られた為に三分の一は残した。



「けれども、ソフィアのお掛けで想定よりも早くおわったよ」



 そう声を掛けて貰えなかったら心苦しい想いをしていたかもしれない。


 ノームは優しい。

 優しく叱ってくれるのがまさにナーシャを思い出す。



「ナーシャのお墓詣りしないとね」



 ソフィアがボソッと呟く。

 すると、ノームが何かを思い出したのかソフィアに言葉を掛けてきた。



「ねえ、ソフィア」


「ん? どうかしたの」



 ノームの表情はどう捉えていいのか分からない。

 敢えて例えると不穏を思わせる表情をしている。



「こんな話をしていいのか分からないんだけど」



 どうしても言い出せない雰囲気がノームにはあった。

 ソフィアが話し辛い環境を作ってしまった。

 そこに原因があると分かっているソフィアは笑みを浮かべた。



「大丈夫だよ、なんでも聞いて」


「……うん、あのね」



 ノームが話した言葉にソフィアは座り込んでしまう。

 頭の中を否定が湧き上がり出して泣いていいのかどうしていいのか分からない。



「そんな筈はない! だって私は! 私は聞いたの!」



 ソフィアの鬼気迫る顔にノームは悲しげに答える。



「うちもそう思うけども……バーニック陛下が亡くなったなんてアルバは聞いていないの」



 同盟国であるアルバがバーニック死亡の話を聞いていない。それは戦時下にあったとしてもあり得る話ではない。



「だって勇者が!」


 ——殺したと話していた。

 しかも、剣聖もバーニックは死んでいるみたいな雰囲気を滲ませていた。



「うちもそうだと思うよ……けどね、開戦時に使者を送ったの。その使者が”バーニック陛下と話した”結果、今回は協力できないと言われたの」



 ドワーフの一人がバーニックと対面している。

 ソフィアには信じられない話だったが——ふと思ってしまった。



「……私、パパが亡くなったところ見ていない」



 自分の父親だからこそ真っ二つにされたとしても生きているかもしれない。そもそもキグレはソフィアを殺せなかった。

 それならばバーニックを倒せる訳が無い。


 ソフィアは、単純明快な話に気が付かなかった。



「——今すぐ行かないと!」



 ソフィアはズーズンを呼んだ。

 そしてノームの顔を見たとき、ノームは泣いていた。



「え、ノーム?」


「ごめんね、ごめんねソフィア……うちは……助けてもらったのに……何も返せなくて」



 バーニック生存の話を聞いてソフィアがここから離れようとしたとき、ノームは感じてしまったらしい。

 ソフィアに返せる物が無い。何よりも国王となったが、国が壊れてしまったから助太刀も出来ない。



「ううん、こっちこそごめんなさい。復興を手伝えなくて」


「そんな! うちは……きっとソフィアを助けるから!」



 ソフィアはノームをギュッと抱きしめてズーズンの背に乗る。するとズーズンが走り出した。



「ありがとうソフィア! また会いに行くから!」


「うん! こっちこそありがとうねノーム! またね!」


「うん、また!」



 ソフィアは、手を振ってその場から遠ざかっていく。

 そして涙を拭って前を向いた。



 次の目的地は、魔竜国ドルドレイド。

 そこで待ち受ける試練にソフィアはまだ気が付かなかった。

これにて第2章は終わりです。

明日から幕間が数話ほど続きますのでお楽しみに

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