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竜装


 ソフィアの拳がバルバトに向かう。

 風を巻き起こし、衝撃が地面を壊す一撃。



「その技はもうみたぞ!」



 身体を作っている炎を霧散させて回避しようとするバルバト。

 その行動を見てソフィアは笑う。



「【竜装】は、これで終わらないから!」



 ソフィアの拳が今までに無い威力を発揮する。

 この一撃は何よりも速く、何よりも重たい。


 もはやソフィアの拳の速度は上限を突破しており一つの光線を生み出す。


 今までは無意識下に制御してしまっていた偽りの全力も【竜装】を得たことによって完全に制御された全力を身につけた。


 更に全てを燃やされてしまったからソフィアに守るべき存在がノームだけになった。


 その様々な心理が作用し合ってソフィアの一撃は光速に達する。



「な、なにがおこって……」



 ノームの声が聞こえて来た時にはバルバトの腹をソフィアの拳が穿いていた。


 腹を貫いた後に衝撃が走り抜ける。


 ソフィアの拳から放たれた光線が凄まじい衝撃を放ちながら仮初の空にぶつかる。


 すると空を穿ちながら地上まで抜けていった。



「炎すら……殴っちまうだなんてな」



 ソフィアの手に血が掛かった。

 バルバトが大量に吐血したのだ。



 そのまま拳を引き抜くと血が吹き出した。


 胃袋から肺にかけて貫いた。

 一撃がもたらした破壊にバルバトは倒れる。



「……魔王。その、器を超えた姫君、キグレめ」



 キグレに対して吐き捨てるように言葉を押し出す。

 その仕草にソフィアは、バルバトに視線を合わせた。



「貴方もキグレを知っているの」


「はっ! なに、を。あいつは、人類の要だ……人ならば、誰だって」



 知っている。

 キグレとはそれだけ大きな存在。


 ならば、ソフィアの父親であるバーニックを殺した理由は、人類の為に行わられた。


 そう感じたのと同時に憎しみが湧き上がる。


 ソフィアは倒れたバルバトを強引に掴みあげた。



「お前らにとってはそうだろ! だけど、だけども、お前達が殺したのは罪の無い命だ!」



 ソフィアは涙を浮かべながらバルバトに言うと、バルバトがニヤリと笑った。



「戦争はな、勝った奴が正義なんだよ!」



 その言葉を吐いた瞬間、地面が割れた。そして割れた所から次々と炎が巻き上がる。


 炎の勢いはどんどんと上がっていき、ソフィアやノームすら上へ押し上げ出す。


 そこでソフィアが押し戻そうと足腰に力を強く入れたが炎の勢い——溶岩は止まらない。



「なんなのもう!」


「ソフィア! このままだと危険だよ!」



 ノームの声を聞いたソフィアはバルバトを離すとすぐさまノームに近付いた。


 ノームの所に行くと魔法を唱え出していた。



「【地竜魔法・重力掌握!】」



 ノームが重力を操り出すとソフィアに抱きつく。そしてノームはソフィアに向かって言ってきた。



「全力で上へ跳んで!」


「でも、そんな事したらノームが!」



 ソフィアが本気で跳べば天井を壊す事は出来る。そして迫り来る溶岩から逃げるのも出来るかもしれないが、ノームはぶつかった衝撃から逃げられない。



「大丈夫! うちに来る衝撃は全部操作するから!」


「う、うん!」



 ソフィアはノームの言葉を信じて足に力を込めて飛び出した。

 ソフィアが飛び出した瞬間、地面は耐えきれずクレーターのようになっていたがすぐさま溶岩によって埋められる。



 ソフィアの懐で抱きついていたノームが片手を突き出す。すると、不思議な事に天井にあった土が逃げるように穴を開け始めた。


 天井にぶつかることない。それだけでもノームに向けた心配が少し減るような気がする。


 ソフィアはそのまま気にしないで地中を進んだ。


 刹那、光が差し込んだ。

 その光は——本当の地上だ。



「で、出れた!」



 地上に飛び出したソフィアは上手い具合に体勢を整えて着地する。

 着地したのと同時にノームが尻餅を着いた。



「つ、つかれたぁ……」



 ノームは、ため息を吐くようにぐったりとしていた。

 ソフィアにはどれだけ突き進んだのか曖昧になっていて分からないがずっと重力を操作していたノームにとっては集中力を大きく消耗したに違いない。



 だから、ソフィアは労わろうと近づいた時、地面から炎が吹き出した。


 バルバトは自爆行為に出たと思っていたソフィアは、呆気に取られる。



 すぐさま拳を構えるソフィアと七色の鉱石を作り出すノーム。


 そして炎の中からボロボロになったバルバトが姿を見せた。



「もう戦う気はねえよ」



 手をヒラヒラと動かして無気力を見せているバルバトにソフィアは絶句した。



「な、何を言っているの」



 バルバトの仕草はまるで遊戯に負けたからもうやりたくない。それくらいの簡単な態度だった。



「こっちは天使一機にベルモンドの身体が壊れてんだ。もう戦っても損するだろ?」



 さも当然みたいな言い方にソフィアは、激怒しそうになるが……ノームの姿が目に入って留まる。


 ノームは立ち上がっていても疲労が見えている。


 このまま戦っていてもあれだけの溶岩や炎を操れる炎竜からノームを守るのは難しい。


 だから、ソフィアは悔しいが前に出なかった。



「じゃあ次の戦争で会おうな!」



 あまりにも簡単な言い方で炎が幻影のように霞んで消えていく。

 そこのノームが生み出した七色の鉱石が飛び込んできた。



「待て! まだうちはお前を!」



 ノームは何か聞きたい事があったらしいが、バルバトは何も気にせずに消えてしまった。

 唐突に現れてドワーフを殺すだけ殺して消えていった。

 その理不尽な暴力が半魔や魔族を恐怖の底に落とす。


 だから、魔族は人類を恐れてこう呼び出した。


 人災。


 その残酷さ、冷酷さをソフィアとノームは見せつけられた。

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