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ドレスの力


 炎竜にぶつかったソフィアの拳は衝撃を多方面に放ちながら貫く。

 ソフィアには何も感じない——まるで虚空を貫いた感触に嫌な気がした。



「もしかしてこれも」



 ソフィアの予感が当たった。

 バルバトの腹部を貫いた筈なのに倒れる様子も何もない。それどころか炎で造られた剣を振りかざしていた。


 ソフィアの首元に炎剣が振り下ろされる。

 その剣ではソフィアを傷つける事は出来ないが、轟々と燃え上がる炎から本能的な恐怖を感じてしまい、一歩だけ下がった。



「まさかあれだけの距離を跳んでくるとは!」



 嬉々としているバルバトに対してソフィアは、睨みつける。


 この一撃は本気だった。

 なのに、バルバトの炎はソフィアの拳が来ると分かっていたのか”自ら”霧散した。


 炎の身体に変質したから出来る回避方法にソフィアは心底嫌気が差す。



 バラバラになった炎が一箇所に集まる。

 すると、バルバトの姿に戻っていた。


 白い炎の具現化となったバルバトにソフィアは歯を食い縛る。


 その時、地中が盛り上がった。

 勢いよく飛び出してきたのはノームだった。


 ノームだと分かるのだが、その見た目が大きく変わっていて何がどうなったのかソフィアにはわからない。


 七色に輝いている金剛石がノームの全身鎧になっている。もし顔が出ていなければ誰なのか分からない。



「ノーム!」


「ソフィア! ——そいつは」



 ノームがソフィアの隣にやってくると睨みつけるようにバルバトを見ていた。



「あれ剣聖だったもの」


「え、剣聖なの! どう見たって天使にしか」


「うん、剣聖が炎竜だったみたいなの」


「そ、そんな」



 ノームの顔に驚きが張り付いていた。

 どれだけ苛烈な戦いをしてきたのかソフィアには分からない。けれども、先ほどまでの戦いが度返しになってしまったかもしれない。

 それならばノームが驚愕して落胆するのもソフィアには分かる。


 またソフィアは、天使と剣聖に共通点があると感じた。


 どこからどこまでが同じなのかそれによって戦い方も変わるかもしれない。


 そうソフィアが思った時にノームが飛び出した。



「お前のせいでドワーフが!」



 ノームは全身全霊の怒りを乗せて飛び出すと七色の金剛石が地中からバルバトに向かって飛び出した。



「魔王の次は地竜か! 炎竜()地竜()、どちらが強いか勝負しようぜ!」



 

 バルバトが爆炎となって爆ぜる。

 凄まじい衝撃をぶつけながら突き進んでくるバルバトは七色の金剛石にぶつかるとソフィアの拳のように霧散して回避する。


 突き進みながら炎が集まって元に戻ったバルバトがノームと交差する瞬間、炎矛を作り出して握った。


 そのまま猛烈な勢いなままノームに向けて矛を突き刺すように動かした。



「ノームっ!」



 ソフィアが駆けつけようとしたが、ノームの自信溢れる行動を見てやめた。


 ノームが胸を張ると炎矛とぶつかる。

 激しい熱風となって衝撃が走り抜ける。

 しかし、炎矛がぶつかったノームの胸当ては破壊も融解も出来ていない。それどころか小さな傷すら付けられない。



「流石地竜だ——おっと」



 ノームの周辺の重力が急激に変わり、バルバトが押しつぶされる。そのまま地中まで押しこまれてしまった。


 だが、流動的な炎になったバルバトが重力から逃げ出した。



「もう覚醒済みか! これならへカトルが負ける訳だな!」



 へカトル。

 その名前や言い方から死んだ天使だとソフィアは推測するが無駄だと思い、やめた。



 声がする方向を見ると、どこからか現れた火の粉が爆発的に炎を広げていき、バルバトを生み出す。



 次はソフィアが飛び出して拳を振るう。けれども、霧散して回避していた。


 更に連続で殴りつけたがどうしても同じような結果になってしまう。


 完全な防御力を手にしている。

 そう直感でソフィアは思う。



「おしもっと戦うぞ!」



 地中から炎が吹き出し始めた。

 一瞬でドワーフ地下王国が炎の海に変わってしまう。


 気軽な言葉で一気に崩壊された。


 ノームやソフィアが出来る限りは残そうと思っていた街が炎に飲み込まれてしまう。


 覚悟は確かにしていた。


 最初の城が燃えた時も覚悟は出来ていたが……ソフィアには限界だった。



「この……!」



 ソフィアは燃える地面を駆け抜けてバルバトに向かう。

 どれだけ強く殴りつけても、どれだけ素早く殴ってもバルバトを倒せない。


 その事実だけは思いの力を込めても変わらない。


 ソフィアにはそう思う。



 けれども、これだけの惨劇を一度で行える力を持ったバルバトが遊びの感覚で発動したのが許せない。


 何故ならば……


 ノームの瞳が光を失ったからだった。


 燃え盛る炎が吹き出した瞬間、苦しくても思い出が詰まった地下王国が壊された。

 それがどれだけ心苦しいのかソフィアには分からない。


 だけども、ノームの顔がどれだけ辛いのか教えてくれた。



 あの表情、あの瞳。その全てを見てしまったソフィアに怒りが巻き起こる。


 道楽として崩壊させたバルバトが許せない。

 何よりもノームを悲しませた事が許せない。



 ソフィアは、バルバトの目の前に立った。


 ソフィアの動きを予測していたのかバルバトは炎剣を持ってソフィアを切りつける。

 しかし、バルバトはソフィアを傷つけることはできない。


 だから、ソフィアは簡単に手を使って弾いた。



「お前たちはここをなんだと思っているんだ!」



 ソフィアの叫びに対してバルバトは歪んだ笑みを浮かべる。その仕草が全て怒りに変わる。



「【権能解放! 竜装!】」



 ソフィアのドレスが全身鎧に変わる。

 赤黒い全身鎧は、圧倒的な暴力を表した刺々しい姿。


 何よりもソフィアが感じていたのは今までにない力。



「なんとこれほどの!」



 バルバトの声が響いた瞬間、ソフィアは叫ぶ。



「【竜皇拳・竜突き!】」



 ソフィアの拳がバルバトに向かう。

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