白い炎
ノームは自分が持てる最大の力を持って天使を殴りつけた。
ノームは殴る瞬間に天使の重力操作を解除して自身の拳に全て乗せていた。
加重によって破壊力が増したノームの拳は、天使の頬にぶつかり、そのまま貫くように通り抜ける。
威力が増した拳に殴られた天使の頬は切れて血を流す。更に歯が砕けたのか数本、吹き出していた。
血を吐き出しながら天使は、ノームを睨みつけてくる。
「よくも私を傷つけましたねえええ!」
天使の身体が燃えるように熱くなってくる。
地面を溶かし出してその周辺に立っているだけでも辛くなるほどの熱量がノームに伝わる。
「許さない、許さない許さない許さないぞ半魔!」
遂に熱は高まりすぎて天使の身体が燃え出した。
轟々と燃える身体に危険を感じてノームはその場から離れる。
刹那、地面から溶岩が吹き出して天使を包み込んだ。
溶岩は身体に付くと天使の身体を焼き始めた。
「な、何が起こるの」
溶岩に焼かれ続ける天使は、遂に溶け出してしまった。
これから何が起こるのか分からないノームは、急速的に鎧を作り出して身に纏う。
何が来ても良いようにと考えた瞬間、地面が割れた。
地面の中から炎が飛び出して来た。
その炎は竜の手——炎手になっていた。
炎手がノームに向かってくる。
この炎だけでも【炎竜魔法・炎竜の顎門】と同じ火力が出ていた。
つまり避けなければ確実に殺されしまう。
ノームは重力操作を使用して逃げようとした時、頭に痛みが走った。
耐え難い痛みに膝をついてしまいそうになる。
意識が掠め取られそうになりながらも何とか使うことが出来た。
これで逃げ切れると思った時、もう一つの手が飛び出して来た。
炎手と同じ大きさだが、こちらは溶岩になっていた。さながら溶岩手は、ノームを捕らえようと蠢く。
溶岩手も圧倒的な熱量を持っている。更には溶岩のせいでボトボトと落としていた。
地面にも溶岩溜まりを作っている溶岩手は、逃げれば逃げるだけノーム自身の首を絞めることになる。
「もう、まだ強くなるの!」
これ以上、重力操作を使えばノームの頭が壊れしまう。
だからこそ、土系統の魔法で対処したいが、あの両手は、土を、岩を溶かす。
どれだけ強固な守りを作っても意味がない。
そう思わせた時、地面をかち割る。
地面の中から出てきたのは、竜の顔。
顔の中心には天使の顔が張り付いていた。
「これぞ炎竜! これぞ炎! 私を殴った罪に裁かれよ!」
炎竜の姿なのだろうか。
圧倒的な熱量を持って君臨する天使が、手で押しつぶそうと向けてくる。
手の速度も上がっている。
すぐさまノームは重力操作をしようとするが——吐血した。
あまりにも過酷な使用を繰り返していたからノームの身体が追いつかなかった。
血がどんどんと吐き出してくる。
しかも、頭痛が酷くなっていき、立つことすら出来なくなってしまった。
その瞬間を好機とした天使が、ノームに手を叩きつけた。
炎と溶岩の熱がノームとぶつかった。
圧倒的な熱によってノームは、瞬時に燃え尽きてしまった。
「所詮はこの程度! 天使に歯向かうからこうなるのです!」
天使の高笑いが聞こえる。
ノームは、寸前で【土魔法・潜土】を発動して地中に潜り込んでいた。
今も真上で燃え続けているのを微弱な熱で感じている。
あれだけ巨大な炎を生み出した天使の全貌を地中から集中して見ようとしたが、口内に血が溜まっていく。
何とか耐えながら天使を凝視し続けるとあるの事に気が付いた。
天使が使っている炎は地中から吹き出していない。
地上で溶かされた土が溶岩になっているだけであって遥か深くにある溶岩を使っていなかった。
これだけでも大きな発見だった。
やはり歴代魔王の戦法は、大きな発見を見つけてくれる。
ノームはこっそりとドゥクスが残したと言われている書物から戦法を学んでいた。土魔法の使い手として教えてもらえる部分が多くあったからだった。
一つの発見から冷静になれた。
そのおかげで炎竜の中心に天使がいて、両手は遠隔で操作しているのも発見できた。
これならば——。
(【土龍魔法・土砂変化!】)
ノームを中心に土が滑らかになる。その滑らかな土が、水のように変わっていき、天使を地中に沈ませる。
水と同じ性質になった土によって天使が生み出した両手は一瞬で沈んでしまい、土の勢いに負けて消火された。
炎竜の頭が沈み出した瞬間にノームは地上に飛び出す。
構内に残っている血を吐き出して深呼吸を繰り返して肺を整える。
潜土を身につけていないだろう天使に向かってノームは同じ魔法を唱えた。
「【土龍魔法・土砂変化!】」
土を岩盤に変化させた。
これによって天使は地中から抜け出すのが難しくなる。
可能だとすれば……。
ノームが思いついた瞬間に溶岩が地中から吹き出した。
「よくも私をコケにしてくれましたね!」
溶岩を吹き出している様はまさに火山でしかない。
見るからに獰猛な天使にノームはニヤリと笑った。
「何がおかしいんですか」
「天使なのに羽を使わないのね」
その瞬間、炎が吹き荒れた。
熱波となってノームにまで届く異様な熱量。
「遊びはここまでです……殺します」
熱がどんどんと増えていく。
先ほどの炎竜など比べられないほどの熱がノームの皮膚を焼く。
これ以上の熱にノームは耐え切れない。
そうノームの直感が教えてくれた。
形振り構わず鎧を補充した。
刹那、熱が鎧を焦がし始めた。
先ほどまでは距離を取っていれば何とか凌げていたが、今回は不可能だと頭が拒否を始めた。
そして気が付いた時には足が震え出してしまう。
炎による本能的恐怖が頂点に達したのだ。
どれだけ火力が上がっていくのか考えも付かない。
「この痛み、痛み、痛み !! 炎竜よ、全てを燃やしなさい! 私の何もかもを! そして力を! 圧倒的な火力を!」
天使の叫び声が聞こえてきた。
熱は天使自身も焼いているらしい。
まだまだ上がる火力に家屋が燃え出した。
ノームの肌も水分が蒸発し始める。
そして遂に……
「……これが」
燃え上がる炎が止まると真っ白に燃え続ける天使が降臨した。




