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ノームの決意


 ノームに罵倒の嵐が巻き起こる。

 ノームがもっと早く出て来てくれたら死なずに済んだドワーフが多くいた。


 様々な感情が流れてくるがその大半が憎悪に塗れている。ソフィアには、その感情が多く見えて来て嫌な気持ちになる。


 だけども、ノームの顔には怯えなどは無かった。



「皆が思う事は多くあるでしょう! 確かにもっと早く動いていればアングラ王を失わないで済んだかもしれない、多くの方が死なないで済んだかもしれない!」



 ノームの顔付きに気合が入る。

 ノームに対する怒りの声が響き渡る。どれも心無い言葉ばかりだった。



「けれども、失った物は帰ってこない! どれだけ非難しても、どれだけ怒っても帰ってこない!」



 ノームの感情が強く見えてくる。

 国王を亡くした民衆は不安が込み上げてくるだろう。しかも、天使に殺されたのだからなおのこと。


 けれども、ノームにはそこに加えて家族を失った事になる。

 15年も一緒に居た家族が憎っくき天使によって殺されたのだから、ここに居る一部の怒りについては分かる



「どれだけ想っていても、どれだけ考えても帰ってこないんです! うちだってアングラ王は育ての親でした。けれども、もう帰ってこない!」



 ノームは水晶に魔力を通す。そしてもう一度、魔術を起動させた。



 ★★★★★



 森が映っていた。しかし、先程の映像と違って地下に造られた偽物の森。

 そこに一人の少女が走っていた。



「ノーム様いけません!」



 見えない場所から声が掛かる。その声はアングラだった。



「平気だよ爺や!」



 それに対してノームは、嬉々として走り回っていた。正直、何が楽しくて笑っていたのか思い出せなかった。

 けれども、今思えばアングラと一緒に居た——ただそれだけで楽しめていたに違いない。


 アングラがノームを止める為に録画している水晶を置いて出て来た。



「こら! ノーム様にお怪我があったらどうするのですか!」


「大丈夫だもん……」



 思っているよりも怒られてしょんぼりするノームにアングラは怒り顔から一変して微笑み返す。



 家族団欒とはまさにこの事を言うのだろうという映像——しかし、急に空気が変わった。


 近衛兵が一人入って来た。



「ノーム様、お時間になります!」


「うん」



 ノームが、宮廷に入ってから任されている仕事がある。




 ★★★★★



 映像はそこで終わった。ここから先は実演だ。



「みんなに見て貰ったのはここから先……うちという存在を知ってもらいたいの!」



 ノームは,、【権能】を解放した。



 凄まじい音を立てながら地面を揺らし続ける。そして壁が動き始めた。


 民衆が慌てふためいて倒れたり、逃げ惑ったりしている。



「【土龍ノーム!】」



 ノームが本当の名前を言った瞬間、揺れが止まった。



「今、うちがしたのはこの地下王国の構図を変えました。先鋭部隊が壊滅し、アングラ王が殺された事によって出口の場所がバレた可能性があるからです! なので出口を王城に変えました」



 出口は王城内部。

 つまりは一般人であるドワーフ達には手出しが出来ない。



「な、何をしているんだ!」



 誰かの声が響いた。その怒声には「逃げられない」という意思が強く籠っている。



「ここでドワーフとして……いいえ、地竜の巫女として決着を付けます。もし、開戦になった瞬間に別の出口が作られます。その出口は……皆さんの全ての家です」



 ノームは、地面の構造を変えた。ただし一点だけは変えていない。



「家の出口を通るとその場で崩壊します! だから、開戦するまでは家に居てください! 敵はもうこの場所が分かっているでしょう!」



 もう分かっている。その事実が少しずつ浸透した瞬間、民衆が慌てて家に向かって走り出した。


 すぐさま開戦になる可能性がある。


 あの恐ろしい炎の雨が降るかもしれない。その事実に皆が恐れて帰ったのだった。




「……ソフィア、これで大丈夫かな」



 全ドワーフに配信していた魔術を止めて、後ろで待っていたソフィアに声を掛けた。



「うん、平気だよ」


「ありがとう、そしてごめんね」



 ノームはソフィアの手を取って涙を浮かべそうだが、何とか堪えていた。ここで泣いては意味が無くなってしまう。



「謝らないで、私が勝手に残っているだけだから」


「うん、本当にありがとう」



 ソフィアが返事をすると、ズーズンがソフィアのドレス裾から顔を出して吠えた。



「キャン!」



 力強い吠えが頼りになる。

 この小さな身体から魔王に変わると思うとノームは安心感を覚える。


 天使は確かに強い。けれども、こちらには魔王が二人も手を貸してくれる。


 それだけでも充分なのにソフィアに関しては剣聖を一撃で倒してしまった。まだまだ可能性を秘めているソフィアを思うと仲間で良かったと安堵する。



「ソフィア、ズーズン。アルバ王国をよろしくお願いします」



 ノームは二人に深くお辞儀をした。すると、笑顔と吠える声が聞こえてきた。


 どこまでも優しい二人に感謝を示しつつ城内部に戻る。


 その時、ノームは思う。

 今までよりも過酷な戦いになるのは間違いない。

 それこそ相手は空に干渉する化物。


 しかも、ノームよりも上位である竜を使うと聞いている。



 腹を括る必要がある。

 今まで以上に気合を入れ直して、戦地でも折れない心が必要になる。


 不安は残るが、今もノームを支えようとしてくれているソフィアがいる限り——ノームは負けない。

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