ドワーフ王国の真実
ノームは、国民を城内にある正門前に集めた。
地下に住んでいる国民を全て集めてる為に使った紙には、「国王の言葉を伝える」とだけ書き示した。
その紙には王家の紋章が押されていたからか、皆が素直に集まってくれた。その中には王城に入った事が無いから興奮している者や、何かを悟って顔を真っ青にした者など様々な印象を見せていた。
「何が起こるんだ」「この国はもう終わりなんだよ」「アングラ様の遺言は、なんだろうか」
色々な声が聞こえてくる。
その声はどうしても不安なものばかり。興奮している者が一部。
渦巻く感情の中、宮廷の最上部でノームは震えていた。
全ての国民に事実を話さなければいけない。それは並大抵の気持ちでは出来ない。
今、見守っているソフィアでも出来るか分からない。相手は魔猪などの動物ではなく、様々な声を上げている個々人なのだから。
緊張が走る中で、ノームが一歩前に出た。
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「今から現国王のお言葉を伝えます!」
ノームの近衛兵が声を上げた。
声は魔術を通してドワーフ王国内に住むドワーフ達に届けられている。
この一言によって会場だけでなく、全てのドワーフの空気がガラリと変わる。
それぞれが様々な受け止められるように心の準備を始めているだろうとき、ノームが姿を見せた。
一気にどよめきが起こる。
ノームを知らないドワーフがほとんどだった。
だからこそ、ドワーフ達は恐怖に取り込まれていく。
今は戦時中なのに見たことがない奴が突然出てきた。それならば……悪い方向に考えてしまう。
「誰だ」「あんな奴知らない」「人間族か?」
色々な声がノームに届く。
手足が震えて仕方ない。
喉が開いてなくて声が出てこない。
ノームは、大勢のドワーフの視線を受けて動けなくなってしまう。けれども、爺やに誓ったからノームは、また一歩前に出た。
「うちは! アングラ王から……いいえ、ドワーフの意思を継ぐ者!」
ドワーフを継ぐ者。それはドワーフの全てを継ぐとして——つまりは、ノームの全てを語るという覚悟だった。
「何を言っているんだ」「ところでお前は誰だ」「何がしたいの?」
また悲観的な声が聞こえてくる。
ノームは、負けない意思を持って声を上げる。
「まず……この地下王国が作られた訳を——そしてうちが何者なのか、これを見て下さい!」
ノームが手にしたのは、球体の水晶。ソフィアと一緒に見た水晶に似ているが大きさが違う。この会場に居るドワーフ、更には魔術で繋がっている者に伝えなければいけない為に特大級の水晶を用意した。
「【閉じ込めた記憶を今、喚び戻せ……記憶再生!】」
ノームの詠唱によって水晶は輝き、空に映像を流し出した。
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「一人のドワーフとしてアングラ・クフルの記録を残しておく。これは王座に就く少し前の話だ」
地上に見える鮮やかな青空。青なのに一変もしない空想で作られた地下の青空には無い様々な青が混ざった豊かな青空が見える。
アングラが居るのは自然豊かな場所だった。
どこかに向かっている一場面として空が写っていたらしい。
「ここはドワーフ王国でも秘境中の秘境にある村。この村の名前は、アルバ。皆が知っているだろうこの名前は……ドワーフ王国の名前だ」
野原から森に入り、山道に向かう。
小動物から大型動物まで様々な動物が住んでいる小鳥のさえずりが聞こえてくる中を進むと……突然、拓けた場所が見えた。
その場には家が三軒だけ建てられている。
この様な場所を村と言っていいのか疑問が残るが突き進む。
初めての風景が見えるからか不安が多く残る。
「アングラか」
家の中から声が響いてきた。
その声に対してアングラは——王族は跪いた。
「はい、国王になる事が確定しましたので、ご挨拶に馳せ参じました」
「そうか」
扉がゆっくりと開く。
そこに居たのは、二人の男女だった。
いや、正しくは女性が赤子を抱いている。
「ならば、誓いの儀をしよう。何があっても地竜の巫女を裏切らないと」
「はっ!」
アングラは跪いたまま誓いの言葉を述べる。何があっても忘れてはいけない言葉。
これからもドワーフが生き延びる為に必要な儀式を終えた時、赤子が動いた。
「きゃ、きゃっ!」
赤子は、元気に手を動かしている。まるでアングラの言葉に反応したみたいだった。
「”ノーム”も……地竜の巫女も喜んでいらっしゃる」
「ありがたき幸せです!」
「よろしい。では、アングラよ。五年後に来なさい」
「はっ!」
アングラは立ち上がり帰ろうとした時、地面が動き出した。誰も魔法を詠唱しておらず、無詠唱とは思えない程の力を感じる。
すぐさまノームの方を見ると目が光っていた。魔法を行使した証拠だった。
動く地面によってアングラは一瞬で村から出された。
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場内がざわついている。
ノームと名乗った女性が御伽噺に出てくる地竜の巫女だと言い出した。
地竜の巫女は、土族を治めていた地竜という神に仕えた神官。
つまりは神としての意志を民衆を導くための存在なのだが、御伽噺として広まっていた。
何故ならばここまで苦しめられてきたのに助けに来てくれなかった。
ただその一点だけである。
だからこそ、声が上がった。
「今更、なにをするんだ!」「アングラ王を返せ!」
罵倒の言葉。
ずっと宮廷に逃げていたと思われているノームを罵倒する言葉ばかりが広まった。




