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ソフィアはただ


 ソフィアはただ抱きしめていた。

 理由は簡単。

 バーニックを失ってナーシャが目の前で殺された時、ソフィアはこうして欲しかった。


 不条理に飲み込まれてしまい、理不尽に突き落とされた時、ただ抱きしめて受け止めてくれる誰かが欲しかった。


 ソフィアにはそうしてくれる誰かは居なかったが、1ヶ月半後にノームがしてくれた。


 だから、ソフィアは同じように受け止めようと決意したから、扉を壊して抱きしめた。



「ごめんね、頼りなくて」


「ううん、私も……同じ事があったから」



 ノームが首を傾げる。

 同じ事が何を示しているのか分からないのだろう。



「私のパパは……バーニック魔王は死んだんだ」


「え、あ、」



 ノームは、ソフィアがお姫様だったという事実に驚いて言葉も出ない。

 魔竜国のお姫様だと知れば、ドワーフ王国の立場から問題が生まれてしまう。


 確かアシュバの話だと魔王は、魔皇帝の承諾の元で同盟が結ばれる。ならば、この場にお姫様——つまりは現魔王とも言える存在が居たら話は拗れてしまう。


 しかも、ドワーフは半魔という立場にいる為に魔族同士の同盟よりも難しい条件を差別的に出されてしまうかも知れない。



「ごめんね、ずっと黙っていて」


「……」



 ノームから返事はない。それだけ衝撃が大きかったのか固まってしまった。


 だから、ソフィアは話を続けた。



「パパが勇者に殺された日、私はナーシャの魔法で……あ、お付きのメイドがね逃がしてくれたの」



 そこからソフィアは、話を続ける。


 暗黒宮で絶望に突き落とされた話。

 小悪魔、狼、猪を仲間にした話。

 巨木を倒した話。



 その全てを包み隠さずに話した。

 どうしてここまで話をしていたのか分からない。けれども、ノームならばソフィアの考えている事を分かってくれるかも知れない。その想いだけで話していた。



「そんなにも……」



 ノームは驚愕してしまい、唾を飲み込んでから話を噛み締めていた。

 その反応がソフィアにとっては良いのか分からない。だから、言葉に乗せる。



「だ、だからね、分かるとは言い切れないけども……同じ境遇だから支えることは出来るよ……」



 少しだけ自信が無くなってしまい、小声になってしまった。こんなではアシュバに笑われてしまう。ドゥクスにも王の器ではないと言われてしまう。



 けれども、ソフィアはこれくらいしか思い付かなかった。どうにかして想いを伝えたいのに、経験の浅さから言葉が出てこない。


 これがソフィアにとって精一杯の誠意だった。


 不安に思いながらもノームの顔を見ると涙が溢れていた。何かしてしまったのかと思い、ソフィアは涙を拭き取る。



「何度もごめん」



 溢れてくる涙を優しい手つきで拭き取る。



「大丈夫だよノーム」



 ソフィアはもう一度だけ強く抱きしめた。



 ★★★★★



 その後、まだ立ち直れていないが、どうにか行動に移そうとしているノームを連れてアングラの墓に向かった。


 まだ戦時中というのもあって国王の葬式は小規模で行われた。ノームは、その場で初めてアングラが亡くなったことを知ったらしい。


 だけども、名前をムーエと名乗っていたから最前で葬儀に参加できなかった。


 ソフィアは、ノームがムーエと名乗る理由を詳しく知らなかった。だから、ノームが部屋に閉じ籠っている間に近衛兵を捕まえて聞いた。


 近衛兵も話を渋っていたが、ソフィアが次期魔竜国王だと言うと教えてくれた。


 ノームは、国民に隠された存在だった。



 どうして隠されているのか理由までは教えてくれなかったが、それが原因でアングラにお別れが出来なかった。


 ソフィアは、ナーシャの死ぬ瞬間を見れたが、見送れなかった。だから、後悔が残ったとしてもケジメは付けないといけない。


 お別れをしたかどうかで、今後の生に大きな影響を与えてしまう。



 ソフィアは、そう考えてノームをアングラの墓まで連れてきた。



「ソフィア、ここは」


「アングラ王のお墓だよ。まだ正式な建物じゃないけども、ここに眠っている」



 ソフィアの連れてきた理由を分かってもらわなくても、例えソフィアの自己満だったとしても構わない。どうしてもここに連れてきたかった。


 自分勝手なのは分かっている。けれども、ソフィア自身が出来なかった事をして貰いたい。



「……ありがとうねソフィア」



 ノームが、墓の前で跪いた。

 祈りを捧げながら声に出していく。



「支えてくれる友達が出来たんだよ」



 ソフィアの事をアングラに話してくれている。

 それだけでも嬉しい気持ちと人間に対して憎悪が湧き上がる。



「まだ会ったばっかりなのにおかしいよね。でもね、うちにとっては大切な存在なんだ」



 なんだが、恥ずかしくなってくる。

 ノームが目を瞑った。



「……ごめんなさい。うち、お爺ちゃんを疑ったの。お父さん、お母さんを殺したのはお爺ちゃんじゃないかって……そんな事ないのにうちは!」



 懺悔だった。

 ノームの心中からの言葉。


 ソフィアは、頭を下げたままになってしまったノームを心配して一歩前に出ようとした時——勢いよく上がった。



「でも! もう迷わないよ! うちはお爺ちゃんが残してくれたこの国を絶対に守るから! だからどうか、冥界で見守ってて下さい」



 ノームが深く祈りを捧げた。

 だからこそ、ソフィアも隣に座って声を上げる。



「私が——先代の意思を受け継いで一緒に守ります。だからどうか、安らかに眠って下さい」



 ソフィアも想いを述べる。

 こうして区切りを付けなければ前には進めない。


 これが戦時中じゃなければ無理に進む必要はない。だけども……今も国民は混乱している。誰かが示さなければいけない時だ。



「ノーム、私に出来る事なら手を貸すよ」


「うん、ありがとうソフィア。今度はお願いします」



 この時、ソフィアとノームによる同盟が決まった。

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