表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/162


 真っ暗。

 どこまでも暗く、どこまでも落ちていく。


 まさに深淵。


 ノームはただ落ち続けていた。

 自分がどうして暗闇に落ちているのか分からない。


 考えるのすら面倒になってきた。

 身体は重たく、四肢は動かない。

 まるで泥の中に埋もれているみたいだった。



「お父さん、お母さん……」



 ノームは意味もなく両親を思い浮かべる。

 自分が五歳の時に居なくなってしまった両親を。


 何度も両親を恨んだ。どうして自分は連れて行ってくれなかったのか。どうして自分だけ宮廷に隔離されなくちゃいけないのか。


 どうして——。



 自問自答を繰り返す中でノームは答えに辿り着いてしまった。



「うちが異端だから殺されたんだ」



 両親は自分のせいで処刑された。

 自分が竜の力を持っているから……その力を両親に自慢してしまったから殺されてしまった。


 ノームの秘密を知る者は殺されるか、記憶を消される。


 もっと深く関わっていた両親は間違いなく殺されただろう。

 ドワーフ王国が生き残る為に……。



「『憎いか』」


「だ……れ?」


「『闇の者——我が名は、闇竜だ』」



 闇竜——どこかで聞いたことがある名前。どこで聞いたのか思い出そうとすると頭に鈍痛が響く。



「憎い……どうして、うちはこんな……」


「『全ては人間族のせいだ。憎め、憎んで憎んで憎み続けろ、さすれば……助けてやろう』」


「え」



 ノームの身体を闇が覆い尽くす。

 闇は泥と同じでまとわり付けば付くだけ身動きが出来ない。顔に掛かれば呼吸も出来なくなってしまい、最終的に呼吸も出来なくなる。



「た、たすけ……て」


「『憎め、憎み続けろ土龍! そして孵化するのだ! お前が古の力を手にすれば人間などすぐに殺せる! 憎め! 恨むのだ!』」


「う、うちが……人間を——ころ……」



 意識が薄れて……消えてなくなりそうになった時、誰かの手が顔に触れた。



「ノーム」



 聞き覚えのある声。

 大好きで、忘れてはいけない声。

 なのに、思い出そうとしたら頭痛がする。


 手が頬を撫でる。そして向こうの顔が近づいてきた。その時、忘れていた事を全て思い出していく。



「そ、フィア」


「ノーム、行こう。ここに居ないで、元の場所へ」


「う、ん」



 ノームは、手を引っ張られる。

 どうして上ではなくて下なのか、そもそもどちらが上なのか、下なのか。


 何も分からないまま手を引っ張られる中で、ソフィアの歪んだ笑みを見た。




 ★★★★★




「こ、ここ、は?」


「よかった目を覚ました!」



 ノームは目を覚ます。

 喉を貫いた筈の剣は、隣に置いてあった。


 あの剣は確実に自分を殺す一撃だった筈なのに、なぜ生きているのだろうか。

 疑問が浮かぶ中、ソフィアが抱きしめてきた。



「う、ちは死ん、だのに」


「そんな事ないよノーム……遅くなってごめんね」



 ソフィアが再度、強く抱きしめてくれた時、後ろから声が聞こえてきた。



「な、何者だお前は! 有り得ない、あり得るものか!」



 激しく動揺している剣聖は、先ほどまでの余裕が無い。

 剣聖が後退りしているのが明らかに恐怖に取り込まれそうになっていた。



「何故俺の斬撃が効かないんだ!」



 今もソフィアを剣の軌道が襲っている。なのにソフィアは微動だにしない。それどころか、気にもしていない。



「ズーズン、お願い出来るかな」


「キャン!」



 ズーズンが巨大な狼に変わろうとした瞬間、剣の軌道が通った。けれども、ソフィアが手を振るう。

 ノームを苦しめた一撃が、虫をはたき落とすように簡単に弾いた。



「何をした女! 俺の剣をどうやって!」


「黙れ人間! 私を怒らせた事を後悔させてやる!」



 ソフィアの怒鳴り声が地面を揺らす。守られていると自覚したノームもソフィアから発しられた殺気に怯えてしまう。



「【権能解放!】」



 ソフィアが解放した瞬間、消えた。

 どこに行ったのか目で追ったが追い切れない。

 どうしてなのか分からず目を動かしてみたら剣聖も消えていた。




 ★★★★★




 ソフィアは、剣聖の頭を掴んで投げ飛ばした。すぐさまソフィアも跳び立つと剣聖の腹めがけて蹴り付けた。



「ぬおおおお!」



 地面に叩き落とされた剣聖が剣を抜こうとした時、ソフィアは容赦無く膝で地面に押し付ける。



「な、なんなんだお前は……」


「私は、魔竜王。お前たちが魔王と恐る存在だ」


「魔竜国……かっははは! そういうことか! やってくれたなキグレ殿!」



 剣聖の周りに斬撃が生み出された。すかさず蹴り飛ばそうとしたソフィアだったが地面が抉れてしまった為にズレてしまった。



「こんな化け物を隠していたなんてよくも! はははは!!」


「何がおかしいの」



 ソフィアは剣聖が笑っているのが憎くて堪らない。それどころか、強く蹴り付けたのに死んでいないのが悔しい。



「これを笑わないでどうしろと言うのだ! これこそ俺が待っていた物語だ!」



 剣聖の雰囲気が変わった。

 ソフィアが見ている景色に流れている”線”が色濃く伸び始めている。


 この線は、【竜皇気】を一回だけ全開にした時に見えた。剣聖の周りから始まり、途中で止まっている。何を意味しているのか分からないが、【絶技】という技なのは間違いない。



「竜狩りの始まりだ!」



 線がソフィアに向かって伸び出した。線だけだと脅威に感じないソフィアは、手を振って蹴散らす。すると、線は斬撃に姿を変えた。


 ソフィアの手に衝撃が走るが、ゴガガに比べれば重たくない。何よりもこの場には守るべき存在が居ないから気にする必要もなかった。



 外道は一撃で仕留める。


 そう強く思い、拳を作り出す。

 今回の拳は、ノームの時に手加減した物ではなく、一発目から本気で放つ。



「死ね魔竜王!」



 線がソフィアの首に繋がった。これも斬撃に変わると考えたソフィアは、構えたまま立ち止まる。


 線は、色濃くなぞる。そのまま強い色は、ソフィアの首に集結しようとした時、拳を放った。



 ソフィアの拳は、この場にある空気を巻き込んで竜の息吹へと昇華させる。その勢いは凄まじく、波動となって地面を半円に抉りながら剣聖を飲み込んだ。



「これで終わりよ」



 波動が終わるとそこには誰も居なかった。あの勢いに飲み込まれて死んだのだろう。

 ソフィアは、何も気にしないままドワーフ王国に帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ