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私のパパ(魔王)は勇者に討伐されました  作者: 緋谷りん
第1章 囚われた魔王の娘
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決戦 魔狼王

 魔狼王の牙がソフィアに迫る。しかしソフィアは、真横に転がって回避する。更にそのまま木をへし折ってぶつけた。

 魔狼王も木を避けるために真上に飛び、ソフィアに噛みつきに向かう。寸前で感知して近くにある木を引き抜き投げつけた。

 見事に飛んできた木を蹴りつけて防御した魔狼王。そして魔狼王は自身が生み出した黒炎で包み込んだ。



「アシュバ、あれはなに!?」


「黒炎狼に変貌します! 魔狼王の【権能】の一つに別の魔狼に変質する事です! 条件は分かりません!」



 魔狼王の大口から黒炎の塊が見えた。

 そのまま飛び出してきた複数の黒炎。

 一つ一つが重たく熱い炎にソフィアは姿勢を崩しながら回避を続ける。しかし、一発だけソフィアの肩を掠めた。

 すぐに火を消そうと肩を叩くが弱まる気配が無い。



「その炎は、魔法です! 術者の命令がない限り消えません!」


「早く言ってよ!」



 このまま燃え広がると血の気が引いたソフィアに魔狼王が激突して来た。再び吹き飛ばされるソフィアにアシュバの悲鳴が届く。


 ソフィアを吹き飛ばした魔狼王は追撃をするために駆け抜けてた。

 木に激突した瞬間、魔狼王は更にソフィアにぶつかった。


 木と魔狼王に挟まれて骨が軋む音が……聞こえては来なかった。

 【竜皇気】は魔王の中でも強固な防御力を持つ。そして本来の使用方法はそれだけではない。

 押し付けてくる魔狼王をはたき落とした。


 そのまま地面に叩きつけられた魔狼王は、胃液を吐き出す。しかし、大きなダメージになってないのか直ぐに立ち上がり、距離を取った。



「炎を食らってたまるか!」



 今だに燃えている肩を思いながら距離を詰めたソフィア。



「【権能解放】」



 幼い女の子の声が聞こえたが、ソフィアは空耳だろうと思い無視した。



「これなら!」



 そして一瞬にして距離を詰めたと思ったが目の前には真っ暗闇が広がった。

 新たな魔法と考えたソフィアが防御の姿勢を取るが何も来ない。それどころか、夜目も効かないほどの暗闇が広がる。



「え、魔狼王は」



 先ほどまで尋常じゃない殺気を肌に感じていたのに今は何も感じていない。この異様な様にソフィアは辺りを見渡すが暗闇が強くて見えない。



「目を封じられた?」



 考え付くのは何かしらの魔法で幻覚を見せられている。そう言った方法の目潰しを食らっている可能性があるけども——【竜皇気】はある程度の対魔法防御力がある。


 突破してくるという事は、ソフィアの力を越える幻術になってしまう。対処の方法はなく、仮にアシュバの姿をした魔狼王が出てきたら【竜皇気】を解いてしまうかもしれない。

 慎重になり始めたソフィアだが、何もやってこない。



「もう何かしてきてよ!」



 腹が立って仕方ないソフィアは、全力で真上に跳んだ。

 幻覚ならば葉にぶつかって墜落する。そうすればこの場が暗黒宮という証明が出来ると踏んだからだ。



「当たった! ——ん?」



 けれども、ソフィアが感じた感触は柔らかくて粘着質だった。

 幻覚を知らないソフィアはそんな物かと思いながら何回も上へ跳んだり、思いっきり真下を殴りつけたりした。すると、叫び声が聞こえた。



「ウ”ォオオ!」



 痛みを訴える声と共にソフィアは、抵抗が出来ない程のとても強い風に押し出された。



「ソフィア様、ご無事でしたか!」



 アシュバが駆け寄ってきたから拳を構えるソフィア。



「そ、ソフィア様?」


「これも幻覚ね! さあどこからでもかかってきなさい!」



 拳を何回も突き出すソフィアにアシュバは叫ぶ。



「後ろですソフィア様!」


「騙され…… ん!」



 真後ろから黒炎が飛んでくる。

 分厚い炎の壁がソフィアとアシュバを襲った。


 このまま焼け死んでしまう。

 そう思わせてくる程の熱量。なのに、ソフィアはアシュバの盾になっていた。



「そ、ソフィア様! 何をしてるのですか!」


「私は大丈夫だから早く逃げて!」


「ですが!」



 熱い、痛い、熱い、熱い熱い。

 ソフィアの【竜皇気】を抜けて肌を焼いてくる感覚があった。だけども、ソフィアは仲間となってくれるアシュバを見捨てることが出来なかった。



「アシュバ、行きなさい」


「嫌です! それなら私も死にます!」


「だめ! 私は死なないから早く!」


「それなら……」



 アシュバは、何か思いついたのか、ソフィアに向かって叫んできた。



「気休めですがソフィア様!【洗脳魔法・誘惑】『ソフィア様の本気はこれからです!』」


 ソフィアは轟音となって聞こえてくる炎を超えてアシュバの声が届く。身体を優しく包み込んだ新しい力を感じる。直感的にアシュバが強化魔法を掛けてくれた。その気持ちだけでソフィアは、業火を前にしても進み出せる。


 進んでくるソフィアに恐れた魔狼王が出力を上げる。しかし、ソフィアの肌を焼いても決して止まらない。

 ついに目の前に来たソフィアに魔狼王は飛び込むように襲った。だが、攻撃を間違えた。



「その技は見飽きた」



 魔狼王の攻撃を真横に避けたソフィアは、そのまま本気で蹴り上げた。


 真上へ飛ばされた魔狼王に向かって跳ぶ。

 拳を突き上げて思いっきり魔狼王の腹を殴りつけた。



「これでどうだ!」


「グゥオブァ!」



 天井の葉に押し込まれる程強く殴られた魔狼王は、白目を向いて気絶した。

 先に着地したソフィアは、落ちてくる魔狼王を捕まえると地面に寝かせる。

 黒炎が消えているのに気がついた。魔狼王が気絶したからだろう。



「ご無事ですかソフィア様!」


「だ、大丈夫……」



 ——と言い掛けたソフィアは、身体が揺らぐ。



「……じゃない」



 そして眠るように倒れこんだ。



「そ、ソフィア様ああああああ!」

次の更新は明日!

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