ソフィア次第
ソフィアは、気絶してしまったノームを部屋まで運んでベッドで眠らせていた。
すぐに目を覚ますと思ったが、全然目を覚まさないから心配になって名前を呼ぶ。
「ノーム!」
ノームの肩を強く叩いていた。もちろん、【竜皇気】は解除してある。もし解除してなければ、ノームの肩は爆ぜているだろう。
「目を覚ましてノーム!」
ソフィアの弱めパンチを食らった結果、ノームは宮廷外まで突き飛ばされてしまった。やはり、本気にしなくて良かったと心の底から思っている。
もう何度も叩きつけられているノームの姿は見たくない。
「ノーム! おーい!」
「クゥ……」
「私だって手加減したよ!」
ズーズンがなんて言っているか普段は分からないけども、今は分かる。
ズーズンは「考えれば分かるでしょ……」と言っていると思う。
そう思ったソフィアは少しだけ笑いが込み上げて来てしまった。
「ふふ……」
「……ソフィア?」
ノームが目を覚ました。
瞳は、キョロキョロと周りを見ているが、どうしても焦点が合わない。
どこか一点を見ていると思ったら、また周りを見始めてしまった。
「だ、大丈夫?」
「う、うん……」
ソフィアの強さを理解したのか、どうなのかは分からないがノームは酷く汗を掻いていた。
「ここは?」
やっと焦点が合ったノームと視線が合う。どうにか体調は戻ったと安心したソフィアは、ノームに水を渡す。
「ノームのお部屋だよ 気絶しちゃったから勝手に運んじゃった……ごめんなさい」
ソフィアは今にも泣き出してしまいそうな顔でノームに謝る。やっぱり【竜皇気】は使うべきでは無かった。ああなる未来はソフィアも分かっていたのに、意地になってしまった。
絶対に強い所を見せてやるという意地を張ってしまったから、こうなってしまった。猛省すべきだ。
「大丈夫だよ。まさか、 あれを超えるなんて」
ノームは乾いた笑い声を上げている。その声は、最初に会った時の笑い声とは全然違う。
その変わりようにソフィアはオロオロしてしまう。やっぱり自分の力は異様だと再認識させられた。
「ソフィアの強さは分かったよ」
ノームの声はとても優しくなっていた。まさに子供を褒める親のような雰囲気を思わせた。だけども、今もその雰囲気のままだと、嫌な気配を感じてしまった。
「だけども、ソフィアを戦地には連れていけない」
「な、どうしてよ!」
やはりこうなってしまった。ノームは、ソフィアを、子供だと思っている節がある。もう13歳になるというのに、庇護下にしようとしている。
その気配りがソフィアは嫌だった。
「どうしてもないよ。ソフィアはまだ幼いんだから無理する必要はない」
「そんなの理由にならないよ!」
「ダメ。幼い子が無駄に命を捨てる必要はないの!」
ノームの言い分は当たり前だった。ソフィアとノームは7歳も違う。そうなれば守ろうとするのは当たり前なのだが、この一ヶ月半でソフィアの考えは大きく変わっている。
自分の力が少しでも役に立つならば使うべき……その考えが強くなっているソフィアは絶対に使いたい、ノームの手助けになりたい、そう考えていた。
「気持ちはありがとうね、ソフィア。今日はもう遅いから休んで」
そうノームに会話を打ち切られてしまった。ソフィアは助けられた恩もあるが、同時に部外者でもある。だから、今日は従うことにした。
「……うん、どうすればいいの?」
「ソフィアの部屋は右隣を使って。もう準備は終わっていると思うから」
「分かったよ、おやすみノーム」
「うん、おやすみソフィア」
これだけの会話を終わらせたソフィアは、ズーズンを抱っこして部屋を出て、すぐ右隣の部屋に入った。
部屋の造りは、ノームのと似ている。けれども、装飾の品々はどうしても劣ってしまう。こればっかりは仕方ない。
ソフィアは綺麗に整えられたベッドに倒れ込むように寝転んだ。
今までの疲れがドッと出て来た。このまま瞼を閉じれば寝てしまいそうな気はする。けれども、ノームを考えてしまって眠れない。
ソフィアは、心中に矛盾を感じていた。
「ねえ、ズーズン。私はどうすればいいのかな?」
ソフィアの隣で丸くなって寝ようとしているズーズンに話しかけてが、当然、返事は来ない。だけども、ズーズンが近づいて来て顔を舐めてくる。
それだけの行為だけども、ソフィアは安らいだ。どうしてズーズンにはこんなにも魅惑的な癒しがあるのだろうか。ソフィアは、ズーズンの頭を撫でた。
気が付いた時には、ズーズンのお陰もあって瞼が上がらなくなって来てしまった。このまま気絶するように眠るのだろう。そう感じた時、ふと声が聞こえた。
「ソフィア様しだいです」
どこかで聞いた覚えがある声。
声は童女で、可愛らしい声。
もう開ける事が出来ない瞼。
声は、ソフィアの頭の中から響いた気がしてきた。
ソフィアは、夢がもう始まった……声に導かれるまま眠った。
★★★★★
ソフィアが眠ってから、数分後。
布団の中から、ズーズンは顔を出した。
先程は、もう眠っていると思って声を出したが起きていてヒヤヒヤした。
人型ではないズーズンは、人語の時に声を張る事が出来ない。いや、その方がソフィアに気が付かれないから都合が良い。
本当は、真なる姿を見せてソフィアの手助けをするべきだが、今は叶わない。
もし真なる姿に常時成れたとしても、ズーズンは……子犬のまま過ごすかもしれない。
この姿の方がソフィアは気に入っているからだった。
(むかしと、かわってませんな)
昔と見た目は少しだけ違う。けれども、ソフィアはずっとソフィアのままだと知って安心した。
「よは、どこまでも、どこまでも、ソフィアさまについていきますよ……」
ソフィアの頬に肉球を押し付ける。とても柔らかい頬をしている。
そのままソフィアの頭を数回だけ撫でるとズーズンは、満足して眠ることにした。
次の更新は明日!




