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土龍

ノーム目線!


 ノームは、ソフィアの言葉を聞いてもニッコリと微笑んで誤魔化す。



「本当に思ってないでしょっ!」



 ソフィアの言葉にノームは、思う。

 こんなにも小さな手で、こんなにも小柄な身体で強い筈がない。


 確かに窓から飛び降りて着地していたが、”魔族”ならばそのくらいの膂力は持っていて当たり前。だけども、相手は三大人災である剣聖なのだから、ソフィアが窓から飛び降りられるくらいでは居ても変わらない。


 そもそも飛び降りるくらいならばノームにだって出来る。むしろ、簡単なくらいだった。



(ソフィアの気持ちは嬉しいけども……絶対に竜族のお姫様だよね……そんな御方に怪我とか負わせた日には……)



 ソフィアが王族だと気が付いたのは、ドレスがドワーフの最新技術をふんだんに使い、魔術では無く複数の魔法を込めた国宝に匹敵する代物だったから、引っかかった。


 そこからバーニック陛下の話をしたところ、異様な雰囲気を身に纏った。



(けれども……陛下は、独り身だよね?)



 ノームはソフィアという娘が居るとは知らなかった。これが他の魔族の王だったら、半魔を差別的に扱うから言わないということもあるだろう。実際にノームの代役であるアングラは、何度もそういう目にあった。



 陛下はどうだろうか。



 答えは違う。

 陛下は、真摯に半魔を思い、誰かの為に手を差し伸ばせる人物。

 今は、どう過ごしているのか二ヶ月以上は連絡を取っていないから分からない。だけども、半魔に対して慈善活動をしているのは間違いない。



 性格から考えてもソフィアの事を言わないなんて考えられるだろう。いや、考えられない。



 それならば目の前にいる少女は何者か……。



 ノームの中でグルグルと思考が巡る。

 もしあのドレスを身につけていなければ、”竜族”と気が付かなかった。そもそもあのドレスは、ドワーフの誰が作ったのか。


 謎は多い。


 まさにソフィアの存在は、触れてはいけない箱に触れてしまった様に思える。



(あんな国宝級を誰が……もしかして)



 ノームは二人浮かんだが、すぐに有り得ないと考えを改めた。



「ねえ、ノーム聞いているの?」


「あ、ごめんなさい!」



 ソフィアを考えていたら、更に頬を膨らませて怒っているソフィアの姿が目に入ってきた。その仕草があまりにも可愛くてギュッとしたくなってしまうが我慢する。



「私は、ずっと強いんだから!」


「本当に言っているの?」



 あまりにも大きな自信にノームは、苦笑いになってしまう。やはりあの細い腕に力があるとは思えない。もしかしたら”竜族”だから、尋常じゃない力を持っているかもしれないが、筋肉だらけだった陛下に比べたら……どうしようも出来ないだろうと浮かぶ。


 そもそもソフィアの膂力がどれだけあっても、陛下の全力を”人型”で耐え切ったノームには、ソフィアのパンチを耐えられる自信がある。



(そうだな……一撃貰って諦めてもらおうかな)



 そう思いついたノームは、立ち上がってソフィアに挑発した。



「じゃあさ! ソフィアの本気を見せてよ!」


「え……?」



 やはりソフィアは、少しだけ引き気味になっていた。あれだけの自信があっても、いざ見せてと言われたら……誰だってその顔になる。



「ここだといけないから……宮廷の裏に近衛兵の訓練場があるからそこでいい?」


「う、うん。ノームが良いなら……」


「キャンキャンキャン!」



 ノームの足元にズーズンが足をかけて言ってくる。きっと主人の恥を見せない為に必死に抗議しているのだろう。たまに巨大化するけども、そこが可愛い。


 ソフィアに回収されたズーズンを見て、ノームは率先して誘導する。





 ノームが先頭で歩いて五分ほど、屋外にある訓練場が見えた。近衛兵たちが訓練を終えた後なのか、そこには誰も居なかった。



「ちょうど良いね。じゃあソフィア、本気で殴ってみて!」



 ソフィアがモジモジしている。この状況下で本気で殴ってこいと言われても誰も殴ろうとはしない。それは陛下も同じだった。


 そう思っていたノームは、ニッコリと笑いながら言葉にする。



「大丈夫だよ、バーニック殿下の拳に耐えられるほど強いんだから!」


「ほんとうに?」



 少しばかりか弱々しい声でソフィアは言ってくる。ちょっとイタズラが過ぎたかな……と考えた矢先、ソフィアは顔を上げて明るい表情をしていた。



「うん、わかった! どうなっても知らないからね!」



 どうなる事もない。そうノームが考えた時、ソフィアは構え出す。

 ソフィアの構え方は我流なのか、おかしい点が一杯ある。


 腰は全然捻られていないし、脚の重心はブレブレ。何よりも手に意識が向かい過ぎているから、あれでは手打ちという弱いパンチしか出来ない。


 見ただけで力量が分かる。そう思った時、空気がガラリと変わった。急いでソフィアの顔を見る。



 瞬間、ソフィアの瞳孔が輝いてみえたのだ。



 瞬きを繰り返して見直すとそんな事はない。何かの見間違いだと思って、ノームはソフィアが撃ち込みやすいだろう場所まで移動する。



「いつでもいいよ!」


「うん!」




 ソフィアの拳が放たれる。

 そう直感した時、ノームはまだ家族が生きていた頃を思い出した。



 ★★★★★



 ノームが五歳の時に、いつの間にか父親と母親は居なくなっていた。どこに消えたのかわからず、住んでいた地上の村を何度も走り回って探した。だけども、見つからなかった。

 泣きながら家に帰ると、アングラが待っていた。あの時は、一度も会った事がない……ドワーフだった。


 そもそもアングラだけは見た事がある。けれどもそれは、凱旋などで王様と民衆という関係で見ていて、ノームが一方的に知っていただけだった。


 だから、ノームはアングラが家に居て——跪いたのを覚えている。今、思えばあの日からノームの人生は大きく変わった……。



(あれ!? どうしてうちはこんな思い出を!)



 ソフィアの拳が腹に向かっている時、時間が遅くなって過去を思い出していた。どうしてそうなったか分からないが……これが死に直面した時に見る走馬灯と知っている。



 まだ遅い世界の中で、ノームは……ソフィアの拳を見る。

 後一秒にも満たない速度でノームの腹に突き刺さり、血をぶち撒ける。そう直感が教えてくれた。



 だからこそ、ノームは声高らかに”本当の自分を叫ぶ”。



「【権能解放! 土龍ノーム!】」



 強き”魔族”だけに許された【権能】をノームは解放させた。



 ノームを中心に地面が盛り上がる。そして地面は体に吸い付くように動き出して、身体の形をどんどんと変えていく。


 土は、最終的に大きな蛙のような盛り上がり方になっていた。その土の中から、ノームは足腰に強く力を入れて踏ん張る。


 続けて魔法を発動させた。



「【大地魔法・重力操作!】」



 ノームを中心に強い重力——通常のドワーフが起き上がれない——を掛けた。

 身動きは一切出来ないが、並大抵の威力ならば耐えられる。その状態まで持ってきた——遂にソフィアが放った拳がぶつかる。


 拳は、土に触れた瞬間に軌道が下にズレた。動きに驚いたのかソフィアの目が見開かれる。これによってノームの腹にぶつかる前にソフィアの拳が地面に落ちる。


 そう感じたのは、錯覚だった。

次の更新は明日!

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