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アングラ


「落ち着いた?」



 そっとソフィアから離れて優しくしてくれるノームにソフィアは赤くなった目元を隠す様に顔を向ける。



「うん、ありがとうね」


「ううん、多分だけどもうちのがお姉ちゃんだしね」



 その言葉にソフィアは固まる。

 同じ背丈——ソフィアは同年代の竜人族より小さい——なのに同い年ではない。それよりも年下ですらないとは思いもしなかった。



「ソフィアは、11歳とかでしょ?」


「違いますー! 13歳だもん!」



 ソフィアの言い方が面白かったのか、ノームは笑っていた。頬を膨らませて怒りそうになるソフィア。



「うちは20歳だよ!」


「嘘だ!」



 ソフィアは反射的に言葉を出してしまう。しかし、そういう病気があるのではないかと頭の中を過って両手で口を塞ぐ。



「あれ、ソフィアはドワーフ族を知らないの?」


「……うん、土族は知っているんだけどね」


「あはは! 普通は逆だよ! ドワーフは土族と同じくらいの背丈なんだよ! だから、見掛けに騙されちゃダメだよ〜!」



 嘘じゃないと知ってソフィアは驚愕する。更に、ドワーフ族も土族とほとんど変わらないと聞いて二度驚く。



「え、じゃあ——」


「敬語はなしね。それにソフィアも貴族でしょ? うちも同じだから気にしないで良いよ!」


「ほんとうに?」


「うん!」



 ノームの笑顔にソフィアは心が動かされる。これほどに近い年の女の子と話した事がない。だからこそ、突き動かされる物がある。



「じゃあ宮廷を案内するよ! ついてきて!」



 ——と、ノームが言った瞬間に扉がノックされた。



「ノーム様! ご無事ですか!」


「あ、爺や! うちは大丈夫だから入って——」


「グルゥゥゥゥゥ!」



 老年の男性の声が聞こえてきた。それと同時にズーズンが唸りながらソフィアの目の前に立つ。すぐさま抱っこしたが、同時にズーズンが吠えた。



「また獣を連れてきたんですか! もうノーム様ときたら……ッ!」



 そう言った男性が扉を開けた。

 ノームよりも頭二つくらい背丈が大きいが、短足でずん胴な体型。


 特徴的なのが首元まで伸びた髭とキリッとした瞳が突然、見開かれていた。



「近衛兵! 宮廷内に侵入者だ! すぐさま女と子犬を確保しろ!」



 廊下に向かって叫ぶ男性に、ノームが叫ぶ。



「アングラ! この方々はうちの友達なの、勝手な事はしないで!」


「いけませんノーム様! こればっかりは許される事態ではありません!」



 駆けつけてきた近衛兵の数は十人程度だった。どれも男性だが、アングラと同じ様な体型をしている。


 今までの敵に比べれば弱く見えてしまう。数少ない動作でソフィアは相手の力量を見抜いた。


 ——だが、ここで倒してしまえばノームの恩を仇で返すことになる。



「平気だよノーム。ズーズンも抑えて」



 ソフィアは一歩前に出る。

 無抵抗の印に両手を上げる。さらにズーズンもソフィアの隣に立った。



「どの様な理由があったとしてもノーム様の寝室にいるなど言語道断! どこでノーム様の存在を知ったんだ賊よ」


「違うのアングラ! うちが宮廷を抜け出したら、この方々が倒れていて助けたの!」


「また宮廷を抜け出したのですか! あれだけ宮廷を出ないでくださいとお願いしていたものを! しかし、ノーム様を知られたには生きて返す訳には——」



 アングラが何かを言おうとした瞬間、ノームの雰囲気がガラリと変わった。

 そして一斉にアングラ達が跪くと鎧のガシャン! という音が響き出す。



「うちの事は”何も知らない”。この方々は、うちの友達、いいね」



 まさに王を思わせる雰囲気を身に纏ったノームにアングラは汗を垂らしながら頷いた。



「……で、ですが、どの様な種族など話は……させて貰います」



 アングラが苦しそうに言った言葉を聞いたノームは、ソフィアの方を向いてきた。この言葉の是非をソフィアが決めても良いと提案してきた。



「もちろん——です」



 頷きながら言ったソフィアに、ノームの雰囲気が元に戻る。その瞬間、アングラ達も安心したのか過呼吸気味で呼吸を繰り返していた。



「……では、そちらの女から」



 アングラに言われて答えようとした時、ノームが一歩前に出て勝手に応えた。



「この方には、ソフィアという名前があるの! それに半魔の中でも気高い竜人族なんだから!」


「え、いや、その」



 ソフィアが訂正するよりも早くアングラが頭を下げた。



「——申し訳ありませんでしたソフィア様。まさか竜人族の……それに貴族の方々ではありませんか」



 何を勘違いしたのかアングラは、その様に言ってきた。これを訂正していいのか分からないソフィアは、ノームの方を見るが——ノームはニッコリと笑っている。


 否定しては申し訳ない気がしたソフィアは、頭を上げながら適当に言葉を繋ぐ。



「いえ、気になさらないで下さい。私も、突然の事でして」


「いえいえ、魔竜国の方でしたらドワーフ王国に秘密裏に入国されていたとしても、仮に私が知らない方だとしてもおかしくはありません」



 ドワーフ王国とどの様な関係にあるのか、教えてもらってない——忘れているだけかもしれない——ソフィアは、ニッコリと笑って誤魔化す。



「アングラ、見掛けで判断してはいけないよ! ドワーフ王国は魔竜国があるからこそ、今があるから!」


「ノーム様の言う通りで御座います。一国王であります私めが知らないだけで罰しようとしてしまい申し訳ございませんでした」


「え、国王?」



 ソフィアはつい聞き返してしまった。目の前に跪いているアングラは、国王と言っていた。なら、ノームはどの様な立ち位置なのだろうか。



「え、あ、そのー、表向きは国王なんだよね! まあ色々と複雑で!」



 あははは! と笑いながら説明してくれたノームになるほど! と相槌を打って分かったふりをするソフィア。

 ナーシャに国王の成り立ちなど教えてもらった記憶が——あるかもしれない。



「なるほどね!」



 自信が無いソフィアは、もう一度だけ深く頷いて分かったふりをした。

次の更新はあす!

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