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私のパパ(魔王)は勇者に討伐されました  作者: 緋谷りん
第1章 囚われた魔王の娘
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幕間 日本人・美咲


 今も覚えている。あの日は冬至だった。



 ★★★★★



 私は、日本の長野県市内にある私立咲ヶ崎高等学校に通っている高校二年生。



「遅刻しちゃう、行ってきます!」


「ずく出さないからそうなるの美咲! 気をつけて行くのよー!」



 私こと、野薔薇 美咲は制服にマフラーを身に付けて登校していた。

 肌寒いから、寒さから逃げる様に小走りで駅に向かっていた。



「はぁはぁ……やっと着いた」



 何とか電車が来る前に着いた駅に辿り着いた私は、鞄に入れてある定期入れを手にした。

 そんな時、目の前を一人のお爺ちゃんが歩いて通った。


 この辺のお爺ちゃんなら見たことある筈なのに知らない人。


 そんな印象を持っていると、電車が来たのを知らせてくれる音が鳴り響く。


 私は、改札に居る駅員に定期を見せながら通過しようとした時、警報が鳴った。


 こんな田舎では聴かない大きな音に私はすぐさま警報の方を見た。すると、先程通ったお爺ちゃんが線路に落ちていたのだ。



「あ、まってー!!」



 私は後先、考えずに階段を走り抜けて線路に飛び込む。その瞬間、電車は私の一メートルも無い距離まで来ていた。


 これじゃあ二人まとめて死んでしまう。そう感じた時、お爺ちゃんから声が聞こえた。



「『勇気ある資格者よ』」



 眩い光が訪れた。余りの光に私は目を閉じてしまった。



 ★★★★★



 目を開けると、そこは見たことない景色だった。

 これまでの人生の中で一度も目にした事がない景色に私はポツンとお尻を付いて座っていた。



 先程の電車は、お爺ちゃんは、と辺りを見渡したが、純白しかない。


 人が作り出したとは思えない純白の床に柱、更には真っ白だけども、豪華な印象がある椅子がど真ん中に置かれている。その椅子も大理石から切り抜いて豪華絢爛に装飾品を付けていた。


 かつて世界史で習った古代ギリシア美術を思わせる程——あくまで空想した時——の完璧さがあった。



「先程は助かりました勇者」



 声が後ろから聞こえてきた。振り向くと先程、線路に倒れていたお爺ちゃんが私の方を見ている。

 お爺ちゃんの筈なのに声は女性か、男性か分からない声質をしていて頭がおかしくなりそうだった。



「あ、いえ、そのー」


「自己紹介がまだでしたね。私は、創造神にして知識神、主神、他には大賢者と呼ばれている……そうですね、今はシャルルと呼んでください」



 私は現実から置いていかれた。いや、ここは夢だと思った瞬間、シャルルの顔と背丈が変わっていた。


 美男にも美女にも見えてしまう程の美形になっていた。更にスレンダーなのに、白いローブを全身に身にまとっている。髪は白くて全体的にミステリアスな印象を与えてくる。



「えっー、とその、神様ってことですか?」


「貴女の住む地球のじゃないですがね——所で、美咲さんは世界救済に興味はありませんか?」



 唐突な話に私は驚いてしまった。これが現実だったら即座に否定をして帰っている所だけども……現実では無さそう。



「……興味はあります」


「それなら話が速いです! どうか私の世界を救ってはくれませんか?」


「せ、世界ですか? 国ではなくて」



 シャルルの言葉に私はまたしても驚く。大体、こういう話は私の国を救って欲しいと相場が決まっているのにスケールがあまりにもデカい。



「だって私は神ですよ。国一つを救っても、また生まれてくる魔族によって蹂躙されてしまいます」


「……やっぱり異世界転移ってやつですか?」



 私の少なくない本棚に異世界転移のジャンルがある。きっとシャルルは、同じ様な事を話しているに違いない。


 だけども、自分がその立場になると家族のことや友人のこと、更には最期の自分について考えてしまう。



「大丈夫ですよ。ここで死んだ場合、貴女の肉体は無傷で自宅に返します。更に必要でしたら記憶は消去して、時間も今朝……そうですね、ベッドの上に戻しますので何も問題はありません」


「ほ、本当に信じても良いんですか?」



 先程までにこやかだったシャルルの顔色が……変わった。



「信用しろとは言いません。しかし、現状を知って欲しいのです」



 シャルルは、どこからか水晶を取り出してふわりと投げた。

 空中で止まった水晶から光が放たれると私の前にスクリーンを作り出す。



「そんな……」



 そこに流されたのは、村を焼かれて逃げ惑う人。獣に噛みちぎられて倒れている人。泣き喚く赤子に剣が突き立てる角が生えた人。


 あまりにも惨い映像が延々と流れている。私が気持ち悪くなってしまった所で映像が止まった。



「衝撃的な場面をお見せしましたね……ですが、あれはほんの一部です」


「魔族はこんな事を……」


「はい、魔族を率いている大悪魔アハバ・イシュアは、あまりにも残酷な報いを……最初は小さな洞穴から始まりましたが、今は世界の八分の一を占領しています」



 私は、手で口を押えた。

 あまりにも酷い現状に、私の中でフツフツと怒りが湧いてくる。



「……私が、手助けになるなら、頑張ります!」


「ほ、ほんとうですか!」


「はい! ……でも、何ができるか分かりませんが」



 私は精一杯の笑顔を向けてシャルルに答えた。すると、シャルルは大いに喜び両手を広げてこう言った。



「ありがとう勇者・美咲! これでこの世界は救われるでしょう! 貴女に光竜の加護を!」


「はい!」





 ★★★★★





 美咲が居なくなった主神の間に訪れたキグレは嘲笑していた。



「あれが未来の日本人とは思えんのう!」


「そうですか?」


「何も疑わないとは、間抜けでしかないじゃろ!」


「異世界人なんてそのくらいの知能しか無いでしょう。まあ良いのです。これでまた暇潰しが出来ますから」



 あまりにも美形だが、その笑顔が恐怖を与える。

 それに対してキグレは大きく笑う。そしてシャルル——繧キ繝」繝ォ繝ォの方を見た。



「魔竜王を殺したぞ」


「——ほう、よくやりましたキグレ」


「褒美として、あの国を傀儡にしたいのじゃが良いかのう?」


「問題ありませんよ。貴方の力で上手く操ってください」


「じゃ」



 キグレは挑発的な目で繧キ繝」繝ォ繝ォを見ていたが一向に攻撃する気配はなかった。その事についてため息を吐くと繧キ繝」繝ォ繝ォが話しかけてきた。



「それで竜族は絶滅ですか?」


「”もちろん”」



 キグレも自分の暇潰しの為に、真実を言わない。



「分かりました。では、あの人間の育成は任せます。貴方と同じ光竜の肉体を与えましたので」


「じゃー」



 適当に返事をしたキグレは、へカトルと用事が会ったのを思い出して退室した。

今回、シャルル改め主神の名前が出ないのは……本編で書きます!


これにて完全に第1章が終了です!明日から第2章なのでぜひ!

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