決戦4
光は、横一線に伸びる。明らかに振った幅よりも巨大な斬撃がソフィアに直撃する。
続けて光の後に闇が三つに拡散して、虚無を生み出し穿つ。
本来ならば何も見えない斬撃にソフィアは——目を瞑るまで無かった。単なる小雨程度にしか感じないソフィアは、何も気にせずゴガガの牙を掴む。
「離せ!」
ソフィアは力を込める。どれだけゴガガが暴れても離せないようにそこそこの力を込めている。
ドゥクスによく似た顔。
ドゥクスの子供か兄弟か、血筋を思わせる顔を見てソフィアはそっと顔を触った。
「亡霊め! 裏切った私が憎いのか! 私のせいで獣族が滅亡したと言うつもりか!」
ゴガガは声を張る。
獰猛に声を張り上げているが、意識を感じない。
何かに囚われているとしか感じないソフィアの視界の隅に暗い何かが見えた。
唐突な何かに力を緩めたソフィア。
その瞬間にゴガガは抜け出し、何かの方に近寄る。
「ガビー形態の精神不安定を確認しました」
何かが話し出した。そして何かはゴガガの周りを包み込む。
「ガビーの魂を代償に、木龍の限定召喚を行います」
「代償だって!?」
ソフィアは止めようとしたがゴガガの方が速く動いていた。
地面から根が突き出してきて、ゴガガに突き刺さっていく。その衝撃は凄まじくソフィアは吹き飛ばされた。
ソフィアはすぐさま戦っていた場所を見ていた。そこには木によって形作られた龍が顕現していた。
そもそも龍が何か分からないソフィアは、大きなトカゲ程度に思っていた時、天井から枝が叩きつけられた。
地面に叩きつけられた。だけども、ソフィアは気にせず起き上がる。
枝に襲われたのが久しぶりだったので空を見た。すると、巨木の方のゴガガが崩壊を始めている。
「なにが——」
いや、崩壊をしているのではなく、その全ての木々がガビーを名乗っていたゴガガに集中している。
「木龍の限定召喚に成功しました。対象”竜”の殺害に移ります」
声がどこからか響いた時、ソフィアの目の前にゴガガが現れた。大きさも変化していて魔狼王となったズーズンよりもふた回り大きい。
圧倒的な威圧感が生まれているゴガガに、ソフィアは少しだけ下がりそうになったが堪える。
今まで感じていた緊張感とは違う物が流れている。どこかで聞いた事のある龍という響きが違和感となって怖気付こうとさせているのかもしれない。
「だけども、まだ……」
ソフィアは魔猪の姿から龍に切り替わったゴガガに向かって飛び込む。拳を向けて突撃するとゴガガの手とぶつかり合う。
手も、木で作られているが鋭利な爪を持っている。
どうにかしてガビーから何があったのか聞きたいソフィアは手に力を入れる。
森の中を衝撃が走り抜ける。ソフィアが一瞬だけ後ろに押されてしまったが足元に力を入れて押し返す。
ゴガガも少しだけ押されているが、根が飛び出して後押しをしている。
ソフィアの手に一気に重量が掛かった。どうにかして支えているソフィアの目の前に葉が通る。
無数の葉がソフィアの注意を逸らしたり、視界を防ごうとしたりと動きを妨げようとしていた。
無詠唱の魔法だと気が付いたソフィアは、急に手を離して跳んだ。
勢いが残っていたゴガガはそのまま倒れてしまう。垂直に跳んでいたソフィアは落ちてくる時に足先を向けた。
ゴガガを支えている根を蹴りで切断すると勢いが余り地面が割れた。
声が響かないということは大きな損傷を与えられていないということになる。
すぐさま理解したソフィアは、体勢を変えて拳を構える。
すかさず三発だけ殴った。
風を殺す音を鳴らしながら迫る拳の間にガガが挟まる。
「悪いやつ……め」
ガガ達はゴガガの枝に突き刺さって盾にさせられている。何匹かはそのまま養分にさせられていて干からびている。
一瞬で粉砕されたガガの破片がゴガガに触れる。表面に触れるとそのまま吸収されていった。
ソフィアは、更に拳を振るう。しかし、その全てが様々な方法で防がれた。
地面から突き出してきた根や盾とさせられたガガ、それに空を覆っている枝。
ゴガガの持てる手段でソフィアの攻撃を防ぎ続けている。その様子を見てソフィアは更に速度を上げた。
ゴガガも形態を変え始めた。
大トカゲみたいな形だったのだが、背中の部分に枝が生え始めている。孔雀の羽のようになった枝が一斉にソフィアに向かった。
ソフィアの連撃も枝で防ぐゴガガに、ソフィアは一撃だけ強めに出した。
「これでも喰らって!」
力を込められた一撃が枝に触れた時、粉々に粉砕される。更にそのヒビ割れは連鎖的に繋がっていき、ゴガガを揺らした。
すぐに後ろに下がったゴガガは、生えていた枝を切り捨ててガガ達に根を突き刺す。そして養分として回復に成功していた。
これでは本当に暗黒宮そのものを倒さないと勝てないと悟ったソフィアは一瞬だけ本気でゴガガの元に走った。
一秒も掛からない速度で辿り着く。
「竜、見失い……発見しま——」
ソフィアの速度に追いつけないゴガガは少しだけ見失ってしまったが、獰猛な牙を見せながら食らいつこうとしてきた。だが、ソフィアは気にせず垂直に蹴り上げた。
蹴り上げた感触が、巨木のゴガガと同じだけの重量に感じる。あれだけの巨体をこれに押し込んだと思うとソフィアは恐れてしまうが——今は蹴ることだけに専念した。
「いけえええ!」
凄まじい重さにも負けずにソフィアは、一気に蹴り飛ばす。真上に飛ばされたゴガガに向かってソフィアは跳んだ。
天井に叩きつけれたかと思ったが、ゴガガはどうにかして命令を出したらしく枝が包み込む。その隙を狙ったソフィアは、天井にぶつかる勢いで殴りつけようとした。
「まだ私は貴女に話があるの!」
どうにかして気絶などで対処できないか考えたソフィアは、無意識に力を制御した。その瞬間、枝に飲み込まれていくようにゴガガは消える。
「損傷50%を超えました」
ソフィアは急いで枝を殴りつけた。だが、凄まじい音を立てるだけで一切壊れない。どれだけの力を込めても壊れない天井。
このまま逃げられでもしたら……。
ソフィアの中で嫌な気持ちが充満し始めた時、とても遠くで音が聞こえた。
その音は何かが落ちる音。
もし【竜皇気】を纏っていなければ聞き取れない少量の音にソフィアは気が付いたのだ。
「も、もしかして!」
その音が聞こえた先は……アシュバ達が待っている焼け焦げた広場だった。
龍と竜は明確に違います。詳細は本編に書きますのでいずれ




