表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のパパ(魔王)は勇者に討伐されました  作者: 緋谷りん
第1章 囚われた魔王の娘
21/162

絶対的な決意

 ドゥクスは【権能】を解除した。

 本来の力を解放するだけで疲労が蓄積してしまうからだ。【権能】を使う魔族の宿命であり、不可避の理になる。


 ドゥクスは幹へ向き直した。


「魔猪王・標的固定。【森林魔法・葉狂い】」


 突如、無数の葉が飛んできた。ドゥクスは躱そうとしたが空を覆い尽くす葉が迫り、避けようが無い。

 そう判断して、すぐさま魔法を行使する。


「【土魔法・土矢】」


 土で作られた矢が葉を射抜いていく。その際にゴガガに触れない繊細さを持っていた。だが、葉の数は膨大であり防ぎ切れない。


「避ケ切レヌカ!」


 根から飛び降りて身を捻りながら回避するドゥクスは、魔法を展開させる。


「【土魔法・土波!】」


 ゴガガを狙わず、ガガ達だけを飲み込んだ。

 その際に土砂が魔猪を飲み込まないように調整されている。


「ガガの補給を開始します。供給率は50%を超えました」


 ガガが降ってくる。しかも、先ほど放たれた魔法がまだ顕現しているというのは驚愕しか出来ない。

 膨大な魔力にドゥクスは足腰に力を溜めて気合を入れた。



「ココカラダゾ!」



 魔猪達に声を掛け、距離を調整しながらガガを減らす。

 これもドゥクスが考えていた作戦の一部。


「配下ヲ生ミ出スニハ体力ヲ使ウ! 少シデモ減少サセルノダ!」


 魔猪達はガガと戦い続け、消耗させていく。そしてドゥクスは隙があれば本体を【権能】で削る。


 伐採まではいかないとしても——。


(ソフィア様ガ消耗シナイデ済ム)


 ドゥクスは完全に死ぬ気で戦っている。

 そもそも自分がゴガガに勝てるなど一度も思っていなかった。

 これでソフィアが少しだけでも簡単にゴガガを倒せれば……という思いで戦っている。


 自分は生贄。


 そう考え、また別のことを考える。



「ブギイイイイイ!」



 後ろで悲鳴がした。

 1匹の魔猪が細かい葉に襲われている。

 ドゥクスが助ける暇もなく、全身を葉で覆われていた魔猪は地面に落ちた。


 そして緑だった葉は真っ赤に染まって地面に溶ける。

 そこに残っていた魔猪は血で塗られていて、所々から骨が見えていた。


 出血によるショック死。

 これだけ無惨に殺す惨状に屈辱と怒りがふつふつと再熱してきた。



「ナゼダ」



 100年戦ってきた。

 長い時を戦い続けてきたのに、ドゥクスは一度も勝てると思わなかった。

 いや、まだ退化する前だったら勝てたのに……今は致命傷を与えることすら難しい。


「ナゼ、オ前ハ全テヲ忘レテシマッタノダ」


 100年前から問いかけてきた言葉をかける。しかし、ゴガガは反応することなくただ魔猪を殺そうと動いている。


 怒りはずっと沸いていた。

 屈辱はずっと残っていた。


 けれども、この感情をゴガガにぶつけるのはお門違いだと知っていた。

 確かにこれまで多くの魔猪を殺してきたが、それはゴガガが望んで行なっていたのか。


 それは違う。


 ゴガガを創り出す場面を見たのだから断言が出来る。


 だが、現実は100年が経ってしまった。もうドゥクスがそう思いたいだけなのは分かっていた。



「我ハ……大切ナ存在ヲ失ッテシマッタ」



 前世のソフィアを失い、当時の家族はゴガガに殺された。

 ドゥクスにとってこれほど無い屈辱。だが、100年の時を経てやっと返上する機会を与えられた。


 ソフィアがやってきた。

 ソフィアはここを出たいと思っている。

 ソフィアには復讐したい相手がいる。


 ——ならば、ドゥクスが、今回こそゴガガを冥界に送り、ソフィアを空が見える世界に返す。


 そうするしかない。


 その想いだけでドゥクスはこの場に立つ。



「多クノ仲間ガ死ンダ」


 ドゥクスはここに来たばかりの頃を思い出す。まだ一万の魔猪達が住んでいたあの日の事を。


「モウ我ハ引キ返セヌ!」


 葉がドゥクスの目の前まで迫ってきた。だが、その場で跳んで回転する。

 葉はドゥクスの身体に付こうとするが、高速で回転しているから付くことが出来ない。


 更に地面に降りた瞬間、無詠唱した魔法を発動させた。無詠唱のせいで威力は弱まるが時間がもったいない。


 土で作られた矢が次々と葉を落としていく。けれども、何枚かはドゥクスにたどり着こうとしていた。

 

 一歩だけ下がると次の魔法を発動させる。


 無詠唱の【土波】が葉は飲み込みながら消し去っていく。


「魔法を感知しました。吸収に成功しました」


 しかし、乱戦に近い状態で放たれた魔法はゴガガの根に触れた。その瞬間、僅かだがゴガガは体力の回復に成功する。


 その僅かも魔猪にとっては大きな回復になってしまう。


 ドゥクスは歯を食いしばり、走り出した。

 乱舞する葉を少ない動きで回避しつつ、離れてしまったゴガガに近く。


 その時、目の端で捉えた。

 細かい枝が鞭のようにドゥクスに向かってきていたのを。


 どうにかして避けようにも周りは葉に囲まれていて避けようがない。


「使ウシカナイカ【土魔法・潜土!】」


 魔法によって踏んでいた地面が水のようになった。一瞬にして地中に潜ったドゥクスは全てを回避する。



「……コンナニモカ」



 魔法によって地中は透き通った水のように見える。そこでドゥクスが目にしたのは、毛細血管の如く広がったゴガガの根だった。


 ドゥクスにとってこの魔法は圧倒的な偵察力と破壊力を生む。しかし、魔法に対して完全な耐性・回復能力を持つゴガガに使えばどうなるか分からないと判断して使わなかった。


 だが、今になって思う。


 もっと早くから偵察していれば正確な戦力を理解が出来ていた。

 天を覆う葉に山を思わせる根——それだけだと思っていたが、今目に映っているのは。


(海ノ様ニ広ガル根カ)


 ドゥクスの眼前にも根がある。たまたま潜った場所が拓けていただけだったから良かったが、これが根に触れていたと考えると……生き埋めになっていた。


 この光景は絶望でしかない。しかし、ドゥクスは恐怖していなかった。更に広がった戦力差でも、ドゥクスには成し遂げないといけない使命がある。


 ただそれだけなのに、ドゥクスは鼓舞できる。


 ——今度こそソフィアの為ならばと。

雨と猛暑で死にかけです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ