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私のパパ(魔王)は勇者に討伐されました  作者: 緋谷りん
第1章 囚われた魔王の娘
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決戦 魔猪王

 魔猪王は、一気に飛び出した。

 見た目とは違い、機敏な動きをしながらソフィアに突進してきた。

 ソフィアはすぐさま躱そうと考えたが、同じ動きでは先程と同じ結果になるのではないかと考えた。


 そこで——。



「全て受け切ってみせる」


「蛮勇ダッタカ人間」



 牙を剥き出しにして突進してくる魔猪王の狙いは串刺しだろう。見た目は幼い女でも猛烈に迫る突進に加減は見えない。そして遂に衝突した。


 壮大な音が森を揺らす。

 衝撃も走り抜け、周辺の木を揺らした。



「ナ、ナゼ」



 ただそれだけの攻撃ではソフィアの【竜皇気】を超えて攻撃を与えるには力が足りなかった。

 ズーズンの時から効率や加減、更には出力を考えられるようになったソフィアにとってこのくらいの突進は細やかな風と変わらない。


 魔猪王の牙を掴むとそのまま強く力を入れていく。このままへし折ってしまいそうな雰囲気を纏わせていた。



「私は戦いに来た訳じゃない。先ほどの失言を取り消せば許す」



 戦いには来ていない。だけども、この世で一番嫌いな人間族と言われたソフィアはそこまで寛大ではない。



「【土魔法・土槍!】」



 足元の土が一瞬で槍の形状になってソフィアにぶつかった。けれども、ソフィアを傷付けるのは不可能でドレスすらも破けない。



「そう、それが答えなの」



 ソフィアは手に力を入れる。じわじわと力を込めていくと牙が軋み始めた。



「ナンナンダオマエハ!」



 声を荒げながら土魔法を放ったり、身体を捻って逃げようしたりしているがソフィアの握力から逃げられない。



「【土魔法・土剣!】」



 刃を持った巨大な土が頭にぶつかるが無意味。



「【土魔法・土槌!】」



 巨大な土の塊が落ちてきたがこれも無意味。



「マサカ」



 魔猪王は、ソフィアこそ決して触れてはいけない災害だと気がついた表情をしていた。だが、時はもう遅くソフィアは怒り、手には力が込められている。牙ごと魔猪王は持ち上げられた。



「ナ、何ヲスル気ダ!」



 突然、持ち上げられた魔猪王は困惑していたがソフィアの手が真下へ行く。



「誇り高き竜族を人間と言ったこと大いに反省しなさい!」



 勢いをつけて魔猪王は地面に叩きつけられた。

 先ほどの衝撃よりも凄まじい音が暗黒宮に轟く。

 あまりの衝撃に何匹か魔猪が穴を掘って顔を隠している。そしてズーズンも何やら鳴いていた。



「ふん! これが古より伝わる竜族の力よ!」



 ソフィアはご機嫌ナナメのまま、気絶している魔猪王に言う。



「「プ、プビイイイイ!」」



 周りで見守っていた魔猪の声が悲惨に森を包み込んだ。




 ★★★★★



「試シテ申シ訳アリマセンデシタ」



 気絶から復活した魔猪王が鼻を地面に押し付けながら言った。正直、ここまで衝撃が走るとは思っていなかったがソフィアは威厳を保つために腕を組んで蔑んだ目をしていた。



「試すって何ですか」


「魔猪ヲ助ケテ下サッタノハ知ッテオリマス。シカシ、一族ノ長トシテ簡単ニ頭ヲ下ゲル訳ニハ……」



 まだ少しばかり不機嫌なソフィアに魔猪王は先程とは打って変わって礼儀正しい仕草で話していた。



「キャン!」


「スマヌ魔狼王。ケレドモ、我々ハ簡単ニ屈服シテハナラヌ」



 そこから魔猪王の話を聞いていると話の概要がわかってきた。

 何でも魔猪王は、新たにやってきた魔族の力を試すために芝居を打っていた。しかも、匂いで人間族とは違うと分かっていたが、煽るために人と言ったとソフィアに謝罪していた。



「じゃあ魔猪が血だらけで倒れていたのも信じてくれますか?」


「信ジマショウ。【回復魔法】ヲ掛ケテ下サッタミタイデ」


「へ?」



 ソフィアは魔法が使えない。今では【回復魔法】は覚えていたかったナンバーワンの魔法である。



(話が変な方向に行きそうだし黙っておこう)


「ソフィア様?」


「ご、ごほん! 礼には及びません! それで、前の時に比べて魔猪が減ったと思うのですが」



 とにかく話題を変えないといけないソフィアは、気になっていた点を聞く。すると、魔猪王が立ち上がった。



「ソ、ソウデシタ! ヴォオオオオ!」



 突然の遠吠えにソフィアが驚いて口を開こうとしたが魔猪王の方が早く喋り出した。



「マサカソチラカラ来ルトハ思ッテオラズ、試ス意味デ軍ヲ……」


「あ、アシュバが危ない!」



 話を聞いたソフィアは慌てる。するとズーズンが巨大化した。

 ソフィアはズーズンの意図を読み取り、飛び乗ると走り出した。



「行ッテシマワレタ、カ」



 ★★★★★



 最高速度で走り抜き、最短距離で到着した時、アシュバは木に登っていた。



「そ、ソフィア様ああ! 魔猪が攻めてきました!」


「怪我はないみたいで良かった……」



 一番高い木の上でソフィアに報告するアシュバ。その根本には牙の跡が何箇所か残っていて大変さを思わせる。



「突然、衝撃が走り出したと思ったら魔猪は止まってしまいまして、その数分後には鳴き声が聞こえてきましてどこかに行かれました!」


「うん! 魔猪王の所に戻ったと思う!」


「そうでしたか! ——って今の話し方だと」



 アシュバが木からスルスルと滑り落ちてきながら言おうとするがソフィアの方が早かった。



「同盟が結べそうだよ!」


「おお、流石ですソフィア様!」



 喜んだアシュバだったがすぐに目を閉じて考える仕草を取っていた。また深く考え過ぎなければ良いのだが。



「どうしたの?」


「いえ、それならば何故、攻めてきたのでしょうか」



 アシュバの癖を不穏に思っていたソフィアだったが、確かにアシュバの疑問は当然だった。だけども、理由を知っているソフィアは答える。



「試ス意味デ軍ヲ……って言っていたよ」


「——なるほど、そういう事ですか」



 アシュバは納得したのか目を開いて納得している。



「確かに得体の知れない存在が魔狼王を従えていたら調査はしますよね。ソフィア様はまさに暗黒宮のイレギュラーですからね」



 納得した顔をしていたがアシュバはまた考え出してしまう。



「それならば斥候で充分な筈ですね……狙いが同盟に合ったとしても態々、犠牲を出す方法を取りますかね」



 アシュバが熟考し始めてしまったのでソフィアは大きいままのズーズンの顎を撫でた。



「よく我慢したねズーズン、偉いぞ!」



 ドゥクスが突進してきた時、ズーズンが唸っている声が聞こえていた。けれどもソフィアに考えがあると分かっていたのか助けた魔猪と包囲してきた魔猪が巻き込まれないように見ていてくれた。


 これを褒めないでどうするとソフィアの飼い主魂が叫んでいる。

 今思えばソフィアはマトモに魔物を飼った事がない。何故ならば、バーニックに否定され、ナーシャを味方にしようとしても「ソフィア様には向いておりません」と一蹴されてしまった。



(ふふふ、今の私に育てられない魔物は居ない。ふふふ)



 不敵な笑みを浮かべながらズーズンをわしゃわしゃする。



「……そういう事ですか」



 アシュバが何かを思いついたのか声を漏らした。



「何か分かったの?」



 ソフィアが手を止めてアシュバに向く。しかし、アシュバは首を横に振っていた。



「いえ、(わたくし)の思い違いでした。向こうも所詮は魔物に近い魔族ですので判断が充分でないまま決行したのでしょう。誇れ高き原初の魔族にしては打算的ですね」



 ソフィアは、軽くアシュバに相槌を打つと頭を擦り付けてくるズーズンの相手をする。甘えん坊は困った者だ。



「おっと、話をすれば向こうから来ましたね」



 アシュバの声で気がついたソフィアは森の中を見詰める。すると、巨大な魔猪王が森を掻き分けて現れた。



「どうぞどうぞ」



 ソフィアは先程と打って変わって柔らかい表情でドゥクスを迎え入れる。けれども、ドゥクスはその場から動かなかった。



「どうかしましたか? もしかしてこの焼け焦げた地面が不安でも」



 ソフィアが声を掛けた瞬間、ドゥクスが動いた。反射的に身構えたがドゥクスは、鼻を地面に擦り付けていた。



「我ガ魔猪族、総勢1000匹ノ命ヲ”魔竜王”ソフィア様ニ授ケマス」


「へっ?」



 思ってなかった言葉と父親が受け継いでいた名称。ソフィアは理解できなかった。

次の更新はあした!


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[一言] “三年前”…【回復魔法】…嘘ついてるな、これ
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