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私のパパ(魔王)は勇者に討伐されました  作者: 緋谷りん
第1章 囚われた魔王の娘
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二人目の魔王


 一つの声が鳴り響く。

 アシュバが立ち上がって辺りを見渡しているのと同時にソフィアも耳を澄ませていたが、攻めて来る気配はない。



「これは魔猪が襲われてますね」



 アシュバが結論的に話始めた。

 どこかで襲われている魔猪が単純に叫んだ。

 流石に魔猪族の言葉を理解していないアシュバは、なんて言っているか分からないとソフィアに話していた。



「ガガに襲われているのでしょう」


「ガガって道を変えるだけじゃないの?」



 ゴガガの場所で襲われた事があってもこの森の中で襲われた経験は皆無に等しいソフィアは疑問に思い、問い掛ける。



「そうでもないんですよ。結論を話しますと、ゴガガにとっての脅威は、軍を持っている魔猪王だけです。なので、稀に数減らしで殺されるらしいです」



 まだまだ知らない事はあるみたいだと、素直に思うソフィアにアシュバは話を進めてきた。



「どうして麓の近くにある縄張りからやってきたのか分かりませんが……如何されますか、ソフィア様」



 こういう時、アシュバはソフィアの意見を第一にしようとする。決して自分の意見を言わない訳ではないが……本当にソフィアの身が危ないと判断した時だけ言うと宣言された。つまりここでの出来事は、殆どがソフィアの裁量で決められる。



「もちろん、助けよう!」



 当然のように答えたソフィアは【竜皇気】を発動させた。

 気配が変わったと察知したズーズンが魔狼王に変わると乗りやすいように膝を曲げてくれた。

 すかさずソフィアが飛び乗ると走り出す


 今回も先ほどみたいにガガを駆除する時と同じでアシュバはお留守番だった。



「行ってらっしゃいませソフィア様!」


「アシュバも気をつけてね! 何かあったら呼んで!」





 アシュバに手を振るとズーズンによって一瞬で高速に達する。体感で一分も満たないうちに辿り着いた。



「プギィ!」



 魔猪は一匹だけじゃなかった。

 魔猪のお腹部分には八匹ほどの小さな魔猪がいる。そして傍らには血だらけで倒れた魔猪が居た。

 周りには十体は超えるガガの大軍。まさに絶体絶命の状態になっていた。



「今助けるよ!」



 ズーズンの背上で立ち上がったソフィアは、跳び込んだ。突然の声に驚きの表情を浮かべた魔猪は、何か言っていた。けれども、ソフィアは言葉が分からない為にどうしようもない。

 ただ魔猪の前に降り立った瞬間、半円を描くように蹴った。速度は充分であり、風を殺す音が鳴る。そして襲ってきていたガガの枝を粉砕させた。



「私が来たから安心して」


「ブギ!」


「ごめんね、なんて言ってるか分からないの。でも、敵じゃないよ」



 乱れ打ちの枝を全て拳で受け流し、隙を見つけては蹴り上げ、貫き、殴りつけて粉砕する。

 もはやソフィアにとって十体程度は苦ではない。


 高速で動く自身の身体もゴガガの所で戦ったおかげで慣れている。更にゴガガの触手みたいな動く枝に比べればガガの速度は遅い。



「これで終わり!」



 アシュバに教えてもらった正拳突きをするとガガの身体に穴を開ける。次に亀裂が走り、粉砕した。だが、それだけでは終わらない。

 ソフィアの渾身の一撃は、絶命したガガに触れていた別の個体にも衝撃が伝わって破壊する。まさに波状だった。



「名付けて【竜皇拳・竜突き】!」



 父親(バーニック)が聞けば、ネイミングセンスの悪さに頭を抱えそうだがソフィアは気に入っている。この名前を付けるために徹夜したのだから自信もある。



「ぷ、プギィ……」



 ソフィアに近づいてきた魔猪は、とても震えている。きっとソフィアを知らないから怖くて堪らないのだろう。



「もう終わったよ。ほら、貴女の旦那様? も無事みたい」



 血だらけになっていた魔猪はズーズンが回収して傷口に薬草を貼っていた。



「ブギ、ブブギ!」



 鼻を地面に擦り付けているのは、お礼を言っているのだろう。ソフィアはそう感じた。



「うん、大丈夫! じゃあせっかくだから縄張りの近くまで送り届けるね」



 ソフィアは魔猪達を大きな葉で包み込む。その時にも魔猪が何かを言っていたが、きっと物凄くお礼を言っているに違いないとソフィアは感じた。


 その度に何かしらアクションを起こしていては面倒なために「急いで行くよ」と伝えたソフィアは、子魔猪も一緒に包み込んだ。血だらけで重症の魔猪だけはソフィアが抱えてズーズンに行き先を言う。



「魔猪の”縄張りまで”お願いね」


「ガウ!」



 最初から最高速度で走っているズーズンはこれまでに無いくらい器用に森の中を駆け巡っている。

 この速さを生身で受けている魔猪達は辛いだろうが今は耐えてもらうしかないとソフィアは、ギュッと抱きしめた。


 ズーズンも揺れが大きくならないようにしてはいるが、どうしても突風は生身で受けてしまう。少しでも風が減るように血だらけの魔猪を抱きしめているのだが、モゾモゾと動いていて気になっていた。



「ブギ! ブブギ!」


「待って、もう少しで着くから!」



 暴れる魔猪を強引に止めてズーズンを走らせた。




 やっと辿り着いた時、また気配を感じる。しかし、今回の気配は数が違った。前よりも数が減っていたのだ。



「何かあったのかな」



 ズーズンが速度を保ったまま縄張りの中に入ると魔猪の声が響き始める。縄張りの境界線を監視していた魔猪達だろう。その証拠に犬の遠吠えのように次々と鳴き声が連鎖していった。



「プギィ! プギプギ!」



 ソフィアの懐で魔猪が何度も鳴いていた。流石のソフィアも感謝の言葉ではないと気付いた。更に奥からズンズンと重たい音が向かってくるのを聞き取った。



「え、え?」



 不安が積もる中でズーズンは止まるどころか進み続けている。その時、ソフィアはふと思った。

 血だらけの魔猪と大きな葉で包み込んだ魔猪家族を持っていたら……まるで愉快な犯罪者だと。しかも、それを運んできているのは孤高と言われていた魔狼王ならば警戒心を高めているのも分かる。


 ソフィアがマズイと声に出してズーズンを止めようとした瞬間、ズーズンが一歩下がって跳んだ。



「【土魔法・土槍】」



 ズーズンが居た場所にソフィアよりも大きい土が数本降り注いだ。複数の槍は、地面にポッカリと穴を開けていて直撃していればただでは済まない。



「我ガ一族ヲ離シテ貰オウカ」



 重々しい声がソフィアに響く。それだけで腹が重たくなってしまい、上位種に威圧を掛けられていると本能的に分かる。



「魔猪王、これには訳が!」



 ソフィアが言おうとした瞬間、またズーズンが高く跳んだ。その場には地面から半球体を作り出して閉じ込めようとしていた。



「遅延サセタ【土壁】ヲ躱ストハ流石ダ魔狼王。ダガ、人間族ニ堕トサレタ女王ニハ負ケヌ」



 ソフィアは聞き捨てならない言葉を聞いた。



「魔猪王、私を人間だっていうの」



 ソフィアを人間族だと言い放った。確かに見た目だけならば同じだが、根本的に違う部分がある。何よりもソフィアは、あんな人間と同じだと思われたくないというだけで今にも怒ってしまいそうだ。



「森の奥深くから魔法を放つ弱気な猪にいわれたくない! 姿を見せなさい魔王!」



 ソフィアは魔猪王が道楽の為に言った大バカ者なのか見極めるために言い放つ。すると、高笑いが聞こえてきた。



「ブッハハハ! 面白イ小娘ダ! 我ガ旧友ヲ惑ワセル人ヨ! 真なる魔王ガ相手シヨウ!」



 ズンズンと音を鳴らし、草木を大いに揺らしながら現れたのは岩。



「これが魔猪王……」



 そう思わせてしまうほどの巨体は、魔狼王よりも太くて、決して刃を通さない外皮をしている。

 これだけ巨大になった魔猪は、まさに魔王の風格を持っている。

 魔狼王を突然やって来る嵐に例えるならば、魔猪王は決して近づいてはいけない溶岩だ。


 近づけばそれだけで死を覚悟しなければいけない存在を前にソフィアは、ズーズンから降りた。



「勇気アルナ小娘。ダガ、一族ヲ捕虜ニスルナド言語道断」


「違う、私は襲われていた魔猪を助けたの。血だらけだったから届けに来ただけ」



 魔猪王は地面を強く踏み締めると、地鳴りが鳴った。そして突如、突撃してきた。

 すぐに横に回避してが魔猪王は読んでいたのか、寸前で止まって牙を横に向けて振るった。



「くっ!」



 腕で防御したが勢いは殺せず、吹き飛ばされた。【竜皇気】のおかげで怪我はしないが衝撃の強さを推し量る。



(生身だったら一撃死。単純な膂力はズーズンよりも上か)


「ヨク防イダナ小娘。デハ、貴様ノ能力ヲ試サセテ貰ウ——魔猪王ドゥクス参ルゾ!」

遂に二人目の魔王が登場です!

詳細はまた明日!更新も!

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― 新着の感想 ―
[一言] 本当に作者さんが徹夜して考えてそう。名前。
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